A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 雑誌

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

Advertising Ageが選ぶ優れた雑誌10誌

前回のAdvertising Ageの雑誌特集の続き。

Advertising Ageは “A-List”と題し、編集内容、広告売上、販売、マーケティング、業界内での評判など、様々な要素をもとに、もっともすぐれたパフォーマンスを見せた雑誌10誌を年に1回、選出する。今回、その第1位、マガジン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのは『The Economist』だった。

週刊ニュース誌は、インターネットの影響で、かつてない危機に直面している。『U.S. News & World Report』は既報のとおり、来年から隔週刊にすることを発表したし、大所の『TIME』と『Newsweek』は、経費節減のために発行部数を削減した。その中で、かつて50万部に満たなかった『The Economist』北米版の発行部数は75万部に届こうとしている。同誌の2003年のニューススタンド・セールス(店頭販売部数)は、45,000そこそこだったが、今年は10万部を突破した。予約購読部数も、今年上半期の平均は昨年を7.4%上回る680,366部だった(出所はABC)。

部数の伸びは広告集稿にも好影響を及ぼしている。今年1〜8月の広告集稿ページを見ると、『TIME』は前年比25.2%減の954ページ、『Newsweek』は24.8%減の829ページだったが、『The Economist』は7.2%増の1,497ページを記録した(出所はMedia Industry Newsletter)。

他のニュース誌が記者のネームバリューを重視してバイライン(署名)を強調した記事づくりをしているのに比べ、同誌が署名記事を載せず、海外に特派員を送り、地道な取材に基づいたコンテンツの内容で勝負していることが好調な売れ行きの一因だと、『Advertising Age』は指摘している。また、『The Economist』が一貫して保ち続けてきたグローバルな視点が、いまの時代には必要とされているのだとも、『Advertising Age』は記している。中東など遠い国の出来事を、米国民がかつてないほど身近に感じられるようなニュースが頻発している。こうした流れをとらえて、『The Economist』は500万ドルを投じて “Get a world view”というスローガンを掲げたキャンペーンをスタートさせた。

なお、”A-List”にリストされた他の雑誌は、『Women’s Health』(Rodale)、『ELLE』(Hachette Filipacchi)、『Every Day with Rachael Ray』(Reader’s Digest)、『National Geographic』(National Geographic Society)、『Fast Company』(Mansueto Ventures)、『New York』(New York Media)、『People Stylewatch』(Time Inc.)、『House Beautiful』(Hearst Magazines)、『Condé Nast Traveller』(Condé NastPublications)の9誌。エディター・オブ・ザ・イヤーには『National Geographic』の編集長Chris Johnsが、エグゼクティヴ・オブ・ザ・イヤーには『ELLE』の発行人Carol A. Smithが選ばれた。

◆情報ソース
Some Bright Spots in a Gloomy Year for Magazines (Advertising Age)
Magazines: The A-List (Advertising Age)
Magazine of the Year: The Economist (Advertising Age)
Brainy Brand Names Where They’re Least Expected (New York Times)



Advertising Ageが「Magazine 300」を発表

『アドバタイジング・エイジ』最新号では、恒例の雑誌大特集が組まれている。

その特集のひとつ、年に一度、米国の売り上げ(推計値)上位の300誌を発表する「Magazine 300」は、今年で第19回を迎えた。それによると、昨年の300誌の広告集稿ページは前年比1.3%減、販売収入は1.2%減だったが、雇用数は0.7%増加した。

PIB(Publishers Information Bureau)がモニターしている一般誌の、今年上半期の広告集稿ページは前年比0.8%減。同時期の雑誌の宣伝費は1.8%減(TNS Media Intelligence調べ)、雑誌の雇用数は0.8%増だった(労働統計局調べ)。

