A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 200802

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

ニールセンがPCで見る番組も視聴率調査

Nielsenは、コンピュータ上で視聴されるテレビ番組も対象に視聴率調査を行うと発表した。今年末までに新しい調査システムを導入したいとのこと。将来的には、携帯電話やiPodなど、あらゆる端末での視聴状況を測定できるシステムを目指しているらしい。

しかしeMarketerによると、米国のインターネットによる動画視聴人口は2006年の1億1400万人から、2011年には1億8300万人に増加するという。主に家庭で観るテレビと違って、視聴する場所や人々の行動パターンも端末の種類も多様化している。それを調査システムに反映するのは容易ではないだろう。

プライバシーの問題もある。Nielsenが視聴率調査のモニターになっている世帯に、PCに測定システムを組み込むことの可否を尋ねたところ、同意したのは98世帯中44世帯だったという。個人で使用する傾向が高く、個人データの入っているPCを測定の対象にされたくないと思う人が多いのは当然だろう。Nielsen/NetRatingsはすでに、ストリーミングコンテンツの視聴状況を計測するサービスを開始しているが、これはウエブページにタグを埋め込んで計測するものだ。■

◆情報ソース・参考
ニールセンがPCでも視聴率調査(Advertising Age)
ストリーミングコンテンツの視聴調査(CNET Japan)


雑誌のサイズが2極化の傾向

文字通り大型の高級誌の創刊に向けて、Martha Stewart Living Omnimediaが準備を進めているらしいと、アドバタイジング・エイジが伝えている。同社が狙っているのは明らかに、ファッションや化粧品などのラグジュアリー・ブランドの広告だ。

ハイエンドの広告主は景気後退期でも広告への投資を減らさず、高額商品にふさわしいプレミアム感を実現するために、大判でビジュアル重視の雑誌媒体に出稿する傾向が強いという。例えばグッチは、代表的な大判のファッション誌『W』(コンデ・ナスト社)の2月号に、トリプル・ゲートフォールド(3つ折りの広告で開くと3ページ大になる)を含む30ページの大型広告を掲載した。(『W』のサイズはヨコ約25cm、タテ約33cm)

雑誌『New York』から派生して昨年11月発売された高級ファッション誌『New York Look』も、本誌よりも15%大きいサイズだ。富裕層向けの大判雑誌にはこのほかに、『Elite Traveler』『Cigar Aficionado』『Ocean Drive』などがある。

このように出版社が富裕層向けの高級誌を大判化する狙いは、実用情報をメインにした雑誌や新聞との差別化を図ることにある。New York TimesやWall Street Journalなどの新聞は近年、サイズの小型化に踏み切った。(Wall Street Journalは小型化により、年間1800万ドルの経費節減に成功した。)上記のMartha Stewartも、毎日の料理のレシピを載せた『Everyday Food』は小さなサイズで出版する道を選んでいる。経済の不調やインターネットの台頭など様々なプレッシャーと戦うために、雑誌社は「違い」を際立たせる戦略を選んだということだ。

一方でアメリカでは、ルイ・ヴィトンがこれまで雑誌を中心に行ってきたキャンペーンを、ケーブルや衛星などのテレビおよび映画館での劇場CMで実施するとの報道が、雑誌業界を戦々恐々とさせている。高級ブランドのマーケティング担当者も対費用効果に敏感になっており、ヴォーグのような雑誌でも読者の質を問われるようになっていると、アドバタイジング・エイジは伝えているのだが……。■

◆情報ソース
Martha Stewartが大型ファッション誌を創刊準備(Advertising Age)
New York Lookについて(New York Observer)
ルイ・ヴィトンが雑誌広告から方向転換(Advertising Age)






Microsoft=Yahoo提案のインパクト

マイクロソフトがヤフーへの買収提案を発表して世界中をあっと言わせてから1週間が過ぎた。

ロイターによると、グーグルのCEOエリック・シュミットが、ヤフーに対するマイクロソフトの買収提案に防衛策を講じる手助けをするため、ヤフーのCEOジェリー・ヤンにコンタクトをとったという。といっても、グーグルが自らヤフーの買収に乗り出す可能性は低い。(乗り出したにしても独占禁止法に引っ掛かるため認可される見込みはない。)

一方、米紙アドバタイジング・エイジは、ヤフーのホワイトナイトになる可能性が大きいと目されていたNBC UniversalとNews Corpはいずれも、取引に介在するつもりはないと報じている。

そもそも、マイクロソフト=ヤフーの取引は、インターネット広告業界にどのようなインパクトを与えるのか。アドバタイジング・エイジの見解を、いくつかの記事をまとめて以下に要約する―

今回の買収劇でもっとも驚くべきは、それがインターネット広告業界には(少なくとも短期的には)ほとんど変化をもたらさないという点だと記している。マイクロソフトがヤフーを統合しても、米国においてはグーグルの検索市場のシェアの半分を手に入れる結果にしかならない。海外では、その割合はさらに小さくなる(グーグルの検索市場の世界シェアは62.4%。一方、ヤフーは12.8%、マイクロソフトは2.9%/Source: ComScore qSearch 15歳以上の自宅・職場からのアクセスを対象とした場合の市場占有率)。

