A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 新聞・雑誌

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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ニューズ・コーポレーションが電子出版のSkiffを買収、ジャーナリズム・オンラインも傘下に

ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーションが、電子出版プラットフォームを開発するSkiffを買収したと発表した。同社はまた、オンライン出版向けの課金システムを提供するジャーナリズム・オンライン(Journalism Online)に大掛かりな投資を行ったとも発表した。

この発表では、両者がニューズ社の戦略上、どのように位置づけられるのかは明らかにされていない。同社はすでに、ウォール・ストリート・ジャーナル・オンライン(The Wall Street Journal Online)をはじめ、ロンドン・タイムズ(London Times)とサンデイ・タイムズ(Sunday Times)でも課金システムを採用している。しかし、ルパート・マードックはかねてより、他の新聞社もウエブ上のコンテンツの有料化を行うべきだと主張している。多くの企業が利用するジャーナリズム・オンラインを傘下にすることにより、ニューズ社は有料化パートナーを効率よく拡大することができるばかりか、課金制度導入を検討する企業を対象としたビジネスにも着手できると、『アドバタイジング・エイジ』(Advertising Age)は分析している。また、Skiffの買収は言うまでもなく、ニューズ社にとってウエブ上ばかりでなく、電子端末向けのコンテンツ販売の道を切り開くことになる。

Skiffは出版社のハースト(Hearst Corporation)の傘下企業で、ハーストはSkiffの技術を用いて今年、様々なデバイス向けに新聞や雑誌のコンテンツを提供するオンラインストアを開設する計画だった。Skiffは今年初めに、専用の電子書籍リーダー「Skiff Reader」を発表したばかりだが、ニューズ・コーポレーションは、「Skiff Reader」を買収の対象から除外した。ハーストが独力で「Skiff Reader」の発売に踏み切るのか、ニューズ社以外の買い手を探すのか、あるいは発売をご破算にするのかは明らかにされていない。

◆情報ソース
News Corp. Acquires Skiff (Mediaweek)
News Corp. Buys Skiff, Stake in Journalism Online (Advertising Age)
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新聞・雑誌はアグリゲーターに勝てるのか

新聞や雑誌のネット上の課金をめぐる議論がかまびすしい。

大学の友人とともに起業したBroadcast.comをYahoo!に59億ドルで売却し、いまやプロバスケットチームDallas Mavericksとエンターテインメント企業2929 EntertainmentのオーナーにしてHDTVの放送局HDNetの会長でもあるマーク・キューバン(Mark Cuban)氏は、Drudge ReportNewserなどのアグリゲーター・サイトに宣戦布告せよと主張している。アグリゲーターと旧来型メディアは同じ広告主の予算を争っている。しかし、旧来型メディアはコンテンツの制作に多大な投資を行っているのに、アグリゲーターはそれを利用してほとんど費用をかけずに収益を上げている。この理不尽な状況を打開するために、旧来型メディア企業はアグリゲーターのリンクを遮断するソフトウェアを導入して、彼ら“寄生虫”を退治すべきだというのだ。

この主張に対して、Newserの創始者であるマイケル・ウォルフ(Michael Wolff)氏が、「マーク・キューバンはとんでもない愚か者だ」(Mark Cuban is a big fat idiot)との見出しを掲げて反論を行った。Newserをはじめとするアグリゲーターは旧来型メディアに貢献をしている、アグリゲーター・サイトの読者の一部は元の記事を読むために彼らのサイトを訪れているからだ、というのがウォルフ氏の主張だ。確かに、アグリゲーター・サイトの読者の一部はリンク先である新聞や雑誌のサイトを訪れているだろうが、そうして生み出されたトラフィックを旧来型メディアが売上に転換できずにいるからキューバン氏のような過激な主張が生まれるのだ。

キューバン氏と同じくインターネットで巨万の富を築いたマーク・アンドリーセン(Marc Andreessen・ネットスケープの生みの親)氏は、ほとんどの旧来型メディアがネット読者への課金を始めるだろうと予測している。しかし、その結果、多くの読者が離れていってしまう。広告主は多くの読者が集まるところに投資するから、Newserのような新興サイトの売り上げが伸びることになる。そうして得た資金で、新興サイトは旧来型メディアを辞めた記者や編集者を雇って自前のコンテンツを作り始める。「だから私は、新興ニュース・サイトのBusiness InsiderTalking Points Memoに投資することにしたのだ」と、アンドリーセン氏は語っている。

ネット上の記事の有料化は、キューバン氏の主張する「遮断」論とほとんど同じ効果をもたらすと思われる。記事が有料になれば、アグリゲーターはこれまでのように自由にその一部を引用することができなくなるだろうし、読者がリンク先をたどって行っても、元の記事を読むことはできないからだ。しかし、一部のサイトが課金を始めても、読者の多くは無料サイトに流れていくだろうから、その効果はおそらくきわめて限定的なのではないか。

