A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 メディア全般

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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ニューヨーク市がメディア産業救済策を発表

ニューヨーク市のブルームバーグ市長が、メディア産業の救済策、というかメディア業界再活性化のための支援策を発表した。言うまでもなくニューヨークは多くの有力メディア企業が本拠地とする、世界最大のメディア都市だが、「産業全体が大きな変化に直面しているいま、成長の機会を創設しメディア界のリーダーとしての地位を守るのは我々の責務」というわけだ。といっても、景気が回復するまでの救済策として資金を提供するといった短期的な支援ではない。発表された主な施策は以下のとおり。

■媒体社、大学などの組織が調査研究の結果を共有し、成果発表やワークショップの会場としても利用できる研究拠点として、ニューヨーク市メディア研究所を立ち上げる。来年1月までに設立・活動開始するために、市の経済開発公社(New York City Economic Development Corporation)が協力者向けの趣意書を今月中に発表する。

■新たな研究・製造施設の購入、既存施設への情報技術・機器の導入などを行う企業に、財政支援を行うために、非課税の公債を発行する。

■メディア業界の起業・革新を促進するために、メディア&テック奨学金制度を創設する。10月までに制度の運用者を決定。経験、提示された計画に革新性があるか、提示されたビジネスプランが市の雇用創設につながるか等を基準に年に20名を選び、奨学金を提供するとともに教育・指導などの支援も行う。

■小規模の技術開発会社や新興企業に、結集して市のIT関連の事業の発注先入札に参加するよう呼びかけたり、市の発注方法に関するフォーラムを開催したり、大手事業者の下請け先として小規模企業や新興企業をひき合わせる等の支援事業を行う。

■ソフトウエアの開発コンテストNYC Big Appsを開催する。

■ロワー・マンハッタンにある5000平方フィート(約1500平米)の敷地を提供し、フリーランスのメディア関係者のためのセンターを開設する。センターには作業端末を置き、契約書作成支援や情報提供などを行う。

■ニューメディア業界での就職を希望する人たちのためのトレーニング・プログラムを設け、職業訓練を行うほか、ニューメディア企業での10週間の研修も受けられるようにする。

■新旧メディアが様々なテーマについて意見を交換する場として、ウエブサイトMediaNYC2020.comを開設。

◆情報ソース
ニューヨーク市プレスリリース
ニューヨーク市経済開発公社のサイト
Downtown New York
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旧来型メディアは長い低迷期に?

米国の旧来型メディアの現況を。

新聞、雑誌、ラジオは、専門家や研究機関の予測を上回る落ち込みを見せている。米新聞協会(Newspaper Association of America)の統計によると、今年1-3月期の新聞の広告売上は、昨年同期に比べて92億ドルから66億ドルへ28.3%も下落した。投資銀行のバークレイズ・キャピタル(Barclay’s Capital)は昨年11月時点で、今年の新聞広告売上の下落率を通年で14%と予測し、それを翌12月に17%、今年2月に21%、4月に22%へと下方修正し続けてきたが、実際にはそれよりもさらに大きな落ち込みとなった。

同じく、今年1-3月期のラジオの広告売上は昨年同期比で45億ドルから34億ドルへ24%減少(ラジオ広告機構:Radio Advertising Bureau)。また、PIB (Publishers Information Bureau)の統計によると、雑誌の広告集稿ページ数は51,700ページから38,207ページへ、26%減少した。新聞の凋落ぶりばかりが騒がれているが、雑誌とラジオも相当に深刻だ。

これら3媒体の不調は、昨年のサブプライム・ショックで加速したのは確かだが、下のグラフで明らかなように2006年前後から始まっていた。いわゆる大恐慌の時期を除くと、新聞とラジオの売上が複数年連続で前年を下回るのは初めてのことだ。


Traditional media % change of ad revenue


これまでは、3媒体の売上はほぼ景気の変動に歩調を合わせて変化してきた。GDPが上昇傾向にある間は、その成長率を3媒体の広告売上が上回るのが常だった。しかし、2000-2001年の景気後退期以降、この図式があてはまらないことが多くなった。その大きな要因はインターネットだ。MediaPostは、3媒体の広告売上はこのまま長い低迷期に突入し、景気好転後も下落幅はゆるやかになるものの下降し続けるか、良くても低め安定から脱出することはできない可能性が高いと予測している。

◆情報ソース
News Analysis: Traditional Media Drops Exceed Expectations (MediaPost)

メディア企業のCRMへの取り組み

読者(オーディエンス)と広告の減少に直面したメディア企業が注目しているのが、ディズニーが先週から開始したようなCRM(Customer Relationship Program: 顧客との関係の管理)プログラムだ。

