A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 インターネット

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

いよいよインタラクティブTV誕生か

視聴者がテレビを観ながら、友人とチャットやメールのやり取りをしたり、最新のニュースや株価情報をチェックできる―そんなインタラクティブTV技術をIntelとYahooが発表した。

widget channel

Yahooはテレビ画面の下部にメニューを表示し上記のサービスを提供するためのwidgetを開発し、Intelがテレビやセットトップボックスなどの機器に同サービスを搭載するためのチップを開発した。両社はこのサービスをWidget Channelと呼んでいる。Widget Channelのメニューはクリックすると拡大表示され、通常のインターネット・ブラウザのようにYou Tubeを見たり、ネット・オークションに参加したりもできる。

すでに、米国最大のケーブルテレビ事業者Comcastが来年、セットトップボックスにWidget Channelを搭載して試験放送を行うと発表しているほか、ディズニー傘下のテレビ局ABC、ソニー、東芝、サムスン電子、モトローラがサポートを行っている。

Intelのシニア・ヴァイス・プレジデントのEric Kim氏は、消費者は来年にはこの技術を手にできるだろうと述べている。

◆情報ソース
Intel to build Yahoo widgets into new TV chips (Reuters)
Yahoo + Intel ITV Efforts = YaHell? (Marketing VOX)
Intel, Yahoo Target Web Services on TV (Wall Street Journal)




検索語に商標権は適用されないのか

今年6月、ナイキは、自社の登録商標であるDri-Fitを検索キーワードとして使用するオンライン広告をグーグルから購入したEaster Mountain Sports(EMS)を提訴した。EMSはニュー・ハンプシャー州にあるアウトドア・スポーツ用品販売店で、ナイキの製品は取り扱っていない。にもかかわらず、ユーザーが “Dri-Fit”をキーワードとしてグーグルで検索を行うとEMSの広告が表示される。
dri-fit search

この広告をクリックすると表示されるEMSのウエブサイトでは、Dri-Fitとは似て非なる機能素材を使った商品が紹介されている。(日本でDri-Fitで検索を行っても同じ結果は得られない。)

登録商標を検索キーワードとして競合社に販売するグーグルの行為は、法的には禁じられていないが、今回のケースのように商標の所有者が異議を申し立てる事例が相次いでいる。一年ほど前、アメリカン航空は、”American Airlines”、”AAdvantage”(アメリカン航空の顧客特典サービス)などの商標を、グーグルが検索語として競合社に販売したとして、広告表示の中止を求める訴えを起こした。この訴えは結局退けられ、先月、アメリカン航空とグーグルの間で損害賠償を行わないとの合意が成立したが、調停を行ったテキサス州フォートワース連邦地方裁判所は、商標を検索語として使用することについては何のルールも示さず、オンライン広告のために検索キーワードを販売するグーグルの行為は認められる形となった。

Advertising Ageの取材に対してグーグルの広報は、「商標を競合他社に検索キーワードとして販売することにより、ユーザーが検索結果から得る選択肢は増える。グーグルは、商標の所有者、広告主、ユーザー、それぞれの利益のバランスを取るよう努めている」と回答しているが、ブランド構築のために多くの投資を行ってきた企業にとっては納得できる答えではないだろう。ヤフーとマイクロソフトは、広告主が競合社の商標を検索語として購入することを、原則として許していない。

◆情報ソース
Behind Nike's Lawsuit Lies a Branding Story (Advertising Age)



不況の影響がオンライン業界にも

不況とは無関係と見られていたインターネット業界だが、先週発表されたメインプレーヤーたちの業績は、予想を下回るものだった。

Googleのネット・インカムは12億51千万ドル、希薄化後1株当たり利益は3.92ドルで、アナリストが予想した成長率は達成できなかったと、Advertising Ageは伝えている。それでも、昨年第2四半期の業績(1株当たり利益2.93ドル)を35%、上回っている。同社の経営陣は、業績が予想を下回った原因は、経済環境やオンライン広告市場の減速にあるのではなく、財政上の施策とダブルクリック買収の影響にあると説明しているが、ValueClickなど他の企業の業績を見ると、オンライン広告市場も不況の影響を免れていないことはまちがいなさそうだ。

ValueClickは今年第1四半期に17%の成長を達成したが、第2四半期の業績予想は1桁台に下方修正した。ディスプレイ広告が落ち込みを見せているからだ。広告会社Universal McCannは今月はじめ、ディスプレイ広告の成長率を昨年12月に発表した16%から12%に下方修正した。

