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A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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雑誌『アトランティック』のデジタルとプリントの広告売上が逆転

このブログを始めたばかりの頃、150年の歴史を持つ米国の代表的なオピニオン誌『アトランティック』(The Atlantic)が新しいウエブ・ブランドをスタートさせるなど本格的にウエブ運営に取り組み始めたと、驚きをもって伝えた。あれから3年半、ついに同誌のデジタル広告の売上がプリントを追い抜いたと『ニューヨーク・タイムズ』(The New York Times)が報じている。とは言っても、10月単月の広告売上に占めるデジタルの割合が51%に達しただけなのだが、それにしてもウエブ広告でここまで成功している雑誌は極めて稀だ。

米国の雑誌広告は、今年初めこそ回復の兆候を見せたものの、後半に入って急失速した。メディア・インダストリー・ニュースレター(Media Industry Newsletter)の統計によると、10~12月の月刊誌の広告集稿ページ数は前年同期比で6.8%減、通年でも前年比2.6%減となる見通しだ。

しかし、『アトランティック』の場合は、プリント広告の売上が落込んだ結果としてデジタルの割合が高まったわけではない。それどころか同誌10月号は、実業家のデビッド・ブラッドレイ氏(David Bradley)によって買収された1999年以降で最高の広告売上を記録した。今年、同誌の年間広告売上は1,860万ドルに達する見通しだという。

だが『アトランティック』は、順調に業績を伸ばしてきたわけではない。ブラッドレイ氏による買収の年、同誌の発行元アトランティック・メディア・カンパニー(Atlantic Media Company)は450万ドルの赤字を計上、翌年以降も業績は悪化し続け2005年に赤字額は700万ドルに達した。その間、ブラッドレイ氏は売上を伸ばすために、広告営業とともにセールスに歩いたり、『アトランティック』の紙を高級紙に変えたり、定期購読料を値上げしたり、あるいは値下げしたり、涙ぐましい努力をしたがすべてが徒労に終わった。

転換点となったのは2006年、『ニューヨーク・タイムズ』からジェームス・ベネット氏(James Bennet)を編集長として迎え、翌年、『ザ・ウイーク』誌(The Week)の発行人だったジャスティン・スミス氏(Justin B. Smith)が社長に就任してからだ。彼らは、米国でもっとも歴史のある『アトランティック』を印刷媒体として考えるのをやめ、「ベンチャー・キャピタルから投資を受けたシリコン・ヴァレーのスタートアップ企業の心境になって、解体的出直しを図った」と、スミス氏は昨年末の『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューに答えて語っている。何をしたのか、調べてわかったことをざっくりとまとめてみた。

◆プリントとデジタルの組織的一体化
デジタルとプリントに分かれていた編集部内の垣根をなくした。また、広告営業もデジタルとプリント、それぞれをどれだけ売ろうと自由にした。

◆ウエブのトラフィックを増やすことに専念
デジタル広告を収入の柱とすることを明確にし、そのためにペイウォールをなくし、著名ブロガーをひきいれる等、トラフィックを増やすことに力を注いだ。

◆『アトランティック』ブランドを最大限に活用したセミナー
2006年から、非営利団体のアスペン研究所(Aspen Institute)との共同開催で始められたセミナーは、いまや同社の売上の14%を生みだす規模になっている。昨年、米国内外の芸術、科学、哲学、宗教、実業、経済、政治など様々な分野のリーダーを招いて4日間にわたり開催された “Ideas Festival”は、2,700ドルという高額な参加費にもかかわらず1,200名もの参加者を集めた。

◆情報ソース
At 154, a Digital Milestone (The New York Times)
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デジタル化に向けて雑誌社の暗中模索は続く

今月初め、業界誌『アドバタイジング・エイジ』(Advertising Age)のウエブサイトに、雑誌(紙版)は広告媒体としての魅力を失いつつあるとの記事が掲載された。調査会社GfK MRIが毎年春と秋に実施している雑誌購読状況調査の結果に基づいた記事で、昨年・今年ともに調査対象になった有力一般誌188誌の読者プロフィールを比較すると、以下のような変化が見られるのだという。

●GfK MRIの調査対象年齢層の人口は全米では増加しているのに、188誌のうち65%は読者数が減少した。
●188誌のうち65%は、読者の中間年齢が全米平均よりも急速に高年齢化している。
●70%は世帯所得の下落幅が全米平均よりも大きい。

雑誌読者が減少しているとか高年齢化しているというデータには驚かないが、ちょっと気になったのは、全米雑誌協会(Magazine Publishers of America: MPA)が、こうした変化の原因を、紙からiPadのようなデジタル・プラットホームへの移行が進んでいるからと説明している点だ。MPAのニナ・リンク(Nina Link)会長によると、「これまでGfK MRIの調査対象にはデジタル版読者が含まれていなかった。デジタル版読者も対象となる秋の調査では、異なった結果になるはず」とのこと。

