A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 広告業界

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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広告のセレブリティ起用は予算の無駄遣い?

セレブリティを起用したテレビCMは、そうでないCMに比べて効果がないばかりか、逆効果になる場合さえあるという、有名タレントやスポーツ選手に大枚をはたいている広告主が聞いたら卒倒しそうな調査結果を米調査会社エース・メトリクス(Ace Metrix)が発表した。

“Celebrity Advertisements: Exposing a Myth of Advertising Effectiveness”という物騒なタイトルが付けられたこの調査は、昨年初めから11月まで、2,600以上のテレビ広告を対象に行われた。エース・メトリクス社の効果測定方法は、テレビ広告を “persuasion”(説得力:欲求喚起、妥当性、好感度、関心、情報価値、態度の変化の6つの要素からなる)と、 “watchability”(見る人を引き込む力を)の2面から評価し、その結果を数値化(Ace Scoreと呼んでいる)するもの。

同社が公表したAce Scoreを見ると、セレブリティを起用した広告の平均スコアは全広告の平均を1.4%下回り、逆にセレブリティを使わなかった広告の方がスコアで全広告の平均を8%上回っている。また、Ace Scoreが全広告の平均を10%以上上回ったセレブリティ広告は全体の12%に満たず、逆に全広告の平均を10%以上下回ったセレブリティ広告が20%近くあった。

セレブリティは神通力を失いつつある。その理由を、エース・マトリクス社のCEO、ピーター・ダボール(Peter DaBoll)氏は、消費者の急速な変化だと説明する。つまり、いまの消費者は遠い存在であるセレブリティよりもソーシャル・ネットワークのような身近なところにいる人の言葉に耳を傾け、例えセレブリティのお薦めでも押しつけられた製品には関心を示さず、自分の生活と結びつきが強く情報価値の高い広告だけを受け付ける傾向がある。そして、広告主は広告メッセージを伝える上でセレブリティがどのような価値をもたらしてくれるかを自問すべきで、セレブリティの起用を決めてから広告メッセージを吟味するのは順序が逆だという。

ちなみに、この調査でスコアがもっとも低かったのはタイガー・ウッズを起用したNIKEの広告で、平均を30%も下回った。

◆情報ソース
Study: Celebs (Except Oprah) Ineffective In Ads (MediaPost)
Celebrities in Advertising Are Almost Always a Big Waste of Money (Advertising Age)
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広告主の費用削減要求に音を上げる広告会社

クライアント企業は、媒体社にマーケティング・パートナーとしての役割を求める一方で、マーケティング予算の管理に厳しい目を向けている。以前、コカコーラが広告会社への報酬を、広告のパフォーマンスに基づいて決める新制度を導入すると書いたが、プロキュアメント(購買部門)を立てて料金交渉を行うクライアント企業も現れ、音を上げる広告会社も出てきた。

『アドバタイジング・エイジ』(Advertising Age)の伝えるところによると、貨物輸送大手UPSの2億ドル以上のグローバル広告予算をめぐるピッチ(競合プレゼンテーション)から、WPPグループのジェイ・ウォルター・トンプソンが撤退した。同社のボブ・ジェフリー会長・CEOは社内向けのメールで次のように書いた。「UPSは予算と同様に取引上の問題も大きな企業だ。彼らは当社や他の広告会社をパートナーして扱ってしかるべきだが、そのような文化は彼らにはないようだ。我々は競合を勝ち抜くために膨大な時間とエネルギーを費やしてきた。したがって、この(撤退の)決断は簡単なものではなかった。」このジェフリー会長の言葉が、JWTとUPSの間で何が起こったかを如実に語っている。

フォルクスワーゲン・オブ・アメリカは先週、北米担当のクリエイティブ・エージェンシーとしてインターパブリック・グループのDeutschを指名したが、その数週間前に、同社ほかコンペに参加する広告会社を本社に呼び寄せ、予算や報酬に関する交渉を行った。会議室からげんなりした顔で出てきた、ある広告会社のAEは、次に部屋に入ろうとする競合先のチームに “Don’t cave”(負けるなよ)と囁いたという。フォルクスワーゲンの購買部門の締め付けがいかに厳しいものだったか、想像がつくだろう。