ほとんどの新聞社、雑誌社その他のメディア企業はすでに、購読者向けのマーケティング・プログラムを実施しているし、多くのエンタテインメント企業もロイヤリティ・プログラムを導入しているが、最近の傾向で目新しいのが、企業が保有するコンテンツの見直しを行い、それらをロイヤル・カスタマーに最大の価値を提供するためにいかに組み合わせればよいかを明らかにしようとしている点だ。

「新聞、雑誌、その他のメディア企業は、どのコンテンツを残すかを考え始めるべきだ。デジタル・コンテンツの購読契約をし、ブランドの一員になるよう呼びかけることにより、企業は顧客の契約者としての意識を深めることができる。それが、メディア企業がすでに持っている広告プラットフォームに代わる、マーケティング・プラットフォームとなる」と、顧客のロイヤリティ向上サービスを提供するLoyalty Labのシニア・バイス・プレジデント、デビッド・ローゼン(David Rosen)氏は言う。

マーケティング・プラットフォームを持つことにより、メディア企業は広告主が、正しいタイミングでターゲットとする顧客にコンタクトする手助けができるようになる。それこそが、広告主が対価の支払いを認めるものだと、ローゼン氏は言う。

Disney D23 image

ディズニーが先週発表した、D23と名付けられた会員向けプログラムは、同社初のディズニー・ファンのためのオフィシャル・コミュニティだ。D23という名称は、ウォルト・ディズニーが映画会社を創業したのが1923年だったことに由来する。このプログラムでは74.99ドルの年会費を支払うと、新しく創刊された季刊の会員誌『Twenty-three』の購読、スペシャル・イベントへの参加、会員限定グッズの購入、会員限定のコンテンツへのアクセスができるほか、会員証も発行される。

タイム社(Time Inc.)も、すでに実施している購読者向けのマーケティング・プログラムに加えて、年内に様々なロイヤリティ・マーケティングのモデルを試験導入する。

「これまで雑誌社は定期購読者向けの割引に力を入れてきたが、売上を保持し事業を存続するためには、顧客が喜んで対価を払うような商品を提供しなくてはならない」と、同社のサブスクリプション・マーケティング担当バイス・プレジデントのサラ・ジャック(Sarah Jack)氏は言う。

その結果、同社は定期購読を継続してもらうための施策や、読者に関する定期的な調査に加えて、同社の資産を活用してどんな価値を読者に提供できるのかを明らかにしようとしている。その中には、ウエブサイト上で定期購読者専用のページを設けたり、専用のニュースレターを送信したりするプログラムも含まれている。

「メディア企業は、CRMのコンセプトを導入し、顧客にとっての価値とは何かを明らかにする方向に、大きく舵を切った」とマーケティング・サービス企業Quaeroのシニア・バイス・プレジデント、ジュリー・フィリップス・ベーカー(Julie Phil­lips Baker)氏は言う。

特定のプロフィールを持つ顧客をターゲットにすることが可能になれば、広告単価を引き上げることができると、メディア企業が認識するようになったことで、こうした流れにはさらに拍車がかかっている。「大企業ほど、このような顧客に関する情報を求めている」とベーカー氏は指摘する。

しかし、旧来型のメディア企業は、雑誌や新聞のウエブ版の読者のデータを明らかにすることに、あまり前向きではない。「この手のCRMプログラムを実施できるのはほんの一握りのメディア企業だけで、他の企業はようやく顧客データの収集をはじめた段階だ」とベーカー氏。

例えばESPNはQuaero社と共同で、自社チャンネルを観るスポーツファンのデータから5類型のカスタマープロフィールを割り出した。同社は昨年5月、このプロフィールを広告主向けに公表した。さらに最近、自社のマーケティング活動にもこのプロフィールを利用し始めた。

10種類の日刊紙を発行するトリビューン社(Tribune Company)は昨秋、プレプリント・オプチマイゼーション(PrePrint Optimization)というプログラムをスタートさせた。このプログラムは広告主のデータと購読者のデータを組み合わせ、広告主がいつ、どのようにターゲットとする消費者に到達できるかを明らかにするものだ。

また、米国第4の新聞チェーンであるメディアニュース・グループ(MediaNews Group)は先ごろ、個人向けにカスタマイズした新聞(紙版とデジタル版の両方)の発行を開始し、広告も特定のターゲットに向けたものを掲載すると発表した。この新聞は”I-News”または”Individuated News”と名づけられ、購読者は広範なカテゴリーの中から自分の読みたいものを選ぶ仕組みになっている。今年夏から同社の『ロサンゼルス・デイリー・ニュース』でテスト版が発行される。

こうした試みに対しては、ウエブ上で否定的な意見も表明されている。例えば、”I-News”のアイデアに対しては、読者は記事を見て初めて自分の読みたい内容を認識するのであって、あらかじめカテゴリーを指定させる試みはうまくいかないだろうという声もある。もちろん、最初からすべてうまくいけばテスト版など必要ないわけで、当面は試行錯誤の繰り返しになるだろう。先に取り上げたマイクロペイメントもそうだが、デジタル技術をうまく取り入れた新たな試みに注目していきたい。

