A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 電子出版

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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iPad版雑誌の販売数が急降下

2週間ほど前のニュースだが、iPad版電子雑誌の販売数が急降下していると、『ウーマンズ・ウエア・デイリー』(Women’s Wear Daily)がABC(Audit Bureau of Circulations)の数値をもとに報じた。この記事によると、『ワイアード』(Wired)のiPad版は6月の第一号こそ10万を超すダウンロードを記録したものの、7~9月発行号の平均は31,711に急落し、さらに10月は22,000、11月は23,000に減少した。他の雑誌も下記のように、程度の差はあるものの販売数を減らしている。

ヴァニティ・フェア(Vanity Fair) 10,500(8月~10月平均)⇒8,700(11月)
グラマー(Glamour) 4,301(9月)⇒2,775(11月)
メンズ・ヘルス(Men’s Health) 約2,800(春)⇒約2,000(9月・10月とも)

『GQ』は、落ち幅は小さいものの11月の販売数は11,000と4月の発行開始以来最低だった(5月~10月の平均は13,000)。MashableはiPad版雑誌の低迷の原因を次のように分析している。

1. 価格
iPad版雑誌の価格($4.99)が他のappに比べて割高である。紙版の雑誌の一部あたり年間予約購読料金の方がはるかに安い。
2. 露出不足
ストアで大量のappの中から特定の雑誌を見つけるのは至難の業だ。ブラウズをたやすくするために、出版社サイドがAppストア内にニューススタンドを模したiBooks appを設け、カバーや主なコンテンツを見やすく陳列する必要がある。
3. 目新しさがない
動く表紙やインタラクティブなグラフを体験できるiPad版の雑誌は、最初こそ新鮮な体験だったが、その後、これといった新機軸がなかったために飽きられてしまった。
4. データサイズが大きすぎる
『ワイアード』の第1号のデータ容量は500MB近かったし、週刊誌『ニューヨーカー』の第1号も173MBあった。

デジタル版の販売数を公表していない雑誌も数多くあるので、すべての雑誌が販売数を減らしているのかどうかはわからないが、iPad端末の販売台数が5月末から年末までの間に5倍以上に拡大したこととあわせて考えても、iPad版雑誌の販売は不調と言っていいだろう。出版社はiPadの人気に便乗しようと次々と電子雑誌の販売に踏み切ったが、app storeはいまのところ、出版社にとって魅力的な販売拠点とはなっていない。以前にも書いたようにアップルは、割引料金による雑誌の定期予約購読を行わず、読者データを出版社と共同保有することを認めていないため、ほとんどの出版社は単号売りしか行っていない。

そうこうするうちに、グーグルがAndroid OSのスマートフォンやタブレット端末のユーザー向けに、電子雑誌・新聞の販売サービスを立ち上げる準備をしているとの情報が入ってきた。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(The Wall Street Journal)によると、グーグルはすでにタイム(Time Inc.)、コンデナスト(Condé Nast)、ハースト(Hearst)などの大手出版社との交渉を行い、アップルよりも好条件を提示しているらしい。また、同じ記事によると、アップルもiTunesでの雑誌定期購読の販売、および読者データの出版社との共同保有に向けて動いているとのこと。

アップルとグーグルの競争は出版社にとって歓迎すべきことにちがいない。しかし、Android端末だろうがiPadだろうが、紙で魅力を感じさせない記事は、デジタル版で多少の機能を付加したところで読者の心をつかむことはできないだろう。

◆情報ソース
Memo Pad: iPad Magazine Sales Drop (WWD)
Why iPad Magazine Sales Are Not As Bad As They Seem (Mashable)
Google Digital Newsstand Aims to Muscle In on Apple (The Wall Street Journal)
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電子書籍化―日米の動き

アップルが1月にiPadを発表してから、新聞社や出版社は自社媒体のiPad向けバージョンの開発を加速させている。そのトップランナーのひとつがコンデナスト社(Conde Nast)だ。

同社は4月にiPadが出荷されるのと同時に、雑誌『GQ』のiPad版電子雑誌の販売を開始すると発表した。また、これに続いて『ワイアード(Wired)』と『ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)』は6月号から、その後年内に『ニューヨーカー(The New Yorker)』と『グラマー(Glamour)』のiPad版も販売する予定だ。ガネット(Gannett)も近い将来、フラッグシップ紙である『USAトゥデイ』のiPad版電子新聞の発行を始めると発表した。コンデナストはすでに、『GQ』をはじめ有力誌のiPhoneアプリを発表している。また、ガネットの『USAトゥデイ』もiPhoneとiPod Touchで読める。

既存媒体のデジタル版ではなく、オリジナルなiPhoneアプリの開発チームを立ち上げた出版社もある。ハースト社(Hearst Corp.)はLMK(Let me knowの略)と呼ばれる部隊を編成し、同社が得意とするスポーツや芸能などをテーマとしたiPhoneアプリを開発。99セントで販売しており、今後もさらに多くの商品を市場に送り出す予定だ。

