A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 新聞

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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大手新聞社の新ビジネスへの取り組み

『ニューヨーク・タイムズ』紙が映画マニアのための会員組織、The New York Times Film Clubを立ち上げた。100ドルの年会費を払って入会すると、デジタル・リマスターされた名作映画の劇場上映に2回、招待され、上映後は同紙のジャーナリストや映画関係者とのおしゃべりを楽しむこともできる。新作映画の試写会にも年6回、招待してもらえる。

この会員組織は広告メニューのひとつとしても活用される。『ニューヨーク・タイムズ』は本紙およびNYTimes.comでの広告とパッケージにして、上記の上映会でのプロモーション機会を販売していく。

同紙と『ウォール・ストリート・ジャーナル』はこのところ、次々と新しいビジネスをスタートさせている。両紙は一昨年から昨年にかけて、それぞれワイン・クラブをスタートさせた(The New York Times Wine ClubはGlobal Wine Company, Inc.に、WSJwineはLaithwaite's Wine Merchantに運営を委託)。旅行業界にも進出している。『ニューヨーク・タイムズ』は年に一度、旅行会社と旅行客の両方を対象にしたトレードショーを開催している。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は今年1月、旅行ガイド・予約のサイト、WSJTravelをスタートさせた。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』の発行元ニューズ社(News Corp.)は教育事業への進出も目論んでいる。同社は今月初め、元ニューヨーク市教育監のジョエル・クライン(Joel Klein)氏を雇い入れ、教育事業開発担当の役員に任命した。そして今週、教師のための支援システムを提供する企業、ワイヤレス・ジェネレーション(Wireless Generation)を、3億6千万ドルを投じて買収すると発表した。

会員組織の展開は、媒体力とブランド力をいかした読者の囲い込み、読者一人あたりの売上拡大を狙ったものか。さらにはニューズ社のように、事業の多角化を進める媒体社も、これから増えていくだろう。

◆情報ソース
Reel Time: NYTimes Launches Film Club (MediaPost)
News Corp. to Buy Education Technology Firm for $360 Million (The Hollywood Reporter)
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アマゾンの電子リーダーKindleは新聞の救世主にならない

米国で5月6日、アマゾンが電子ブックリーダーの第3世代機種「キンドルデラックス(Kindle DX)」を発表した。Amazon.comで注文を受け付けているが出荷は夏以降になるとのこと。

Kindle DX

Kindle DXの特長は、前モデルKindle 2の2.5倍(9.7インチ)というディスプレイの大きさだ。PDFリーダーと自動画面回転機能も備えており、ペーパーバック大の書籍に最適化していたKindle 2に対して、新聞や雑誌が楽に読めるようになった。インターネットから直接コンテンツをダウンロードすることができ、容量も増えて書籍およそ3,500冊分のデータを蓄えることができる。

『ニューヨーク・タイムズ』(The New York Times)、『ワシントン・ポスト』(The Washington Post)、『ボストン・グローブ』(The Boston Globe)の3紙は、新聞の宅配ができない地域に住む読者に向けて、長期購読契約を条件に安い値段でKindle DXによる購読サービスを提供する。また、大手教科書出版社のワイリー(Wiley)、ピアソン(Pearson)、センゲージラーニング(Cengage Learning)も教科書の電子化でアマゾンと合意。アリゾナ州立大、プリンストン大など6つの大学で、学生にKindleを配布するパイロット・プログラムが開始される。

この大画面のキンドルが普及すれば、オリジナルと同じレイアウトで新聞を読むことができる。当然のことながら広告も表示される。有料で新聞を読む読者と広告主を呼び戻すことができるかもしれない上に、紙・印刷代も配送費もかからないのだから、『ニューヨーク・タイムズ』のサルツバーガー(Arthur Sulzberger)会長をはじめ新聞社の経営陣が期待するのはわかるが、懐疑的な見方をする人も少なくない。

『フォーチュン』誌(Fortune)は、小型のノートブックPCやiPhoneのような高機能の端末が普及する中、電子リーダーが受け入れられるにはカラー表示や動画機能が欠かせないだろうとの見方を紹介している(電子リーダー向けの大型ディスプレイを開発するプラスティック・ロジック社(Plastic Logic)によると、ディスプレイをカラー化するには少なくともあと2年かかるとのこと)。価格の問題もある。Kindle DXは489ドルと安くない。印刷・配送費を節約できる分、新聞社が端末の費用を助成すれば良いという意見もあるが、インターネットで無料の記事を読むのに慣れてしまった読者に再び購読料を払わせるのは並大抵ではないだろう。さらに、最大の障壁となるのは、誰がコンテンツの配信を管理するのかという問題だと、『フォーチュン』は指摘している。配信を管理するということは、すなわち購読者と購読料金をコントロールするということだ。その役割をアマゾンに委ねることに危機感を持つUSAトゥデイ(Today)やニューズ社(News Corp.)はアマゾンの競合であるプラスティック・ロジックやソニーなどと協力関係を築いているし、ハースト社(Hearst)は独自開発の電子リーダーを年内にも発表する計画だ。