両社の統合は広告主に、より広範なオンライン広告のラインナップを提供し、ディスプレイ広告、動画、あるいはゲームを組み合わせた広告が可能になるかもしれない。しかし、マイクロソフトもヤフーもすでに、それぞれこの使命を果たすために努力を重ねてきた。しかも、並々ならぬ規模の2つの組織がひとつになるには、膨大な労力と時間が必要になる。その中で、広告主に歓迎されるソリューションをすんなりと提示できるとはとても思えない。

グーグルにとっても、マイクロソフト=ヤフーの影響は軽微なものだ。それどころか、この買収劇はグーグルにとって、歓迎すべきことかもしれない。マイクロソフト=ヤフー連合が誕生したとして、新会社が統合に伴う調整に追われ、共有する検索プラットフォームの構築に悪戦苦闘している間に、グーグルは検索市場の寡占化をますます進め、商品メニューを拡大することができる。マイクロソフトの買収提案がご破算に終わったとしても、今回の騒動でグーグルに対する独禁法の監視の目が和らいだのは間違いない。

ただし、マイクロソフトの買収提案の本当の狙いは、検索市場以外にあるのかもしれない。グーグルは、ウエブベースのアプリケーション・スイートGoogle Appsを、学生や中小企業を対象に提供するとの発表を行った。これは、パッケージソフトを大量に流通販売する企業から、ウエブベースのソフトウエア企業へと生まれ変わろうというマイクロソフトの目論見を脅かすものであり、その危機感が買収提案の原動力になった可能性がある。Forrester ResearchのアナリストRob Koplowitzによると、「Officeが売上の中心である間はOfficeを脅かすもの=マイクロソフトを脅かすものだが、問題は、マイクロソフトが目の前のことではなく10年先のことを心配する必要があるということだ。一般消費者向けアプリケーションとビジネス用のアプリケーションは、その境目がますますあいまいになっており、ヤフーは消費者向けの分野でメールやインスタント・メッセージなどの能力を有している。また、同社は次世代向けアプリケーションの開発支援にも優れている。」

一方、グーグルはここ数カ月、株価が下降線をたどっており、昨年11月のピーク時(747ドル)から30%の安値となった(株式総額にすると700億ドルの下落―これはマイクロソフトがヤフーに提示した買収額446億ドルや現在のタイム・ワーナーの株式時価総額よりも巨額)。これは、同社が順調に成長できる時期は過ぎたとの見方を反映したものだと思われる。

2007年に166億ドルの売上を記録したグーグルの企業規模を考えると、成長率が鈍化するのも自然なことだが、それよりも懸念されるのは、検索市場の将来だ。グーグルはいま、デジタル広告の中心的存在となっているが、それはいつまで続くのか。グーグルがトップランナーでいられるか否かは、マイクロソフトの動きではなく、グーグル自身にかかっている。同社には140億ドルものキャッシュと、下落したとはいえ高価な株があり、それを今後の行方を決定づける取引に行使できる立場にある。とはいっても、リッチメディア企業は往々にして、取引に失敗することが多いのだが。■

◇引用元
They'll Still Be Chasing Google
Who's Afraid of Micro-hoo? Not Google
A War of Words Between Web Giants
以上すべてAdvertising Age




はじめに

メディア業界、広告業界がいま、大きな変革期のさなかにあることを否定する人はいないでしょう。先だって開かれたダボス会議では、未来学者たちのパネルで、紙に印刷されたスタイルの新聞は2014年までに消滅するだろうとの予測が披露されたとのことですが、この予測をSFめいた話として一笑に付すことができないほど、私たちが直面している変化の波は大きく急速なものです。

この変革期の果てにどのような世界が待ち受けているのか、マーケティング・コミュニケーションはいかに変貌していくのか、正確に言い当てることは不可能でしょうが、それでも私たちは日々の業務をこなし、将来に備えて準備をしていかなくてはなりません。では何をすべきか。そのヒントを、いま現在起こっていることの中から読み取ることはできるはずです。

このブログでは、特にアメリカの業界動向に焦点をあて、業界誌やウエブなどを情報源に、読者の皆さんの参考になりそうなニュースをピックアップして紹介していきたいと思います。なぜアメリカなのか。それは、昨今なにかと評判の悪いアメリカですが、メディアや広告のダイナミズムにおいて、いまなお世界の他の地域をリードしており、我々が参考にできる点が多々あると思うからです。

紹介にあたっては、情報源に記されていることの要約にとどめ、できるかぎり私見を交えないようにしたいと考えています。同じニュースでも読む人によって目の付けどころは違うでしょうし、そこから学ぶことも異なってくるはずなので、下手に私見を交えることでバイアスをかけるべきではないと思うからです。とは言っても、どのニュースを選び、どの部分を紹介するかには、私の興味が反映されざるを得ないのですが。

ブログ名は、”put a bug in someone’s ear” (ヒントやアイデアなど役に立つ情報や助言を耳に入れる・示唆する、という意味)という慣用句からとりました。このタイトルのとおり、当ブログが多少なりとも皆さんのお役にたてば幸いです。内容には細心の注意を払っていきますが、私はプロの翻訳者でも研究者でもないので、中には誤訳や事実誤認があるかもしれません。お気づきの点があれば、ぜひご遠慮なくご指摘ください。その他、ご意見、ご要望などありましたらぜひお聞かせください。

テーマ:ビジネス - ジャンル:ビジネス

前のページ

[PR] 英会話 生命保険 アルバイト FC2ブログ