A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

アマゾンが「キンドル」向け著作物の印税率を70パーセントに

アマゾンは1月20日、電子書籍リーダー「キンドル」向けに著作物を提供する著作権者への支払印税率を70%にするプログラムを発表した。この新しいプログラムは今年6月30日から、米国市場で利用可能になる。

支払印税は「キンドル」向け著作物の販売価格から流通コストを差し引いたネット金額をもとに算定される。流通コストは対象著作物のファイル容量によって、1MBあたり15セントで算出される。アマゾンによると、紙の書籍の印税は7〜15パーセント、これまでの電子書籍の印税は25パーセントだから、著作権者はこれまでよりもはるかに高額な印税を得られることになる。ただし、新プログラムの適用を受けるには次の条件を満たさなくてはならない。

●対象著作物の販売価格は2.99ドル〜9.99ドルの範囲であること
●かつ、販売価格は紙の書籍の最低市場価格よりも20%以上安くなくてはならない
これら2つの条件は、紙の出版社に厳しい価格競争を強いることになる。
●対象著作物は、著作権の効力が認められるあらゆる地域で販売可能であること
つまり、地域によってこのプログラムの適用を外れる(例えば、ある地域では紙の書籍のみを販売する)ことはできないということだ。高いロイヤリティ(印税)を得たいのであれば、例外なく「キンドル」をプラットフォームにすべしというアマゾンの著作権者囲い込み戦略である。
●対象著作物の価格は、アマゾンの競合他社の設定する価格と同等か低くなくてはならない。これは、他の電子書籍配信業者や電子書籍リーダーのメーカーに対する宣戦布告だ。

もちろん、新プログラムで取引するのか、これまでのアマゾンの標準プログラムを利用するのか、あるいはアマゾンとは契約しないのかを選ぶのは著作権者の自由だ。しかし、例えば8.99ドルの書籍を販売した場合、著作権者の得る印税は、既存の「キンドル」のプログラムでは3.15ドルだが、新プログラムを利用すると6.25ドル(ほぼ2倍)になる。あるいは日本でこの条件がそのまま適用されると、例えば定価1500円の書籍に関して著者が15パーセントの印税率で契約しているとすると、著者の収入は一冊あたり225円だが、「キンドル」の新プログラムで9.99ドル(920円程度)の単価を採用すると600円以上の収入になる。

日本では2月に、有力出版社21社が一般社団法人「日本電子書籍出版社協会」(仮称)を発足させて電子書籍市場への取り組みを本格化させるらしいが、アマゾンが著者との直接交渉に乗り出してデジタル版の出版権を獲得したら、出版社は例え同じ著作物の紙の出版権を持っていても手を出すことはできない。それどころか、「キンドル」の新プログラムは再販価格維持制度をも揺るがす破壊力を秘めている。

◆情報ソース
Kindle Offers 70% Royalty to Book Publishers and Authors (Advertising Age)
Amazon Press Release

ボニエル社がEマガジンの進化形を開発

スウェーデンの出版社でタイム(Time Inc.)などから主にニッチな雑誌を買収・出版しているボニエル社(Bonnier)が、タッチスクリーンを備えたタブレットで見るEマガジンのプロトタイプ“Mag+”を発表した。下の映像は、同社の雑誌『ポピュラー・サイエンス』(Popular Science)をEマガジンにリフォーマットできるかを説明したものだ。

Mag+ from Bonnier on Vimeo.



ビデオを見るとわかるように、これはすでに流通しているアマゾンのKindleなどで読むことのできる電子雑誌とはまったく違う。例えばプリント版と同じ感覚でページをめくるのではなく、スクロールして読むことを前提としているし、写真とテキストを別々に拡大したりスクロールして読んだりすることができる。記事を検索、カット&ペースト、あるいは他の人とシェアする機能も備えている。

開発チームによるとMag+のコンセプトは、デジタルの豊かな機能を盛り込みながらもプリント版の雑誌を読むときのリラックスした気分を味わえることだという。また、広告については、オンラインのインタラクティブ性とプリント版雑誌の特長である台割上の配置や関連記事との密接性をいかに反映できるかを研究中だそうだ。アップルのiTabletが間もなく市場に送り出されると言われているが、Mag+もそれに歩調を合わせ、ここ1〜2年の間の製品化を目指すとのこと。

◆情報ソース
Bonnier and BERG reimagine e-mags with Mag+(Advertising Age)
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