本当だろうか。米国でもデジタル版を販売している雑誌はまだ多くないし、タブレット端末などのデジタル・プラットホームで雑誌を読んでいる読者も少数派だと思われる。したがって、次回のGfK MRIの調査結果に変化が見られたとしてもわずかだろうし、その恩恵にあずかることができるのも一部の雑誌だけだろう。少なくとも、広告主を満足させる規模には達していない。上のMPA会長の言葉は、かなり苦しい弁明―というよりも、悲痛な願いに聞こえる。出版社は、プラットホームが紙であろうがデジタルであろうが、雑誌を広告媒体として少しでもアピールして広告主離れに歯止めをかけたいのだ。

そのためか、雑誌のデジタル化が始まった頃、出版社の多くは紙の雑誌の予約購読者への特典としてデジタルの記事を無料で提供していたが、最近は主従逆転現象が起こりつつあるようだ。

たとえば『ニューヨーカー(New Yorker)』は先月、オンライン版およびiPad版の予約購読を年間60ドルで発売したが、これにわずか1ドルを上乗せするだけで紙版もついてくる。『スポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)』のウエブサイト上の予約購読のページを見ると、「All Access」と銘打って紙版とデジタル版のパッケージのみを、1年間56号分48ドルでオファーしている。(デジタル版はiPad、サムスンのGalaxyなどのタブレット型端末と各社のスマートフォンに対応している。)紙版だけの値段設定はなされていない。あるいは、コンデナスト社(Condé Nast)は、女性誌『グラマー(Glamour)』のiPad版の年間購読も、iPad版と紙版のセットも同じ20ドルで販売している。以前は紙版のみを年間10ドルで購読することができた。(それにしてもどの雑誌も安い。)

デジタル化戦略も試行錯誤が続いているようだ。例えばハースト社は来月から、『エスクワイア』(Esquire)、『ポピュラー・メカニクス』(Popular Mechanics)、『オプラ・マガジン』(O, The Oprah Magazine)の3誌のiPad版の予約購読をiTunesで販売開始すると発表したが、その一方で『マリ・クレール』(marie claire)については、ウエブサイトMarieClaire.comをiPad最適化し、自由にダウンロードできるようにするという、反アップル的な施策に打って出た。このブログでも何度か書いているようにアップル社の取引条件が出版社にとって不利なものであることに加えて、タブレット端末のアプリ利用者が思うように拡大していないからだ。フォレスター・リサーチ社(Forrester Research)の今年1-3月期の調査によると、タブレット端末ユーザーの45パーセントはアプリとインターネット・ブラウザに使う時間が半々、39パーセントはアプリよりもブラウザにより多くの時間を費やしていることがわかった。広告ビジネスだけを考えるなら、検索サイトなどを通じて多くのトラフィックを集めることができ、iPadアプリの販売では手に入らないユーザーデータも収集できるインターネットの方が格段に有利との判断なのだろう。

◆情報ソース
As Magazines' Print Demos Drift Wrong Way, Publishers Anticipate Tablet Metrics (Advertising Age)
Hearst, Apple Reach iPad Deal (Wall Street Journal)
Marie Claire's Anti-Apple Maneuver (Adweek)

ネット広告とデジタル・コンテンツ販売で出版社が協力態勢を模索

米国の競合する雑誌出版社が共同で、広告ネットワークの構築に乗り出したと『アトバタイジング・エイジ』(Advertising Age)が伝えている。

広告ネットワーク事業者がウエブサイトの広告の空き枠をまとめて買い上げ、それをネットワークの一部として販売するシステムに不満を持つ雑誌出版社は増えている。なぜなら、自社の抱えるオーディエンスへのアクセスを提供するにしては、広告ネットワーク事業者の買値はあまりにも安いからだ。ただ、雑誌社が単独で広告枠を販売するにはスケールが十分ではない。それが、出版社同士の広告ネットワーク構築の動機になっている。

これまでも、自社サイトへの広告配信を第三者である広告ネットワークの手に委ねることに異論を唱える出版社や、アシェット・フィリパッキ(Hachette Filipacchi)のJumpstart Automotive Mediaやマーサ・スチュアート・リビング・オムニメディア(Marth Stewart Living Omnimedia)のMartha’s Circのように、特定のテーマに関連したウエブサイトの広告ネットワークを独自に運営する出版社はあった。タイム(Time Inc.)も今年4月、自社の28のウエブサイトを横断する広告ネットワークTime Axcessのサービス開始を発表したばかりだ。『アドバタイジング・エイジ』のこの記事は具体的な出版社名は明らかにしていないが、複数の出版社が手を組むことにより大規模なネットワークが構築できれば、質の高いオーディエンスを対象にした行動ターゲティング広告も可能になるかもしれない。

出版社による連合は広告ネットワークの構築に留まらない。Amazon Kindleのような電子ブックリーダーの機能を備えたタブレット・デバイスをAppleが近々、市場投入すると噂されているが、その日に照準を合わせて、複数の出版社や新聞社がデジタル・コンテンツの販売拠点を構築するために話し合いを始めているという。音楽業界は楽曲販売のコントロールをiTunesに握られてしまった。また、Kindle向けのデジタル・コンテンツの販売はAmazonの支配下にあり、出版社や新聞社は価格を決めることも購読者に直接コンタクトすることもできない。

