米連邦通信委員会(Federal Communications Commission: FCC)で、消費者保護の観点から映画やドラマなどに商品を登場させる広告手法「プロダクト・プレースメント」に関する規則を見直す動きがある。
TiVoやDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)が普及し、テレビCMをスキップして番組を見る消費者が増える中で、番組の中に広告を「紛れ込ませる」手法が注目を集めてきた。Nielsenによると、11のテレビ・ネットワークで放送されたプライムタイム番組では、今年第1四半期にプロダクト・プレースメントが6%増加し、テレビ放送全体では39%増えたという。また、市場調査会社PQ Mediaによると、いわゆる「ブランデッド・エンターテインメント」に投下された広告費用は、2007年に前年比14.7%増の223億ドルに達し、今年はさらに13.9%の増加が見込まれるとのこと。
この増加傾向にFCCは懸念を表明し、視聴者がプロダクト・プレースメントであることや広告主名を認識できるよう、規制の強化を検討しているとのこと。また、現在のFCCのルールではケーブル放送は対象になっていないため、規制の対象を広げることも検討されている。
米脚本家組合(Writers Guild of America: WGA)もFCCに対し、放送事業者は番組内に組み込まれた製品を明示し自分が見ているものが広告であることを視聴者がわかるようにすべきだと訴え、テレビスクリーンの下部に製品名と広告主名をスーパーで流す方法を提案した。
アドバタイジング・エイジは、こうした規制は番組をぶちこわしにするもので、消費者の保護にはならないと反対する広告主や広告会社の意見も紹介している。
◆情報ソース
Game-Changer: FCC Considers Product Placement Disclosures (MediaPost)
FCC to Weigh Requiring Disclosures for Product Placement (Advertising Age)
電通のクリエイティブ・ディレクターで近著
「明日の広告」がベストセラーになっている佐藤尚之さんが、ご自身のブログの
4月1日と
2日のエントリーで書かれているように、テレビ番組の視聴率という物差しはもはや実情にそぐわないものになっているのかもしれない。米国でも、視聴形態の違いや視聴者の広告に対する反応などの情報を求める企業が増えてきていると、『アドバタイジング・エイジ』が報じている。
ABC放送の推計によると、同局のソープオペラ(昼ドラマ)を見る人の数は、およそ5700万人に及ぶという。しかし、たとえば人気番組 “General Hospital” は、午後3時の放送後、ケーブル局で夜の10時から再放送されるが、この番組を本来の放送時間にお茶の間で見る人と、勤め人で午後10時にケーブル局で見る人とでは全く異なるはずだ(DVRに録画して見る人もいるだろう)。視聴者は、視聴形態によっていくつもの小グループに分かれているのだ。
この小グループが、広告主にとって欲求不満の種となっている。5700万という数はマーケターの食欲を刺激するには十分だが、広告主はもっと掘り下げた、視聴形態による視聴者の違いがわかるようなデータを欲している。こうした要請を受けて、ニールセンは今年第2四半期から、セット・トップ・ボックス(STB)から得られる視聴状況データをクライアントに提供する。メディア購入代理店のスターコム(Starcom)は、視聴率調査の対象になっていないデジタル・ケーブル・チャネルとSTBを使った視聴者調査を行うための交渉を開始すると発表した。調査会社TNSメディア・リサーチもDirecTVと契約する10万世帯を対象に視聴状況を調査する新サービスを発表した。TiVoでもSTBを使った調査が可能になる。
ニールセンのチーフ・リサーチ・オフィサーのPaul Donato氏は携帯端末やコンピュータなどのインタラクティブ・メディアの使用者が増えるにつれ、広告主はCMの露出だけでなく、番組や宣伝に対する視聴者の反応を知りたがるようになるだろうと述べている。ただじっと番組を見ている視聴者よりも、たとえば番組"American Idol"でお気に入りの歌手に一票を投じる視聴者の方が、(広告主にとって)価値ある消費者と考えられるというのだ。このような視聴者の質や番組へのかかわり方については、標準的な調査方法が開発されるのを待たずに、独自の調査を開始している広告会社もある。メディア購入代理店のメディアベスト(MediaVest)は視聴者の追跡調査を行い、広告の想起に加えてそれがウエブでの検索や資料請求などの行動のきっかけになったか、友人と話題にしたか、さらには購入に結び付いたかなどを調べている。同社ではまた、どのメディアがもっとも影響力を持ち、消費者の行動を変化させたかも明らかにしようとしている。