ミネラルウォーターの「エビアン」やヨーグルトで知られる食品大手のダノン・グループは、世界およそ20の市場における広告の見直しを進めている。その取り扱いを巡って、少なくとも3社の広告会社が4カ月近くの間、ピッチを行ってきたが、当初ダノンから提示された提案指示書(request for proposal)は、費用(あるいは費用対効果)に関する質問で埋め尽くされていたという。いわく「予算に関していかに柔軟に対応できるか(つまりどれだけ値引きを行えるか)詳細に示してください」「CPMの改善策を示してください」「ネットGRPの改善策を示してください」等々。ある広告会社のAEは「ダノンの関心は費用だけだ。彼らはメディアを調達資材なみにしか考えていない」ともらしている。このコンペの結果、北米のプラニング/バイイング(1億ドル)の扱いはアバス社(Havas)のMPG、英国(4000万ドル)はWPPグループのメディアエッジ:CIA、中国(1億5000万ドル)の扱いはオムニコム・グループのOMDが獲得する見通しだという。

世界的な不況の中で、企業が費用削減やコスト効率の向上に血眼になる事情はわかる。しかし、そのための努力を一方的に広告会社や、ひいては媒体社に求める風潮には釈然としないものを感じる。広告会社や媒体社が一度受け入れた条件は、景気が良くなったからといって元に戻してもらえる保証はどこにもないのだ。日本でも雑誌広告の効果測定を求めるクライアント企業の声に押されて、電通の音頭で携帯電話を使った調査が行われているが、その費用はすべて電通が負担するらしい(調査への協力を読者に呼びかける広告のスペースは出版社が無料提供)。本来であれば、こうした努力は媒体社と広告主の双方の負担で行うべきものだと思うのだがいかがだろうか。

◆情報ソース
JWT Pulls Out of UPS Review
Volkswagen Hands U.S. Advertising Account to Deutsch, Los Angeles
Havas' MPG to Hold on to $100 Million North-American Danone Media Account
Fed-Up Shops Pitch a Fit at Procurement
(以上、すべてAdvertising Age)

追記(2009年10月30日)

UPSの扱いはWPPグループのオグルヴィ・アンド・メイザー(Ogilvy & Mather)が獲得した。エージェンシー・ピッチには他に、同じWPPグループのヤング・アンド・ルビカム(Young & Rubicam)とアバス社のEuroRSCGが参加していた。現在、UPSの担当広告会社であるインターパブリック・グループ(Interpublic Group of Cos)のMarting Agency(米国内)と、国外市場を担当しているマッキャン・エリクソン(McCann-Erickson)、ユニバーサル・マッキャン(Universal McCann)およびMRMとの取引は、2010年初めに終了する。

◆情報ソース
UPS Taps Ogilvy to Handle Global Ad Account (Advertising Age)

コカ・コーラが広告会社の業務の価値で報酬を決める制度を推進

コカ・コーラ社が、パフォーマンスに基づいて広告会社への支払いを行う、価値ベースの報酬制度を標準的な慣行として推進していくと、4月20日に開催された広告主協会の財務経営カンファレンスの席上で発表した。この報酬制度は、広告に効果が認められなければ、広告会社に実費以上の支払いを行わず、代わりに目標を達成した場合は最大30%のフィーを認めるもの。「広告会社には利益を上げてほしいが、それは保証されるものではなく目標の達成を通じて得るものでなくてはならない」と、ワールドワイドで同社のメディア&コミュニケーションを管轄するサラ・アームストロング氏はいう。

コカ・コーラはこれまで、業務量に基づいて支払いを行うフィー制度を採用していたが、昨年、5つの市場(オーストラリア、中国、ドイツ、英国、フィリピン)で価値ベースの報酬制度への転換を行った。今年はさらに対象市場を少なくとも35にまで拡大し、2011年までにすべての広告/メディア・エージェンシーに適用する予定だ。コカ・コーラと取引のある複数の広告会社の役員は非公式に、新制度の背景にある考え方には反対しないが、実際にどのように適用するのかが問題だと懸念を表明している。「価値の増大に応じて請求金額が増えるのは良いが、やっかいなのはどうやって価値を評価するかだ」と、新制度への移行を終えていないある広告会社のトップは述べた。