『メディアポスト』(MediaPost)は『ニューヨーク・タイムズ』を例に具体的な数字をあげて、キンドルは新聞社の救世主になり得ないと書いている。

この記事によると、ニューヨーク・タイムズ社の今年1-3月期の販売売上は2億2,800万ドルで、ABC(Audit Bureau of Circulations)によると、この売上をもたらしているのは約100万件のフルウィーク(日曜と平日すべて)の定期購読と、約50万件の日曜版のみの定期購読契約だ(フルウィークの年間購読料は約600ドル)。一方、Amazon.comでKindle版の『ニューヨーク・タイムズ』を購読した場合は、月に13.99ドルで済む。仮に、150万件の定期購読者が全員Kindle版に切り替えたとすると、2億2,800万ドルの売上は6,300万ドルに縮小してしまう。(販売売上には定期購読だけでなくニューススタンドでの販売も含まれているから、この『メディアポスト』の計算はかなり乱暴だと思うが、廉価なKindle版に切り替える人が多くなると売上が大幅に縮小するのは事実だ。そのためにニューヨーク・タイムズ社は、特別料金で定期購読を提供する対象を、宅配のできない地域の居住者に限定したのだろうが、それだけでは読者の減少に多少の歯止めはかかるにしても、実績に大きなインパクトを与える規模ではない。)

アマゾンはキンドルの販売台数を公表していないが、多めに見積もって2010年までに500万台に到達したとして、さらにキンドル・オーナーの5人に1人が『ニューヨーク・タイムズ』の定期購読者になった(つまり100万人の定期購読者を獲得できた)と仮定しても、それによる売上は1億6,800万ドルで、たとえそのすべてがプリント版からの乗り換えではなく新規読者だとしても、近年のニューヨーク・タイムズ社の売り上げ減を補うには遠く及ばない。同社の総売上は、2007年から2008年にかけて2億4,500万ドル落ち込み、今年1-3月期は前年同期比1億4,000万ドル減と、縮小幅は拡大する一方だ。

となると、頼みの綱は広告だが(ニューヨーク・タイムズ社の売上の80%は広告による)、キンドル版の掲載広告に他の携帯機器のインターネット広告と同様の料金が適用されるとすると、そのインパクトも十分ではない。いま、iPhoneのような広告料金が高めの端末でも、CPMは30ドル程度だ。上記の100万人のキンドル版読者が日に3回、新聞に目を通し、そのたびに3種類の広告が表示されるとしても、それによる売上は年間1億ドルにしかならない。上記の販売売上増とあわせても2億6,800万ドルで、2007~2008年の売上の落ち込み分をかろうじてカバーできる程度だ。

もちろん、キンドル版はプリント版のような印刷・配送費がかからないから、その分収益は改善するだろうが、上に記したのはきわめて楽観的なシナリオだから、実際は収益が悪化する可能性も十分にある。その意味で、キンドルは新聞の救世主にはならないという『メディアポスト』の読みは、おそらく正しいと言わざるを得ない。

◆情報ソース
Amazon's newest Kindle takes aim at newspapers (Fortune)
News Analysis: Why Kindle Can't Save Newspapers (MediaPost)

新聞社の不振は加速。NYタイムズは風前の灯。

米国の新聞社の業績は悪化の一途をたどっている。

メディアポスト(MediaPost)がABC(Audit Bureau of Circulation)の統計をもとに計算したところによると、日刊紙トップ100紙の平日の発行部数合計は、2008年10月~2009年3月の半年間の平均で、前年同期の2,656万部から2,459万部へと7.5%減少した。しかも、その減少率は大きく加速している。同じ100紙の総発行部数は、2002年から2008年までの6年間ではマイナス11.5%(年平均マイナス2%未満)だったが、昨年から今年にかけてはマイナス6.5%だった。

主な全国紙およびメトロ紙の発行部数と減少率は以下のとおり。
※部数は2008年10月~2009年3月期の1号あたりの平均発行部数。減少率は前年同期の平均発行部数との比較。
USA Today 2,113,725部(▲7.5%)
New York Post 558,140部(▲20.6%)
New York Daily News 602,857部(▲14.3%)
New York Times 1,039,031部(▲3.4%)
Los Angeles Times 723,181部(▲6.6%)
Chicago Tribune 501,202部(▲7.5%)