このように停滞気味の雑誌業界で、明るい兆しの見えるのがデジタル関連の数字。『アドバタイジング・エイジ』が300誌の出版元に、昨年の売り上げに占めるデジタル関連の売上の割合をたずねたところ、回答のあった48誌の数値は0.8%〜38%、中間値は9.75%だった。同じ48誌の2006年のデジタル関連売上シェアは5%だったから、1年間で倍近くに拡大した計算になる。48誌の中でシェアが最大だったのは、『PC World』(International Data Group)の38%で、前年の32%からさらに拡大したが、本誌(プリント版)の広告ページは6.8%減少した。一般誌でシェアが大きかったのが、タイム社(Time Inc.)が発行する『Money』『Fortune』『Fortune Small Business』で、いずれも24.5%だった。これら3誌のデジタル関連の売上はCNNMoney.comがもたらしたもので、2006年のシェア12.5%から大きく拡大した。タイム社全体の広告売り上げに占めるオンライン広告の割合は、7%とのこと。雑誌業界全体では、まだまだプリント版の広告売上に大きく依存している。

300誌の広告集稿ページ数および雇用数は、2000年以降、横這い状態となっている。昨年の300誌の総売上は、前年比4.7%の386億ドルとなっているが、この数値と実際の業績とではかなり差があると思われる。というのは、『アドバタイジング・エイジ』は、広告料金表に記載されているいわゆるカード・レートと、標準的な定期購読料金をもとに推計値を算出しているからだ。実際は大幅なディスカウントが提供され、売上はもっと低いものになっているはずだ。

個々の雑誌の総売り上げによるランキングを見ると、『People』が8年連続の1位。このほかに、『Sports Illustrated』が3位、『TIME』が4位と、トップ5中3誌がタイム社の雑誌だった。タイム社の雑誌は、全300誌中22誌がランク入りしており、広告集稿ページのシェアは9%となっている。一方、コンデナスト社(Condé Nast)の親会社、アドバンス・パブリケーションズ(Advance Publications)の雑誌は26誌がランク入りし、広告集稿ページのシェアは12.2%だった



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テレビが舞台 ― ELLEとmarie claireの熾烈な戦い

米国でファッション誌のライバル『エル(ELLE)』と『マリ・クレール(marie claire)』がテレビ番組を巡って熾烈な競争を繰り広げている。

米ケーブル・ネットワーク、ブラヴォー(Bravo)に『プロジェクト・ランウェイ(Project Runway)』という人気番組がある。無名のファッション・デザイナーを発掘するリアリティ番組で、オーディションを通過したデザイナーが番組内で課題に沿った衣服の制作を行い、その優劣を競う。『エル』は2004年から、ファッション・ディレクターが審査員を務め、優勝デザイナーの作品を『エル』本誌やウエブサイトで大きく取り上げるなど、同番組のオフィシャル・パートナーとして参加。以来、同誌の販売部数は増え続け、広告集稿ページ数もファッション誌のカテゴリーで6位から『ヴォーグ(Vogue)』に次いで2位にまで伸びた。今年は景気後退の影響でどの雑誌も前年割れしているが、9月号の広告ページ数は『ヴォーグ』が前年比マイナス7.1%だったのに比べ、『エル』は6.6%増だった。同誌の発行人、キャロル・スミス(Carol Smith)の言葉を借りれば「500万人のオーディエンスを持つテレビ番組は強力なブランディング・ツール」なのだ。

一方『マリ・クレール』は先週、コムキャスト・エンタテインメント・グループ(Comcast Entertainment Group)傘下のケーブル・ネットワーク、スタイル・ネットワーク(Style Network)と組んで、新番組『ランニング・イン・ヒールズ(Running in Heels)』を来年3月からスタートさせると発表した。これは、同誌の編集者、ライターからインターンにいたるまで、雑誌作りに携わっているスタッフの日常を追いかけるドキュメント番組だという。