と思うのだが、ネット上の課金が思わぬ効果を生んだ新聞もある。

リゾート地として有名なロード・アイランド州ニューポートのローカル紙、ニューポート・デイリー・ニュース(Newport Daily News)が無料記事をほとんどなくし、ネット上の記事の定期購読料を印刷版よりも200ドル高い345ドルに設定したところ、同紙の宅配をキャンセルする電話が鳴りやみ、一日当たりの販売部数が200部、跳ね上がったという。同紙の発行部数は13,000部だというから、これは注目に値する数字だ。同時に同紙は、宅配圏外に住む読者に、ウエブ版の記事の購読を勧めるディスカウント・キャンペーンも行っているという。

こうしてみると、雑誌はともかく新聞がネット課金に踏み切る価値はあるのかもしれない。それで収益が改善すれば、新興のサイトに優れたジャーナリストを奪われることもないのだから。ただしそれは、お金を払って読むに値する報道を行っている新聞に限った話だが。

◆情報ソース
Exterminate the Parasite (Newsweek)
This News Doesn’t Want to Be Free (Newsweek)





新聞や雑誌のコンテンツの違法転用サイト対策に救世主か

ウエブ上の記事を無断転用するブログやウエブサイトは、新聞社をはじめとする媒体社にとって、売上をも脅かす忌まわしい存在だ。そうした違法行為に対応するための技術を開発した2つのスタートアップ企業を、米経済誌『フォーブス』のウエブサイト、forbes.comが紹介している。

そのひとつは、サンフランシスコを拠点とするスクライブド(Scribd)で、同社は2年前に、「テキスト版You Tube」ともいうべき文書の共有サイトを立ち上げた。このサイトは、日本でもすでに利用している人がたくさんいるだろうが、ワード文書、PDF、パワーポイントやエクセルの資料など様々なファイル形式のドキュメントをアップロードし、タグやコメントを付けて共有できるソーシャルネットワークだ。Scribdにアップロードしたドキュメントは、他のサイトやブログに張り付けて(エンベッドして)公開することもできるので便利だ。さらに同社は先週、誰でも自分の著作物を販売できる「スクライブド・ストア(Scribd Store)」をオープンした。Forbesによると、このScribd Storeのサービスでは、著作権者は自身のサイトなどでセキュリティのかかったウィジェットを使ってドキュメントを公開できる。第三者はそのウィジェットを通じてでないと文書を転用できない仕組みだ。ウィジェットを使って、どのサイトに文書が転用されているかを正確に追跡することもできる。

もうひとつは、レッドウッドシティ(カリフォルニア州)に本拠を置くアトリビューター(Attributor)だ。同社は、自社のデータ・サーバに収納した顧客のコンテンツが再利用された場合、それをどこまでも追いかけて利用状況を監視するという。違法利用が見つかった場合、顧客は警告を送り許可の取得か当該コンテンツの削除を求めることができる。また今年4月、同社は発起人となってFair Syndication Consortiumという組織を立ち上げた。新聞や雑誌のサイトの記事を盗用しているサイトは数え切れないほど存在するだろうが、このコンソーシアムのターゲットはそうしたサイトではなく、そこに広告を提供している広告ネットワークだ。Attributorは、違法転用を発見した場合、そのページに広告を配信しているネットワークに広告収入の一部を支払うよう要求する。もちろん、広告ネットワークが支払いを拒否する可能性もあるが、訴訟沙汰や評判に傷が付くのを恐れるネットワークはこの動きに協力するだろうと、Attributorは考えているようだ。現在、Fair Syndication Consortiumには、米雑誌協会やロイターなど、およそ50の大手企業・組織が参加しているとのこと。

◆情報ソース
To The Rescue: Newspaper Content Cops (Forbes.com)

ハースト社が年内に電子リーダーを発表へ

減退する広告売上と高騰する紙代・流通費。活字メディアを脅かすこれらの要素に対する回答を、『コスモポリタン(Cosmopolitan)』『エスクァイア(Esquire)』などの雑誌や『サンフランシスコ・クロニクル(San Francisco Chronicle)』などの新聞を発行するハースト社(Hearst Corp.)は電子メディアに見出したようだ。

フォーチュン(Fortune)によると同社は、大型スクリーンを備えたワイアレス電子リーダーを開発、年内にも発表するらしい。このスクリーンはE Ink社の電子インク技術を用いた軽量・低消費電力のディスプレーで、紙とほぼ同じ感覚で雑誌や新聞の紙面(もちろん広告も)を見ることができる。同じ電子インク技術はアマゾンのKindleやソニーの電子ブックリーダーにも使われている。活字メディアを電子化した場合、出版社は紙・印刷・配送などにかかる費用を削減し、総コストを半減できるとハースト社は見積もっている。