唯一、ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)だけは、わずか0.6%ではあるが部数を伸ばした(一号あたりの平均発行部数は2,082,189部)。

この中でニューヨーク・タイムズ紙は落ち幅がゆるやかだが、同紙を発行するニューヨーク・タイムズ社(New York Times Co.)の経営は、いよいよ風前の灯と言っても良い状態だ。今年1‐3月期の同社の広告売上は、前年同期と比べ27%、およそ1億2400万ドルも落ち込んでいる。これが大きく響いて、同社はこの四半期で7,447万ドルもの赤字を計上した。

そんな中で開かれた同社の第113回年次株主総会で、アーサー・サルツバーガー(Arthur Sulzberger)会長は、NYTimes.comをはじめとする同社のサイトの有料化を考えていると発表した。具体的な計画には触れなかったが、「新たな視点で、綿密に、掘り下げて様々な購読、記事ごとの課金、およびマイクロペイメントのモデルを検討していく」とのこと。同時にサルツバーガー氏は、広告依存型のサイト運営をすぐには転換するつもりのないことも明らかにした。同社は「他の30以上の企業のビジネスモデルを分析し、それらがいかに効率的にオンラインで収益を上げているかを検討したが、そのほとんどよりもNYTimes.comの広告モデルの方が大きな収益を得ていることがわかった」からだという。

さらに、サルツバーガー氏は、成功に向けてどのような戦略を立てようとも、そこで鍵となるのはジャーナリズムの質であると強調した。彼は、トリビューン社(Tribune Co.)のサム・ゼル(Sam Zell)会長が昨年、インタビューに答えて「ピューリッツァー賞で金を稼げるとは思ったことがない」と発言したことを取り上げ、「(この発言には)慎んで、しかし断固として反対する」と訴えた。「優れたジャーナリズムこそが読者の熱心な支持と忠誠心を獲得し、そのような読者の質の高さとコミットメントこそが広告を獲得する原動力となる」というのだ。(ニューヨーク・タイムズは今年、調査報道や速報など5部門でピューリッツァー賞を受賞し、同紙の受賞数は計101になった。)

しかし、ニューヨーク・タイムズ社の株価はこの一年で75%も下落し、最近ではすべての主要格付け機関が同社の格付けを下げた。それでもいまの体制を維持できているのは、サルツバーガー家が多数議決権株式(super voting share)を握っているためだ。だが、資金が枯渇し身動きできない状態になってしまっては、それも何の役にも立たない。ジャーナリズムの牙城を守ってほしいとは思うが、経営の立て直しを考えるとサルツバーガー氏の発表はあまりにも説得力に欠ける。ゼニス・オプチメディア社(Zenith Optimedia)の予測によると、今年の新聞広告市場は12%縮小するというのだから。

◆情報ソース
Big Newspaper Circs Drop 7.5%(MediaPost)
NYT Again Mulls Paid Online Content (Adweek)
NYTimes Co. Reconsiders Online Paid Subscriptions (MarketingVOX)

ブログやアグリゲーターだけでなくグーグルも寄生虫扱い

通信社や新聞社が提供するコンテンツを「横取り」しているブログやアグリゲーターに対して、法的措置などを講じるとAPが発表した。同社の年次総会の席で会長のディーン・シングルトン氏は、同社が配信契約を行っているウエブサイトとともに、配信契約を行わずにニュースを利用している運営者に対する法的措置を模索するとともに、そうした運営社のニュースの掲載方法や内容を監視するシステムを開発すると語った。

この背景には言うまでもなく、広告売上と販売の減少という新聞業界の二重苦がある。頼みのオンラインでも十分な収益を上げることができずにいる新聞社にとって、彼らが苦労して生み出したコンテンツを、対価を支払うことなく利用してアクセスを稼ぐサイト運営者は目障りなだけでなく、時として自社のサイトへのトラフィックの流入を妨げる忌まわしき存在なのだ。

彼らの避難の標的はブロガーやアグリゲーターにとどまらない。

ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)の編集長ロバート・トムソン氏(Robert Thomson)は、オーストラリアの全国紙オーストラリアン(The Australian)の取材に応えて、コンテンツはタダだという「間違った認識」から利益を得ているグーグルのような企業は「寄生虫」だとこき下ろした。