こうした状況を目の当たりにしてきた出版・新聞社が、二の轍を踏まぬよう活字媒体のiTunesを作ろうとしているらしい。『アドバタイジング・エイジ』は、ある出版社役員の「我々はカスタマー・リレーションを手中にする必要がある」とのコメントを紹介している。

◆情報ソース
Magazine Publishers Talk of Creating Online Ad Network (Advertising Age)
Time Inc. Launches Time Axcess (Reuters)
Magazine Industry Looks to Create ITunes for Print (Advertising Age)

メンズ・ヘルス誌のiPhoneアプリ

当たり前の話だが、出版社はコンテンツの宝庫だ。しかし、その価値ある資源をうまく再利用して収益を上げている出版社は少ない。米ロデール社(Rodale)の男性向け健康情報誌『メンズ・ヘルス』(Men’s Health)が発表したiPhone向け有料アプリは、その良いサンプルになりそうだ。

Men's Health iPhone apps

このアプリ“Men’s Health WORKOUTS”には、18のワークアウトと125以上のエクササイズが、写真とインストラクションつきで収められており、利用者は自分の進歩の度合を記録することもできる。価格は1.99ドル(およそ190円)。さらに、利用者は追加のワークアウトが収められた拡張版を99セントで購入することもできる。Appleの取り分は、オリジナル版、拡張版ともに30%。(※拡張版の購入が可能なのは、Appleが構築した新たな決済システム「アプリ内課金」(in-app purchase)機能を備えたiPhone OS 3.0搭載機のみ。「アプリ内課金」により、利用者は購入したアプリの内部から追加コンテンツを購入して、機能を拡張できるようになった。課金業務はAppleが行い、利用者のiTunesアカウントで決済される。)

このビジネス・モデルが期待を抱かせるのは、コンテンツの追加販売ができる点だ。“Men’s Health WORKOUTS”を購入した人は、ダイエット情報も購入するかもしれないし、あるいはグルーミングやファッションの情報にも関心を示すかもしれない。ロデール社では近々、女性向け健康情報誌『ウイメンズ・ヘルス』(Women’s Health)を元にしたアプリも発売する予定だという。

出版社によるiPhoneアプリというと、すでにコンデナスト社(Conde Nast)が女性誌『ラッキー』(Lucky)のコンテンツを元に、靴やバッグのショッピングガイドを提供している。例えば靴の場合は、『ラッキー』3月号のシューズガイドに掲載された70以上の商品を、タイプ、ブランド、色、サイズなどで検索することができ、さらにGPS機能やZIPコードでお目当ての商品を販売している最寄りのショップを割り出すこともできる。ただし、このアプリは無料で提供されており、広告主サービス(広告売上を拡大するための方策)の色彩が強い。

◆情報ソース
Has Men's Health Found a New Digital Distribution Channel? (Advertising Age)
Lucky Magazine’s iPhone Tool Is All About Shopping (The New York Times)

雑誌→オンライン→近くの店でショッピング

米プロフットボールNFLの王者を決めるスーパー・ボールのテレビ中継が引き金になって、Twitterのチャットや、あちこちのブログ、動画サイトなどはこのスポーツの一大イベントをこぞって取り上げた。オフライン・メディアがいかに人々のオンライン上の行動に影響を与えるかを示した、格好の例だ。すぐれたマーケターや媒体社ならこうした現象を見て、オフラインとオンラインをうまく統合・連動させられないかを考えるだろう。『アドバタイジング・エイジ』がその一例を紹介している。

設立からわずか2年半の新興企業、NearbyNowは、毎月8日から10日にかけて、女性の衣類やアクセサリーに関する検索件数がまちがいなく跳ね上がることに気が付いた。そして、その理由を探った結果、ひとつの雑誌にたどり着いた。コンデナスト社の『ラッキー(Lucky)』だ(雑誌を情報源とする若者はまだまだたくさんいるのだ)。

NearbyNowのビジネスは、買い手が探している商品を売っている近所の小売店を紹介するサービスだ。対象となる商品は、クッキーからプラダのバッグまで様々。同社は、利用者が入力した検索語に基づいて目当ての品と、それを売っている店を特定してくれるばかりでなく、コースセンター機能も備えており、店に電話をして在庫があるかどうかを確認し、その結果をメールで知らせてくれる。

同社の社長・CEOのスコット・ダンラップ(Scott Dunlap)は、調査の結果を携えて『ラッキー』誌を訪ねた。そして両者は、ユーザーを買い物の場所へ誘導してくれるiPhoneアプリケーションを共同で開発することになった。『ラッキー』の読者は、誌面で欲しいものを見つけると、このアプリケーションを使ってそれを売っているいちばん近くの店を探り当てることができる。また、コールセンターに頼めば、目当ての品があるかを確認し、取り置きのリクエストまでしてくれる。

当然のことながら、『ラッキー』がこのアプリケーションに登録するのは、広告主の商品だ。一方NearbyNowは、案内をした小売店から収入を得ることができる。

◆情報ソース
A Magazine's Effect on Search Traffic Inspires an iPhone App (Advertising Age)




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