それだけではない。『プロジェクト・ランウェイ』に『エル』を代表して審査員として出演していたのは、ニナ・ガルシア(Nina Garcia)という同誌の名物ファッション・ディレクターなのだが、『マリ・クレール』が彼女を引き抜いたのだ。のみならず、『プロジェクト・ランウェイ』のプロデューサー、ハーヴェイ・ウエインスタイン(Harvey Weinstein)が同番組の放映権をブラヴォーのライバル局であるライフタイム(Lifetime)に1億5千万ドルで売り、来年1月からライフタイムで放送を開始することになった。同時に、同番組のオフィシャル・パートナーも『エル』から『マリ・クレール』にスイッチし、ニナ・ガルシアは引き続き審査員を務めるのだという。(ブラヴォーの親会社NBC Universalはウエインスタインを相手に訴訟を起こしている。)

『エル』も負けてはいない。同誌はCWネットワークと組んで『スタイリスタ(Stylista)』という新番組を10月22日からスタートさせる。その中心人物はニナ・ガルシアの後を継いでファッション・ディレクターとなったアンヌ・スロウィー(Anne Slowey)だ。この新番組は映画『プラダを着た悪魔』のリアリティ番組版とも言える内容で、11人のファッション・エディター志望の女性たちが毎回課題を与えられ、その仕事ぶりをアンヌ・スロウィーが審査して最終回となるシリーズ第8回で優勝者を決めるというもの。優勝者には10万ドルの賞金と、『エル』の編集アシスタントとしてのポジションが与えられる。

『エル』と『マリ・クレール』の競争は、ニナ・ガルシアとアンヌ・スロウィーという二人の名物編集者の戦いの様相を呈し始めている。ニナ・ガルシアは『ニュー・ヨーク・マガジン(New York Magazine)』のインタビューでアンヌ・スロウィーとの違いを尋ねられて、「私は(彼女と違って)有名になりたいと思ったことなどない」と皮肉たっぷりに答えている。ちなみに、米国では『エル』はアシェット・フィリパッキ(Hachette Filipacchi)、『マリ・クレール』はハースト・マガジンズ(Hearst Magazines)が出版しているが、日本では両誌ともひとつの出版社(アシェット婦人画報社)から出版されている。

◆情報ソース
'Running in Heels' Joins Stampede of Fashion Reality-Shows (Advertising Age)
Mags Go From Spreads to Screens (Advertising Age)
America’s Next Top Fashion Editor (New York Magazine)
The CW Announces Premiere Date for 'Stylista' (BuddyTV)




米雑誌協会の新広告キャンペーン

日本では有力雑誌の休刊が相次いでいるが、米国でも、今年1‐6月期の雑誌の広告集稿ページ数は前年比マイナス7.4%と不調で、販売も多くの雑誌が落ち込みを見せている。

米ABC協会(Audit Bureau of Circulations)によると、今年1‐6月期の実売が前年を大きく割り込んだのは、Bauer Publishingが発行する『Life & Style』(シングル・コピー・セールス−30.2%/定期購読を含む総実売数−30%)と『In Touch』(シングル・コピー・セールス−27.7%/総実売数−28.7%)の2つの女性週刊誌。(※シングル・コピー・セールスとは、ニューススタンドや書店での一部売りの実売数)

『Newsweek』もシングル・コピー・セールスが−17.3%、定期購読が−12.6%、総実売数が−12.8%。『U.S. News & World Report』も総実売数を10%落とした。一方、同じニュース誌の『TIME』は、シングル・コピー・セールスは−7%だったが、定期購読による販売を伸ばしたため総実売数は−0.3%にとどまった。

『Vogue』はシングル・コピー・セールスが−14.8%、総実売数が−6%だった。『Men’s Vogue』はシングル・コピー・セールスが40%近く下落したものの、定期購読が43.6%伸びたことが奏功して総実売数はおよそ20%増となった。もっとも米国の場合、主に広告料金の基礎となるレートベース(最低保証部数)を確保するために定期購読を大幅なディスカウント料金で提供する上、配送等のコストもかかるので、定期購読による販売が伸びてもさほど収益の改善には寄与しない。

このように雑誌出版業界に逆風が吹く中、米雑誌協会(MPA: Magazine Publishers of America)は、業績不振に歯止めをかけようと様々な手を打っている。この新しい広告キャンペーンもそのひとつ。