ハースト社はこの電子リーダーを他の出版社や新聞社に提供し、この機器向けの雑誌・新聞の販売収入からライセンス料を得る計画だが、提供先が電子リーダーを自社ブランド化し独自の支払いモデルを構築することもできるようにするという。

メディアウイーク(Mediaweek)は、電子版の雑誌や新聞がインタラクティブな機能を持てば、広告主にとって魅力的なコスト・パー・アクションの料金体系を提供できるだろうが、その場合、広告売上はプリント版に比べはるかに縮小するだろうと書いている。というのは、オンラインで実績のあるタイム社(Time Inc.)でも、オンライン広告の売上は、全広告売上の10%に過ぎない(2008年の数値)からだ。仮に、電子リーダー版はウエブとは異なる媒体であることを広告主が理解してくれたとしても、広告料金は安いオンライン広告をもとに設定せざるを得ないだろうと、メディアウイークは予測している。

広告主よりも、読者が受け入れるかどうかが最初の関門だと思うが、年内に発表されるというこの電子リーダーを、ぜひ手にとって見てみたいものだ。

◆情報ソース
Hearst to launch a wireless e-reader (Fortune)
Hearst To Launch E-Reader For Mags (Mediaweek)

新聞・雑誌業界への公開書簡

昨日のエントリーに関連して―。
『アドバタイジング・エイジ』(Advertising Age)に、Rebecca McPhetersという人が“An Open Letter to Publishers”と題して、新聞や雑誌の発行元が新しいビジネスモデルを構築するための提言を寄稿している。

Rebecca McPhetersは、かつてニューヨーク・タイムズ・マガジン・グループの要職を務めていた人で、いまはメディア業界を対象に戦略立案や調査を請け負うMcPheters & CompanyのCEO。

その提言を以下に要約する。

有料のコンテンツ
パブリッシャーは、媒体が新聞、雑誌、あるいはオンラインであろうと、コンテンツにどれだけの価値があるかをよくよく考えるべき時だ。人々は、お金を払う対象が何かによって価値を測る。しかし残念ながら、彼らは多くのコンテンツは無料、あるいは最小の費用で手に入れられると期待するようになってしまっている。この流れを引き戻し、コンテンツの価値が認識され、対価を生み出すようにすべきである。幸いなことに、一部のパブリッシャーは、いまだにコンテンツをお金に換える能力を持っている。それを参考にすべきだ。

予約購読減税
報道機関は生き抜くための売上を必要としている。しかし皮肉なことに、広告売上の減少が多くの報道機関を脅かしている。教育がそうであるように、報道は社会を統治する上で欠かせない存在だ。定期刊行物は多くの州で、消費税の適用外となっている。であれば、出版物の予約購読料や有権者に情報提供するサービスへの支払いを所得税の対象から外したらどうだろうか。

仕事の共有化
ダウンサイジングと戦おう。不完全な雇用でも雇用されないよりはましだ。レイオフをする代わりに、雇用を確保して給与を下げてはどうだろうか。たとえば、従業員の10%をレイオフする代わりに、全従業員の給与を10%下げるのだ。そうすれば、退職金を節約できるばかりでなく、長期的な投資にもなる。というのは、景気が回復したときに、新たに人を雇い教育するためのコストを支払わずに済むからだ。と同時に、読者や広告主には、新規に人を雇うより良いサービスを提供できる。

技術開発への投資と影響力の行使
パブリッシャーの仕事は、コンテンツを読者に提供し、読者を広告主に提供することだ。であればパブリッシャーは、コンテンツと広告をうまく組み合わせて流通できる、電子リーダー(Eリーダー)のような新しい技術の誕生を、ただ指をくわえて待っているべきではない。もっと積極的に、必要な機能を備え、パブリッシャーの経済的利益が守れるような機器の開発過程に参加すべきである。

Eリーダーは、環境への影響をほとんど与えずに広く普及し、同時にコンテンツを有料化できる可能性を持っている。しかし、既存のEリーダーは書籍には向いているが、新聞や雑誌を読むには向いていない。また、コンテンツばかりでなく広告も流通できるような改良が必要である。



彼女は序文で、重要な案件に対する深い洞察を提供できる、独立した立場のジャーナリストがいなくなり、我々の社会と民主主義の発展に寄与するチェック&バランス機能が働かなくなることを考えると恐ろしいと述べている。まったくその通りだと思うが、新聞記者がハイヤーを乗り回しているどこかの国には無用な提言かもしれない。



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