一方、非難の的になっているグーグルは、自分たちはトラフィックを増やし新聞社がオンライン広告で収益を上げる手伝いをしているであって、決してコンテンツを横取りしているのではないとの、法務担当のコメントを同社のブログに掲載した。「我々はニュースを検索・表示するだけでニュースそのものを掲載するわけではない。グーグルに掲載される見出しや記事の抜粋を見た読者は、もっと詳しい記事を読みたいと思うはずであり、そのリンクの先にはオリジナル記事の掲載サイトがある」と、そのブログには述べられている。また、同社のCEO、エリック・シュミット氏(Eric Schmidt)は、APが上記の発表を行った翌火曜(4月7日)、米新聞協会の年次総会に出席し、グーグルはAPに数百万ドルの配信料を支払っていると反論した。

しかし、新聞業界からは、彼らが「寄生している」と称するブログやアグリゲーターとオリジナルの記事とが同列に扱われ、時としてそれらのサイトがオリジナルの記事よりも上位に表示されることに対する不満が噴出している。また、グーグル・ニュースに対しても、ユーザーは見出しや抜粋だけで満足して、オリジナルの記事を見に行かなくなってしまうとの批判がある。

これに対してシュミット氏は、グーグルはあくまでも消費者を尊重する立場にあり、オリジナルの記事を必ず見に行くように仕向けるなど、彼らに何かを強制することはできないと主張している。

もともと様々な情報が区別なく遍在するのがネットの世界だ。その中で、ブログやアグリゲーターにアクセスが集まるのは、どんなニュースに注目すべきなのか、ある記事で報じられていることがすべてではなく別の見方があるのではないかといった「知見」を、人々が欲しているからではないのか。だとしたら考えるべきなのは、記事の提供者が正当な対価を得るべきだという原則論にとどまらず、いまの新聞報道のあり方は果して今日的なのか、つまり新聞社は現代の消費者に取って魅力あるコンテンツを提供できているのか、ということだと思うのだが。

◆情報ソース
AP to Aggregators: Free Ride Is Over (Advertising Age)
WSJ editor attacks Google 'parasite' (The Australian)
Google is good for newspapers: executive (Yahoo! TECH)
Google CEO: Consumers Won't Pay for Most Online News (Advertising Age)

コンテンツ有料化は新聞を救うか

新聞業界に吹き荒れる冬の嵐は収まりそうにない。

先週21日、『ニュー・ヘイヴン・レジスター』(New Haven Register)などを発行するジャーナル・レジスター(Journal Register Co.)が、破産法11条の適用を申請した。23日には、180年の歴史を持つ地方紙『フィラデルフィア・インクワイアラー』(The Philadelphia Inquirer)などを発行するフィラデルフィア・ニュースペーパーズ(Philadelphia Newspapers LLC)も破産法の適用を申請した。

ジャーナル・レジスターの負債総額はおよそ7億ドル。同社は昨年、債務不履行に陥り、コネチカット、ペンシルバニア等で発行していた数多くの週刊新聞を廃刊した。負債の多くは90年~2000年代に、次々とこれらの新聞を買収した際に生まれたものだった。

Philadelphia Inqurer

フィラデルフィア・ニュースペーパーズは、まもなく期限が訪れる負債3億9千万ドルの支払いができなくなった。この負債のほとんどは、現CEOのブライアン・ティアニー(Brian Tierney)氏が2006年に、『インクワイアラー』紙と『フィラデルフィア・デイリー・ニューズ』(The Philadelphia Daily News)をマクラッチー社(McClatchy)から買収した際の借入金5億6千万ドルの一部だ。ティアニー氏によると本業の経営は健全で利益も出しているため、新聞の発行は続けながら経営再建を目指すという。

ハースト(Hearst Corp.)も24日、同社傘下のハースト・ニュースペーパーズ(Hearst Newspapers)が発行する、144年の歴史を持つ『サンフランシスコ・クロニクル』(The San Francisco Chronicle)を、短期間に大がかりな経費節減ができなければ売却か廃刊すると発表した。

新聞社が危機に瀕しているのは米国だけではない。英国でも新聞社の広告売上は昨年、対前年比11.68%の落ち込みを見せた。英国最古のタブロイド紙『デイリー・メール』を発行するデイリー・メール&ジェネラル・トラスト社(Daily Mail & General Trust)の今年1月の広告売上は、全国紙で23%、地方紙で40%も下降した。フランスでも今年1月、サルコジ大統領が18歳になった若者に日刊紙を1年間無料で提供すると発表したが、これは活字メディアの支援策の一環だ。