Microsoftも先週22日に発表された決算報告の利益の数値が予想外に低く、株価を6%落とした。同社は、広告事業を含むオンライン・サービス部門の業績を売上ベースで24%伸ばしたものの、同部門は6月末までの第4四半期で4億8800万ドルの損失を出した。ネット通販・オークションのEBayも消費者の買い控えのあおりを受けて、株価がおよそ14%下落した。同社はGoogleの最大の広告主だ。

インターネット広告は急成長しているとはいえ、広告予算に占めるシェアは大きくない上、他のメディアよりも広告効果が測定しやすいため、不況の影響を受けにくいと考えられていたが、無傷というわけにはいかないようだ。

◆情報ソース
Online Ad Growth May Be Losing Momentum (Advertising Age)
Will Economic Downturn Sink Digital? (Adweek)



ISPの行動ターゲティング広告導入が暗礁に

6月13日のエントリー「行動ターゲティングをめぐって公聴会」の続報。

公聴会がどうなったかはわからないが、議員や権利擁護団体の批判を受け、280万の加入世帯を擁する全米第4位のケーブル会社Charter Communicationsは、行動ターゲティング技術の大手ベンダーNebuAdとの間で合意していた広告試験運用を見合すと発表した。これに続き、インターネット・サービス・プロバイダーのCenturyTelとEmbarqも、NebuAdとの契約を見合わせるとの意思を明確にした。両社ともNebuAdのプラットフォームを使った試験運用を行ったばかりだった。

NebuAdは、同社の技術で収集される情報は氏名や住所を特定できるものでなく、利用者は行動ターゲティング型広告の配信を拒否することもできるとしているが、プライバシー擁護団体は、インターネット・サービス・プロバイダーは個々のサイト訪問履歴や検索サイトに打ち込んだ言葉まで収集できるため、個人を特定することができる場合もあり得ると主張している。

◆情報ソース
Internet Provider Halts Plan to Track, Sell Users' Surfing Data (Washington Post)
NebuAd Rebuffed By Additional ISPs Due To Privacy Issues (MediaPost)



米上院で行動ターゲティングをめぐって公聴会

来週水曜、上院州際通商小委員会で、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)による行動ターゲティングに関する公聴会が行われる。

ISPの多くは、ユーザーのネット上の行動を追跡し、それに応じて広告を配信する技術を試験・導入し始めている。その技術を支えているのは、Phorm、FrontPorch、Project Rialtoといったテクノロジーベンダーだ。これらの企業は、ISPのネットワークに組み込まれるハードウエアを通じて、ISPのユーザーの行動パターンを収集・蓄積し、広告ターゲティングに利用する。

集まったデータを広告代理店や広告主のサポートのために利用する企業もある。大手ベンダーのNebuAdは、ValueClickのような他のネットワークから安価なディプレイ広告枠を購入し、行動分析型広告の需要がある広告代理店に再販することによって、広告ネットワークの役割を果たしている。そこからもたらされる収益は、パートナーのISPと分配する。先月、ケーブル事業者のチャーター・コミュニケーションズ(Charter Communications)は、280万人いる同社のブロードバンド契約者の行動ターゲティングを行うためにNebuAdと提携した。また、Phormは本国の英国で、ISPとともにユーザーの行動記録を収集した行為がRIPA(捜査権限規制法)に違反するとして告発を受けた。

ネット上のユーザーの行動に関する情報収集といえば、昨年11月にフェイスブック(Facebook)が導入したプログラム「ビーコン(Beacon)」が思い出される。このプログラムでは、フェイスブック内にとどまらずOverstock.comやFandango.comといったパートナー・サイトでの行動までが追跡され、広告に利用されて、多くのユーザーの猛反発を受け、草の根運動家のネットワークMoveOn.orgによるプライバシー保護キャンペーンの引き金となった。

こうした動きを受けてFTC(米連邦取引委員会)は12月、行動分析型広告を導入する事業者向けのガイドラインを発表した。そこでは、
*サイトの訪問者に、彼らの情報が収集されていることを知らせること
*訪問者が納得できる方法で情報を安全に管理し、それがどのように利用されるかを明らかにすること
*オプトアウトの方法を明示すること
などが骨子となっている。

しかし、このガイドラインがISPに適用できるものかは明らかでない。クッキーを利用して行動を追跡するウエブサイト向けの内容になっているからだ。上述のように、ISPはクッキーではなくネットワーク機器を通じてトラッキングを行っている。来週の公聴会では、プライバシー保護団体Center for Democracy and Technologyとマイクロソフトが証言を求められる予定とのことだ。

◆情報ソース
Behavioral Advertising Faces Senate Next Week (Marketing Vox)
Interpretation of 'Ripa' May Retard Behavioral Ad Delivery in UK (Marketing Vox)
ISPs Collect User Data for Behavioral Ad Targeting (ClickZ)





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