◆情報ソース
Media turn to CRM to cut losses (DMNews)
MediaNews Posits A Custom-Made Newspaper (MediaPost)

メディア利用状況調査―ウエブサイトがニュース・ソースの主流に

米PR会社ローゼン・グループ(Rosen Group)は、人々がメディアをどのように利用し、その現状・将来をどのように見ているかを調べた。この調査によると、回答者の80%近くがいまでも雑誌を定期購読しており、83%が日刊新聞は存在意義があると考えている一方、新聞と雑誌が10年後も存在すると考えている人は半数以下の45%で、40%はどうなるかわからないと回答した。

同調査は今年2月18~23日に、12~75歳の男女を対象にオンラインで行われたもので、サンプル数は316。

「どこでニュースを手に入れるか」との設問(複数回答)で、もっとも多くの人が選んだのは「CNN.comやFoxNews.comなどのニュース専門サイト」(65.3%)で、2位は「オンライン版の新聞」(56.7%)、3位は僅差で「印刷版の新聞」(55.4%)だった。

また、エンターテインメント情報、アドバイス、ライフスタイル関連の情報が得られる第一のメディアとして選ばれたのは、雑誌の印刷版が1位(27.0%)、ウエブサイトが2位(25.2%)、ブログが3位(10.9%)だった。

その他の調査結果は以下のとおり。
■欠かすことのできないニュース・ソースとしてもっとも多くの人が選んだのはニュース専門サイト(29%)で、プリント版の新聞は18%、オンライン版の新聞は16%だった。
■一方、日刊新聞に目を通すと答えた人は55%で、53%が新聞を定期購読している。
■週刊ニュース誌は存在意義があると答えた人は65%だった。
■ブログを読む回数を訊ねたところ、一日に複数回と答えた人が29%、週に1回と答えた人は8%、たまにと答えた人は37%、読まないと答えた人も37%だった。
■全回答者の60%が、ブログに書かれている情報は信用できないと答えた。

ニュース・ソースとしてはウエブサイトが完全に定着しつつあるようだ。一方、娯楽・ライフスタイルの参考とする情報源として、雑誌(印刷版)がもっとも支持されている点も興味深い。年齢層別の集計結果も見たいところだが、それにはサンプル数が少なすぎる。

◆情報ソース
Print Media Still Viable Entertainment Source (Marketing Charts)
Rosen Groupのリリース

新聞の消滅する都市が出現とフィッチ

バイアコム(Viacom)が、850名の人員削減を柱とするリストラ計画を発表した。対象となるのはMTVネットワーク、BETネットワーク、パラマウント映画など、すべての傘下企業で、来年の上級管理職の昇給も見送るという。同社は今年、旗艦ネットワークであるMTVの視聴率が落ち込んだほか、昨年の『トランスフォーマー』のようなヒット映画作品に恵まれなかったこともあり、第3四半期の売上は37%落ち込んだ。

同じく代表的なメディア・エンターテインメント・グループのNBCユニバーサル(NBC Universal)も、広告営業スタッフの削減をはじめとする5億ドル規模のコスト削減策を計画しているとのこと。

このように、米国のメディア・広告業界は、良いニュースを見つけるのが難しい状態だ。来年の見通しはさらに暗い。

格付け機関として知られるフィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)が、来年の広告ビジネスは、1970年以来最悪の落ち込みを見せた2001年と並ぶ不況年となるとの見通しを明らかにした。特に苦戦しそうなカテゴリーは自動車、金融、エアライン、ホテル、カーレンタル。また、2001年に不況の影響を受けたのは主に全国媒体だったが、来年はローカル・メディアも例外ではないとフィッチは予測している。

メディア別で見ると、特に新聞と雑誌にとっては厳しい年となりそうだ。

雑誌広告に関しては、大手の広告主が出稿先を減らして有力誌だけに絞ることになるだろうとの予測。また、雑誌社の運営するオンライン・メディアについては、「雑誌がデジタルへの移行で利益を生み出せるかは疑わしい」とフィッチは分析している。

新聞についての予測はさらにショッキングだ。新聞社の倒産や廃刊により、2010年までにいくつかの都市では日刊新聞を読めなくなるだろうというのだ。

なお、屋外広告とケーブルネットワーク、およびグローバルな広告会社は、さほど良くはないが深刻な影響を受けないだろうとのこと。

◆情報ソース
Viacom to Cut 850 Jobs, Freeze Salaries for 2009 (Advertising Age)
NBC Universal Cuts Staff in Sales (Advertising Age)
2009: Weakest Ad Market Since '01 (Advertising Age)
'Several Cities' Could Have No Daily Paper As Soon As 2010, Credit Rater Says (Editor & Publisher)



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