こうした中、2月18日のエントリーで紹介したタイム誌の記事は大きな反響を呼び、活字メディア(特に新聞)はオンラインで救済できるかをめぐり、当の新聞を中心に多くの意見や提言が寄せられている。アドバタイジング・エイジ(Advertising Age)の記事によると、それらの見解を大別すると、ユーザーはコンテンツ課金を受け入れるというもの(課金肯定派)と受け入れないというもの(課金否定派)に分けられるようだ。

TIME save newspaper

MSNBC.comの社長チャーリー・ティリンガスト(Charlie Tillinghast)氏や、ニューヨーク・デイリー・ニュース(New York Daily News)の発行人でUSニュース&ワールド・リポート(US News & World Report)の編集長でもあるモート・ザッカーマン(Mort Zuckerman)氏は否定派だ。

肯定派は有料サイトの成功例としてウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)やフィナンシャル・タイムズ(the Financial Times)を挙げるが、読者の多くが仕事上の必要から呼んでいるこれらの新聞以外に、有料化に成功している新聞サイトはないに等しい。肯定派はまた、ニュースに対する需要はいま、これまでにないほど高まっていると言う。確かに、米国の新聞サイトのトラフィックは昨年、12%伸びたし、MSNBC.comの今年1月のユニーク・ビジター数は、4,500万に達した。

しかし、需要の高いスポーツ、ビジネス、国内・国際ニュースといったカテゴリーは、どこのサイトでもニュースを掲載しており、有料化するために質の面で差別化するのは至難の業だ。ウォール・ストリート・ジャーナルの編集長、ロバート・トムソン(Robert Thomson)氏は、「グーグルは人々をコンテンツに誘導するが、その質の違いを見分ける役には立たない。しかしコンテンツを有料化するとなると、読者に質の違いを判断してもらわなくてはならない」と述べている。

こうして見ると、コンテンツの有料化は極めて難しいように思えるのだが、先のタイム誌の記事を寄稿した、同誌の元編集主幹ウォルター・イザクソン(Walter Isaacson)氏はどう考えているのだろう。彼のインタビューが、アドバタイジング・エイジに載っていた。その一部を要約する。

Ad Age(以下AA) 本質的な問題は、新聞がかつての独占的な地位を失ったことにあるように思える。新聞と同様のコンテンツを提供するソースがいまのように数多くある時代に、どうしたら課金できると思うか。

Isaacson氏(以下WI) APやロイターで同じようなことを伝えている記事が読めるなら、ワシントン・ポストの記事にお金を払わない人はたくさんいるだろう。しかし、私が言っているのは高額な課金のことではない。数十セントか1ドル程度であれば、ワシントン・ポストの記事やニューヨーク・タイムズの記者イーサン・ブロナーのガザのレポートを読むために、私はまちがいなく支払う。

今回、問題提起をしたのは、新聞社のいまのウエブ広告売上は、おそらくウエブ運営をするにも足らぬほどのものだからだ。広告売上が毎年拡大し続けるなら、こんな議論をする必要はない。

私は、タイム社のサイト(Pathfinder:同社発行雑誌のサイトのネットワーク)構築に携わったものとして、罪悪感をもっているんだ。

AA Pathfinderは、有料化を検討したが、結局しなかった。

WI 当時、ウエブ広告は急激な成長を見せ始めたところだった。だから、人がたくさん集まるサイトを作れば、有料化する必要はないだろうと考えた。そのまま推移していれば、素晴らしいビジネスモデルになっただろう。私はいまでも読者から売上を得ることに意味があると思っているが、それは哲学的な問題だ。

ところで、いまの議論は旧来型のメディアを救うだけでなく、ニューメディアに収益をもたらすためにもなる。単なるエゴからではなく、コミュニティへの貢献を望み、そのためにブログなどで情報を発信しているような人や、あるいはゲームや動画といった知的資産を作り出している人は、その対価を人々が支払えるシステムがあれば励みになるだろう。



引用しなかったが、イザクソン氏は上のインタビューで、自分の記事をきっかけに多くの意見・提言が寄せられたことを大変心強いと語っている。そのとおりで、ひょっとしたらこうした議論の中から新しい技術やビジネスモデルが生まれるかもしれない。アップルをはじめ、いま世の中を動かしている有力企業やビッグブランドの中には、深刻な不況期に生まれたものが数多くあるのだ。

◆情報ソース
Red Ink: Philly Papers, Journal Register File for Bankruptcy (MediaPost)
'San Francisco Chronicle' May Be Sold, Shut Down (Editor & Publisher)
U.K. Magazine Circulation Up, While Papers Struggle (Advertising Age)
Wanted: Online Payment Plan for Print (Advertising Age)
Making the Case for Micropayments in News (Advertising Age)
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