これまで、業務の価値を計測するのは広告会社の役割で、目標を達成するために費やす人の数や作業時間を自己申告することによってそれを行ってきた。コカ・コーラの新制度では広告主側が、設定された任務の戦略的な重要性やその他の要素、達成のために投入される人材の量、あるいは他の広告会社でも達成可能な任務か、といった観点をもとに価値を決定する。ひとたび価値が決定されると、広告会社の業務遂行状態とそれによって広告主の業績がどう変化したかによって、広告会社への支払金額が決められる。目標を完全に達成できれば、広告会社は最大で経費の30%にあたるフィーを手にできる。逆に全く目標を達成できなければ、広告会社が請求できるのは経費だけで、利益はゼロになる。

カンファレンスでのアームストロング氏の発表に、他の広告主たちは沸き立った。アンハウザー・ブッシュ社(Anheuser-Busch)のマーケティング担当バイス・プレジデント、キース・レビー氏(Keith Levy)もそのひとりだが、彼は「広告会社がどれだけ努力を傾けようとそれと価値とは別物だというコカ・コーラの主張には賛成だが、目標達成に向けて時間を使い努力をするのは事実なのだから…」とも言う。

この不況下で、広告会社と値下げ交渉をする広告主は多い。しかし、報酬制度の変更は経費節減とは関係ないと、アームストロング氏はいう。とはいっても、コスト削減はコカ・コーラ社の大命題のひとつとなっている。同社は2011年までに、年間400万~500万ドルのコストカットを実現することを掲げており、その大きな標的になっているのがマーケティング予算だ。広告会社利用の最適化も課題になっている。同社は過去18ヶ月間に、取引先広告会社の数を半分以下に減らした。にもかかわらず、同社は昨年、全世界で前年を200万ドル上回る30億ドルもの宣伝予算を投じている。

コカ・コーラの新報酬制度は、理論的には宣伝の質を予算規模に応じたものに高めるための良策といえるが、リスクが伴う。さんざん苦労をした挙句に利益がゼロになる危険性があることがわかっていて、広告会社が良い仕事をできるかどうかだ。アームストロング氏は、「広告会社は競争が厳しいことを理解しているから、何があろうと最高の仕事をするはず」と、意に介さない様子だが。

人材と時間を最大限に投入しても売上にならない可能性があるという状況は、広告会社にとっては大きなギャンブルだろう。特に、いまのような厳しい時期に、それを引き受けるだけの余裕が広告会社にあるのか。

先だって、オムニコム・グループ(Omnicom Group)の今年第1四半期の業績が発表されたが、純利益は昨年同期比で21%の落ち込みを記録した。売上もワールドワイドで見ると、昨年の32億ドルから27億ドルへ14%減少した。米国内に限ると、売上は16億ドルから15億ドルへ8%減。米国外では15億ドルから12億ドルへ20%減と大幅に下落した。他の広告グループの業績はまだ発表されていないが、景気後退の影響は明らかだろう。

◆情報ソース
Coke Pushes Pay-for-Performance Model (Advertising Age)
Omnicom First-Quarter Net Income Falls 21% (Advertising Age)

メディアのみにあらず―オムニコムが大規模なレイオフ

世界最大の広告会社グループ、オムニコムが、全世界の従業員(約7万人)の5%にあたる大規模なレイオフを計画していると『アドバタイジング・エイジ(Advertising Age)』が報じている。

この報道以前に、『アドバタイジング・エイジ』は、オムニコム・グループでクライスラーのメディア・バイイング/プラニングを担当するPHDが、デトロイト・オフィスの7名を解雇しアトランタ・オフィス(従業員23名)を閉鎖すると報じた。また先月には、同グループの中核企業であるBBDOがデトロイト・オフィスの従業員の22%にあたる145名をレイオフするとの記事を掲載した。

今回の報道では、オムニコム・グループのどの企業が対象になるのかは明らかにされていないが、存亡に危機に立たされるクライスラーをクライアントに持ち、今年ペプシの扱いを失ったBBDOは、さらなるリストラを免れないだろうと、『アドバタイジング・エイジ』は書いている。