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“Under the Influence of Magazines”(雑誌に影響されて)というコピーで、雑誌の影響力の強さを訴えるこの広告は、Toy New Yorkというエージェンシーが制作した。米国の広告業界で最高の賞であるケリー賞を受賞したアディダス、ハーゲンダッツ、ミニクーパーの製品に消費者が囲まれているビジュアルで、MPAのリリースによると「ユーモラスな」効果を狙っている。

MPAはこの広告とともに、BIGResearch、Dynamic Logic、Roper Reports、Marketing Evolutionなどの企業によるデータを提示し、雑誌広告が消費者の購買意向や検索などのネット上の行動に他媒体(主にテレビ)よりもはるかに強い影響力を発揮することを訴えていく。

◆情報ソース
Consumer Magazines Take Huge Hit at Newsstand (FOLIO)
MPA reliease



エスクァイア75周年記念号は表紙が電子ディスプレイに

Esquire anniv issue

米『エスクァイア(Esquire)』誌の創刊75周年記念号となる10月号は、表紙のタイトルが電光掲示板のように光る。百聞は一見に如かず。すでにYouTubeには、その様子を映したいくつもの動画がアップロードされている。



この記念すべき表紙を実現したのはE Inkという企業の技術で、Amazonの電子書籍リーダーKindleにも使われている。E Inkが最初に、『エスクァイア』にデモンストレーションを行ったのは7年程前のことだったが、当時は店頭ディスプレイ用の技術で雑誌に組み込むことは不可能だった。しかし2年前、『エスクァイア』を発行するハースト(Hearst)社が表紙に組み込めるほどの小型で薄い電池の開発資金を負担するという条件付きで、光る表紙は実現に向けて動き出した。

下の写真はディスプレイと、表紙に挟み込まれている電子基板。丸いのはリチウム電子。

Esquire e-ink cover inside

これらは中国で製造・アセンブルされた。それがどのような過程を経て読者の手に渡ったかが、『エスクァイア』のウエブサイトで説明されている。それによると、電池の寿命は90日間しかないので、消耗を遅らせるために輸送はすべて冷凍状態で行われたらしい。完成品となったディスプレイと電子基板はまず、テキサス州ダラスに到着し、それからメキシコに運ばれて手作業で表紙の紙に挟み込まれた。できあがった表紙は再び冷凍車でケンタッキー州にある印刷所に運び込まれ、この表紙のために特別に作られた装置で本誌部分と製本され、全米の書店に向けて送り出された。

当然のことながら、この表紙の開発・製作には膨大な費用がかかっている。ハースト社は金額を明らかにしていないが、その一部をスポンサーとなったフォードが負担した。75周年号の表紙を開くと、同じ技術を使った同社の新SUV、Flexの広告が現れる。



この電子ディスプレイ表紙の効果もあって、『エスクァイア』75周年号は、10月号としては同誌創刊以来の広告を集めた。ラルフ ローレン、ドルチェ&ガッバーナ、グッチ、エルメネジルド ゼニア、H&M、ヴェルサーチ、サルヴァトーレ フェラガモなど、Advertising Ageの表現を借りると「山ほどの」ファッション・ブランドに加え、マツダ、サーブ、日産などフォード以外の自動車メーカーも出稿。表4にはメルセデス・ベンツの広告が掲載されている。

製作費が原因なのだろうが、表紙が電子ディスプレイになっている特別仕様の『エスクァイア』は、書店・ニューススタンドで販売される10万部に限られている(同誌の総発行部数は約72万部)。ハースト社は、このE Ink社の技術を2009年末まで独占的に使用する契約を結んでいるようだ。同誌のDavid Granger編集長は、来年前半にも次なるE Inkプロジェクトを実現したい意向とのこと。

◆情報ソース
Esquire Unveils E-Ink Digital Cover (Advertising Age)
News Flash From the Cover of Esquire: Paper Magazines Can Be High Tech, Too (New York Times)
How the E-Ink Cover Was Made (Esquire.com)



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