A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 新聞・雑誌

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

ニュースの送り手はいなくなるのか

米誌Vanity Fair、The New Yorkerの名物編集長として名を馳せたTina Brown氏が、InterActiveCorpを率いるメディア界の大物Barry Diller氏とパートナーシップを結び、ニュース・アグリゲーター(統合)サイトを立ち上げる。Tina Brown氏は、これまでにないニュース・アグリゲーター・サイトにすると語っているが、開設予定日など詳細は明らかにしていない。

雑誌の作り手からニュースサイトの運営者への転身は、Tina Brown氏が初めてではない。Vanity Fairの著名コラムニストだったMichael Wolff氏は昨年10月、新聞のアーカイブと検索サービスのHighBeam Research社と、Newser.comを立ち上げた。こうした動きをとらえて、Advertising Ageは、新聞や雑誌が収益性の面で危機に直面しているいま、メディア事業はオリジナルなニュースの送り手から、既存のニュースをパッケージし直すことへと役割を移そうとしているのではないかと分析している。以下にその記事の要約を紹介する。

米国の民間調査機関ピュー・リサーチ・センターの最新のアニュアルレポートによると、24の大手ニュースサイトのうち、いまでは11が自社のサイト以外にリンクを張っている(前年は3サイトだけだった)。また、メディア企業では人員削減などによりニュース取材のリソースが減少しているため、報道の幅が狭まっている。どういうことかというと、報道機関がもはやデスティネーションサイトであり続けることに限界があることを実感し、外部のコンテンツや読者を誘引するために、ニュースをシェアしたり統合したりする機能を自社のサイトにもたせるようになってきたのだ。

Michael Wolff氏は、Newser.comの立ち上げ時に執筆したVanity Fair誌2007年10月号のコラムで、「ニュースがいまほど価値を失った時代はなかったように思える」と記し、ニュースを構成することに価値は移ったと結論している。

ニュースを整理統合することがコンテンツから利益を生み出す最善の方法になるのだとしたら、コンテンツを作るという金のかかる仕事を引き受ける企業などなくなってしまうのではないか。Wolff氏にこの質問をぶつけたところ、「ウエブ上では、コンテンツは専門家、無数のブロガー、そしてかつてアマチュアと言われた人たちからいくらでも集められる」との答えが返ってきた。

では、ニュースの統合は良いビジネスなのか。どうやって読者を集め、広告主の興味を惹きつけるのか。ウエブが細分化し、類似のサイトが増えている現状を考えると、それは生易しいことではない。

Newser.comのスタートは悪くはない。ユニークビジター数はComScoreによると1月から2月にかけて352,000から658,000に急増した。しかし、The New York TimesやCNNなどのサイトの人気を見ると、アグリゲーション・サイトが人々の支持を得るとは確信できない、とMediaVest社のVice President、Mo Renganathan氏は言う。

ニュースを郵便番号に分けて構成するサイトTopix.comのCEO、Chris Tolles氏は、読者が投票によって何がもっとも重大なニュースかを決められるDiggのような他と差別化できるアプローチ、Topixの人工知能のような技術力、あるいは著名ブロガーを抱えるHuffington Postのような特色あるコンテンツのどれかがないと成功はできないと言い切る。

Techmemeの創立者Gabe Rivera氏は、「既存のメディア企業がニュース・アグリゲーションに乗り出してもうまくいかないだろう」という。彼の考えでは、アグリゲーションに成功するのは 1)個人の起業家で、2)新しいコンセプトを生み出し、3)プロジェクトが自分のものだという強い意識を持った人であり、大手メディア企業はこのいずれも欠いているため必ず失敗する、という。

ニュース・アグリゲーターの先達からの手厳しい言葉だが、それでもおそらく、ジャーナリズムの現状ほど悲観すべきものではないだろう。
(以上、要約終わり)



メディア・パブさんも繰り返し書いているように、米国の新聞業界はこれまでにない不振に直面しているようで、総じて、調査、執筆、裏付けに手間とお金をかける既存メディアのアプローチそのものが危機に瀕しているといえる。ただし、それをコスト高や広告売上の減少といった経営面だけでとらえるのも問題があるように思える。これは日本の業界にも言えることだが、いまの内容やあり方に消費者が魅力を感じなくなっていることが最大の問題で、ジャーナリズムに限らず既存のメディアにとってはいまこそ、自己の存在意義とコンテンツの内容に思いを馳せ、改革に乗り出す最大のチャンスだと思うのだが、いかがだろうか。

◆情報ソース
Tina Brown to Partner with Barry Diller on News Aggregation Site (Radar Online)
It's Web 3.0, and Someone Else's Content Is King (Advertising Age)



ニューズウィーク誌が大規模な人員削減

米ニュース誌『ニューズウィーク』から、早期退職のオファーを受けて111名ものスタッフが去ることになった。中には、小説家としてピューリッツァ賞候補になったこともあるDavid Gatesや、映画の人気コラムニストDavid Ansenなど、多くのベテラン記者や編集者も名を連ねる。チーフ・リサーチャーも全員が手を挙げた。ただし、国内外の特派員は今回のオファーの対象になっていない。また、退社後コントリビューティング・エディターとしてニューズウィークの仕事を続ける編集者もいる。

『ニューズウィーク』が早期退職制度の実施に踏み切った原因は、言うまでもなく販売と広告の不振にある。印刷媒体―特に新聞は、主にインターネット隆盛のあおりを受けて苦境に立たされている。『ニューズウィーク』は母体が『ワシントンポスト』という新聞社だから、経営者側の事情はなおさら深刻だといえるだろう。その『ワシントンポスト』も一昨年、早期退職制度を実施し、およそ70名の記者、カメラマンなどニュースルームのスタッフが退職した。同紙の実売部数は、1993年のピーク時に832,232部に達してから下降を続け、2006年にはおよそ69万部まで落ち込んだ。

ほぼ例外なく、米国の新聞社は販売・広告という両輪の不振にあえいでいる。今年になってからは、『ニューヨーク・タイムズ』が100人規模、『ロサンゼルス・タイムズ』が100〜150人規模の人員削減を行うと報じられた。米国の新聞は売り上げに占める広告の割合がおよそ75%と、広告への依存度が極めて高い(日本の新聞は、電通総研著「情報メディア白書2006年版」によると、広告依存度が40%程度)。また、部数によって広告料金が上下するシステムになっているので、販売の不振が広告の業績に直結する。ウエブでの広告売り上げは伸びているものの、販売と印刷版の広告の落ち込みを補えるほどではない。業績不振のために優秀な人材を放出せざるを得なくなり、それがコンテンツの劣化を招いて、さらに部数が落ち込むという負のスパイラルが起こらないと良いのだが…。

◆情報ソース
Over 100 Staffers Leave Newsweek (RadarOnline)
Washington Post Staffers Take Early Retirement (Washington Post)
New York Times Plans to Cut 100 Newsroom Jobs (New York Times)
Tribune Co. to cut staff by about 2% (Los Angels Times)




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