オムニコムはBBDOをはじめ、DDBワールドワイド、TBWAワールドワイド、グッドバイ・シルバースタイン&パートナーズ(Goodby Silverstein & Partners)などを傘下に持つ世界最大の広告・PR会社グループ。同グループは、クライスラーがいまのまま経営破たんすると、およそ8千万ドルの貸倒金を抱えることになると言われている。

◆情報ソース(すべてAdvertising Age)
Omnicom Set to Cut Up to 3,500 Jobs
Chrysler Agency PHD to Cut 30 Staffers
BBDO Detroit Cuts 145 Jobs as Chrysler Skids
A Chrysler Bankruptcy Could Leave Omnicom Out $80M



リーバイ・ストラウス社が広告料金の透明化を要求

リーバイ・ストラウス社(Levi Strauss & Co.)が自社ブランドであるリーバイス(Levi’s)とドッカーズ(Dockers)の宣伝(予算5,000万ドル)のメディア・プラニングとバイイングを任せるエージェンシーを決めるためコンペを行ったが、そのために同社が用意したRFP(Request for Proposal: 提案依頼書)の内容が物議を醸している。

このRFPの「媒体効果評価(Media Efficiency Review)」の項目で、同社はコンペ参加エージェンシーに、“広告効果データの有効性を実証するために、他の広告主への請求金額と、エージェンシーのデータベースにより測定された広告ごとのターゲット・オーディエンスのインプレッション数を開示する”ことを求めたのだ。RFPの内容はリーバイス・ストラウス社が起案し、エージェンシー評価を手伝うアドバンテージ・メディア社(Advantage Media)が作成した。

上記の要求に付け加えて、リーバイ・ストラウス社は、広告主を特定できるような情報を求めるものではない、と記しているが、広告効果分析を行うには、例えばテレビ広告ではCM放映日時、番組名、請求額を明らかにしなくてはならず、それさえわかれば広告主を特定するのは難しいことではないと、多くの業界関係者が指摘している。

このリーバイ・ストラウス社の要求を、『アドバタイジング・エイジ』誌(Advertising Age)は、「常軌を逸した物騒な要求」と書き、エージェンシー側の反対意見を紹介している。エージェンシーが反対する根拠は、広告主との守秘義務に反する行為だからというものだ。

結局、このコンペで勝ち、アカウントを獲得したのはオムニコム・グループ(Omnicom Group)のOMDだったが、同社がRFPの内容に応じて要求された情報を開示したのか否かはわからない。同社も、最後までコンペを争ったゼニス社(Zenith)やドッカーズ・ブランドの現担当エージェンシーであるインターパブリック・グループ(Interpublic Group)のコーズ・イニシアティブ社(Cos.’ Initiative)も、RFPの内容については口をつぐんでいる。確かなのは、広告料金の設定は、明らかに広告主ごとに異なっているということだ。
エージェンシー側は「ベストプラクティス」を強調するが、それが果たして本当にベストプラクティスなのかどうかは、広告主側は知ることができない。

こうした広告料金の不透明性を、元Adweek編集主幹のジム・エドワーズ(Jim Edwards)がビジネス系ウエブサイト『BNET』上で批判している。

エドワーズ氏によると、例えば乗用車を購入するとき、ディーラーの営業マンから料金の提示があったら、それが他の人への提示価格と比べて安いのか、あるいは他のディーラーと比べてお得なのかを気にしない人はいないだろうというのだ。広告業界で同じことをやろうとすると非難されるのは、エドワーズ氏によると、広告主への守秘義務などではなく、ひとたび料金が透明化されると競争原理が働き確実に低料金化につながるからだという。実際に、そのためなら自社の契約広告料金を公開してもかまわないという広告主もいるのだ。

『アドバタイジング・エイジ』は、いまの不況下では広告主が広告料金に過敏になるのは仕方がないという、あるエージェンシー幹部の声を紹介して記事を締めくくっているが、広告主がROI(Return on Investment: 広告の対費用効果)を重視し、広告会社や媒体社に透明化を求める流れは、例え景気が回復しても衰えないのではないかと思われる。オンライン広告が売上を伸ばしている要因のひとつは、その対費用効果の透明性にあるのだから。

◆情報ソース
Levi's Review Asks Shops to Reveal Sensitive Price Data for Other Clients (Advertising Age)
Levi’s Asks for Transparency and Media Buyers Balk (BNET)




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