◆情報ソース
It's Not Just Size of the Audience That Matters (Advertising Age)
ウォルト・ディズニー・ネットワーク(The Walt Disney network)は25日、ビデオ・オン・デマンド放送事業者を対象に、同社の人気番組を提供すると発表した。ただし、番組提供を受けるには条件がある。対象番組の放送時間中は、CMの飛ばし視聴を避けるために早送り機能を停止することだ。
同社は昨年、全米第3位のケーブルテレビ事業者「コックス・コミュニケーション」(Cox Communication)と、同じく早送り機能を停止することを条件にスポーツ専門局ESPNの人気番組を提供する契約を交わし、秋からカリフォルニア州オレンジ郡の加入世帯25万件を対象に実験放送を行ってきた。
今回の発表によるとディズニーは、傘下のABCのプライム・タイム・シリーズとESPNのカレッジ・フットボール中継を提供し、実験放送を5月から開始する。さらにABCは、この実験放送に参加する事業者に、対象番組30分あたり1本の割合で30秒CMを挿入する権利も付与するという。
ABCによると、上述のコックス・コミュニケーションとの実験放送の結果、早送り機能を制限された環境で番組を視聴した人の93%が、無料でABCの番組を見ることができるのであればCMを受け入れると答え、さらに20%の人が、DVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)ではなくオン・デマンド放送でABCの番組を視聴したという。今回のビデオ・オン・デマンド事業者への呼びかけは、この実験放送の結果を受けて、ディズニーABCグループが「視聴者は無料で好きな時間に人気番組を見られるのであれば、CM放送を受け入れる」と判断してのことだろう。
それでは、どの程度CMを入れるのか。ABCによると、通常放送よりは"ずっと減らして"1時間あたり30秒CMを5〜10本程度にする予定だが、実験放送を通じてそのバランスも模索していくという。
マグナ・グローバル社(Magna Global)の推計によると、2012年までに米国のDVRによる視聴世帯は全テレビ視聴世帯の36.5%にあたる4290万に、一方ビデオ・オン・デマンドの視聴世帯は全テレビ視聴世帯の53.5%、6280万に達するという。はたして、あくまでもCMを避けてDVRや有料放送を選ぶ人が主流になるのか、CM付きの無料オン・デマンド放送の視聴者が増えていくのか。あるいは、番組の見方によって視聴者のセグメント化が進んでいくのかもしれない。
◆情報ソース
Watch 'Grey's Anatomy' When You Want, Just Don't Skip Ads (Advertising Age)
ABC Gives TV Affils Spots For VOD (Media Daily News)
Nielsenは、コンピュータ上で視聴されるテレビ番組も対象に視聴率調査を行うと発表した。今年末までに新しい調査システムを導入したいとのこと。将来的には、携帯電話やiPodなど、あらゆる端末での視聴状況を測定できるシステムを目指しているらしい。
しかしeMarketerによると、米国のインターネットによる動画視聴人口は2006年の1億1400万人から、2011年には1億8300万人に増加するという。主に家庭で観るテレビと違って、視聴する場所や人々の行動パターンも端末の種類も多様化している。それを調査システムに反映するのは容易ではないだろう。
プライバシーの問題もある。Nielsenが視聴率調査のモニターになっている世帯に、PCに測定システムを組み込むことの可否を尋ねたところ、同意したのは98世帯中44世帯だったという。個人で使用する傾向が高く、個人データの入っているPCを測定の対象にされたくないと思う人が多いのは当然だろう。Nielsen/NetRatingsはすでに、ストリーミングコンテンツの視聴状況を計測するサービスを開始しているが、これはウエブページにタグを埋め込んで計測するものだ。■
◆情報ソース・参考
ニールセンがPCでも視聴率調査(Advertising Age)
ストリーミングコンテンツの視聴調査(CNET Japan)