ここに登場したコンデナスト、ハーストなどの大手出版社は、昨年、元タイム(Time Inc.)の筆頭副社長ジョン・スクワイアーズ氏(John Squires)が発起人となってスタートした、デジタル雑誌の販売拠点の準備組織の一員でもある。この準備組織には “Next Issue Media”というワーキング・ネームが付けられ、発起会社として3社のほかにメレディス(Meredith)とニューズ(News Corporation)も名を連ねている。すでにウエブサイトも立ち上がっており、そこには雑誌だけではなく「新聞、書籍、ブログ等々、あらゆる有料コンテンツの流通を担う出版プラットフォームを目指す」と謳われている。

日本ではどうだろうか。上記のコンデナスト社の動きは米国に限ったことではなく、日本でも3月16日に、コンデナスト・ジャパンが雑誌「VOGUE NIPPON」「GQ JAPAN」「VOGUE HOMMES JAPAN」のiPad版電子雑誌を開発中であると発表した。その翌日の新聞では、政府が本や雑誌をデジタル化した電子書籍の普及に向けた環境整備に着手したとのニュースが掲載された。その一歩として官民共同の懇談会が開かれ、作家や出版者、新聞社、印刷会社、書店、通信事業者、メーカーの代表者が出席したという。

今後は、コンデナスト・ジャパンのように独自路線を歩む企業と、業界団体を中心に共同歩調を取っていこうという動きが並行して進んでいくのだろう。官民・業界団体をベースにした動きには、負け組を作らない、あるいは、いまの出版業界の体制をデジタル・コンテンツの流通においても温存していこうという意図が垣間見える。元マイクロソフト社長の成毛眞さんがツイッター(@makoto_naruke)で、「日経3頁「電子書籍官民で統一規格」米国じゃ競争、日本じゃ官民。会議の座長は78才。有識者74才、権利者75才と62才、新聞社75才。スゴイネ。」と嘆いていたが、未来の電子書籍リーダーのユーザー(おそらくその中心は若者たちだろう)が歓迎するのはどんなものなのかを視座に最適化を図るのでなければ、ダイナミックな動きを見せる外国企業にかなわないだろうし、紙からデジタルへの移行は、流通をはじめとする業界構造にも大きな変革をもたらすはずだ。それをビジネスチャンスにしようという発想がなければ、業界総負け組、またひとつ日本がガラパゴス化するという最悪の事態にもなりかねない。

◆情報ソース
Publishers Plan New iPad Products (MediaPost)
Hearst Jumps Into the Apps Business (The Wall Street Journal)
コンデナスト、VOGUE NIPPONなど3誌のiPad版電子雑誌アプリを開発 (CNET Japan)
電子書籍に統一規格、流通や著作権を官民で整備 (NIKKEI NET)

アマゾンが「キンドル」向け著作物の印税率を70パーセントに

アマゾンは1月20日、電子書籍リーダー「キンドル」向けに著作物を提供する著作権者への支払印税率を70%にするプログラムを発表した。この新しいプログラムは今年6月30日から、米国市場で利用可能になる。

支払印税は「キンドル」向け著作物の販売価格から流通コストを差し引いたネット金額をもとに算定される。流通コストは対象著作物のファイル容量によって、1MBあたり15セントで算出される。アマゾンによると、紙の書籍の印税は7~15パーセント、これまでの電子書籍の印税は25パーセントだから、著作権者はこれまでよりもはるかに高額な印税を得られることになる。ただし、新プログラムの適用を受けるには次の条件を満たさなくてはならない。

●対象著作物の販売価格は2.99ドル~9.99ドルの範囲であること
●かつ、販売価格は紙の書籍の最低市場価格よりも20%以上安くなくてはならない
これら2つの条件は、紙の出版社に厳しい価格競争を強いることになる。
●対象著作物は、著作権の効力が認められるあらゆる地域で販売可能であること
つまり、地域によってこのプログラムの適用を外れる(例えば、ある地域では紙の書籍のみを販売する)ことはできないということだ。高いロイヤリティ(印税)を得たいのであれば、例外なく「キンドル」をプラットフォームにすべしというアマゾンの著作権者囲い込み戦略である。
●対象著作物の価格は、アマゾンの競合他社の設定する価格と同等か低くなくてはならない。これは、他の電子書籍配信業者や電子書籍リーダーのメーカーに対する宣戦布告だ。

もちろん、新プログラムで取引するのか、これまでのアマゾンの標準プログラムを利用するのか、あるいはアマゾンとは契約しないのかを選ぶのは著作権者の自由だ。しかし、例えば8.99ドルの書籍を販売した場合、著作権者の得る印税は、既存の「キンドル」のプログラムでは3.15ドルだが、新プログラムを利用すると6.25ドル(ほぼ2倍)になる。あるいは日本でこの条件がそのまま適用されると、例えば定価1500円の書籍に関して著者が15パーセントの印税率で契約しているとすると、著者の収入は一冊あたり225円だが、「キンドル」の新プログラムで9.99ドル(920円程度)の単価を採用すると600円以上の収入になる。

日本では2月に、有力出版社21社が一般社団法人「日本電子書籍出版社協会」(仮称)を発足させて電子書籍市場への取り組みを本格化させるらしいが、アマゾンが著者との直接交渉に乗り出してデジタル版の出版権を獲得したら、出版社は例え同じ著作物の紙の出版権を持っていても手を出すことはできない。それどころか、「キンドル」の新プログラムは再販価格維持制度をも揺るがす破壊力を秘めている。

◆情報ソース
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Amazon Press Release

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