A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2008年06月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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タイム社が新形態の雑誌予約購読サイトを開設

米タイム社(Time Inc.)が出版社の枠組みを超えた雑誌予約購読サイトMagahound.comを立ち上げ今年9月、サービスを開始する。

利用者は毎月、一定の会費を支払えば雑誌を予約購読できる。複数の雑誌を好きに組み合わせることができ、いつでも購読雑誌を変更することができる。サービス自体をキャンセルするのも自由だ。予約購読、あるいは定期購読という呼び名の当てはまらない新しいサービスだ。現在、280誌の参加が決定しており、これをサービス開始までに300誌、さらに年内に400誌まで増やす意向だという。

肝心の会費は、3誌を購読する場合月々3.95 ドル、5誌で7.95ドル、7誌では9.95ドルで、8誌以上は1誌増えるごとに1ドル追加になる。日本では考えられない、かなりの割安だ。現在、予約購読にディスカウント料金を設定しておらず、年間19ドル以上かかる雑誌は「プレミアム」誌扱いとなり、会費が1誌/月あたり2ドル追加となる。「プレミアム」誌扱いとなるのは、全体の10~15%だという。また、初回利用者は、無料で1ヶ月のお試し期間を利用することができる。

発行部数公査機関のABCおよびBPAは、このサービスで販売される雑誌を当分の間はシングル・コピー・セールス扱いにし、将来は新しい分類を検討するという(部数公査はニュース・スタンドや書店でのシングル・コピー・セールスと予約購読に分けて行われる)。

参加出版社にとっては、購読者のリストをどこが所有するのか気になるところだろうが、リストの所有権はMaghoundが持ち、複数の出版社のダイレクト・メールやEメールをまとめて送るのだそうだ。(運営元のタイム社の競合他社は、このシステムに抵抗がないのだろうか。)

Magahound.comは、準備サイトがすでに立ち上がっている。

◆情報ソース
Time Inc.'s Maghound Set to Debut in September (FOLIO)



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大統領選情報ではデジタル・メディアに軍配?

米独立系大手PRエージェンシーのWaggener Edstrom Worldwideが実施した調査によると、18~35歳のいわゆるジェネレーションXとミレニアルズと呼ばれる世代は、今年の大統領選挙に関する情報の入手先として、64%がデジタル・メディアを選んでいる。また、圧倒的多数の76%が、選挙に関する情報源としては、旧来型メディアよりもデジタル・メディアの方がアクセスと情報共有が容易であるため好ましいと回答した。彼らは、旧来型のニュースソースは情報を操作し、ニュースを「作る」から好ましくないと感じている。

この調査の標本数は800で、400は電話、400はオンラインで回答を得た。調査期間は6月9~12日。Waggener Edstrom Worldwideは回答者の67%が26~35歳のジェネレーションXで、残りは18~21歳のミレニアルズ世代だと説明している。(この2つの世代の定義はまちまちで、ベビーブーム後のジェネレーションXにもっと幅広い年齢層を含める人もいるし、ミレニアルズを2000年代に成人した(する)世代とするなら、いま18~27歳ということになる。)

6月20日のエントリーで、旧来型メディアに掲載された広告の方が印象が良いとのヤンケロビッチの調査結果を紹介した。上の調査は大統領選挙のニュースソースに関するものであるから比較にならないしヤンケロビッチの調査と矛盾しないが、ミレニアルズ以降の世代は広告の受け止め方も違うのではないかという気がしている。彼らは物心ついたころからテレビゲームやコンピュータに慣れ親しんできており、その結果、デジタルの世界に対するファミリアリティが高く、マルチタスキング(テレビを見ながら携帯メールで友人と感想を述べ合うなど同時に複数の作業をする)が当たり前になっている。情報を入手する速度も量も、上の世代よりも格段に勝るだろう。ミレニアム以降の世代への取り組みは、旧来型メディアにとって大きな課題になる。

余談になるが、このWaggener Edstrom Worldwideの調査のリリースページには、電話で回答した400名のうち、およそ3分の1は固定電話を持っておらず携帯電話を使ったとの注意書きがなされている。

さらに蛇足ながら、この調査の結果では、37%が民主党、27%が共和党の支持者で、どちらでもない浮遊層が23%だった。また、回答者が見聞きした範囲でキャンペーンにインターネットをうまく使ったのはどちらかを聞いたところ、民主党が56%と共和党(13%)に圧勝した。「もし今日、大統領選挙があったらどちらに投票するか」との質問では、バラク・オバマと答えた人が49%、ジョン・マケインと答えた人は29%だった。

◆情報ソース
The Web Is Where It's At for Youth Vote (Advertising Age)
Waggener Edstrom Worldwide agency news
広告の印象や口コミ効果では旧来型メディアの方が優れている―ヤンケロビッチ調査 (A BUG IN YOUR EAR)



今年は雑誌からデジタルへの分岐点なのか

先週、6月19日のエントリーで、2つの出版社アシェット・フィリパッキ・メディア(Hachette Filipacchi Medias)U.S.とハースト社(Hearst Corp.)のトップ退任を伝えたが、その背景には印刷媒体からデジタルへの本格的な戦略転換があるのではないかと、MediaPostが伝えている。

まずアシェットだが、ホールディング・カンパニーのラガルデール(Lagardere)はデジタル分野の売上げ拡大を今年の戦略上の最優先課題に掲げており、来年までに総売上に占めるインターネット事業のシェア目標を10%と設定しているという。新CEOとなるAlain Lemarchand氏は、このミッションを実現するためにラガルデール本社から送り込まれるのだという見立てだ。

この戦略に沿った動きはすでにはじまっていたのかもしれない。当ブログ5月13日のエントリーでは、アシェットのデジタル部門で大がかりな再編が行われ、トップ(担当バイス・プレジデント)の交代に伴って15名のスタッフが同社を去ったとお伝えしたが、これもインターネット事業の成長率に経営サイドが満足しなかった結果らしい。この再編で新デジタル・メディア担当バイス・プレジデントとしてアシェットに迎え入れられたTodd Anderman氏は先週、同社最大のウエブサイトWoman’s Dayを皮切りにすべてのサイトを年内に一新すると発表した。

どのように一新するのかは明らかにされていないが、Anderman氏は雑誌(プリント版)の編集スタッフがウエブサイトのコンテンツづくりにも深くかかわるようになり、デジタル部門のスタッフは技術、製品開発、マーケティングに専念していくと述べている。同社ではすでに、この方針に沿って、上記の15名に代わって11名の新スタッフを採用している。

アシェットはラガルデールの傘下になった直後の2001年にもデジタル化の方針を鮮明にし、世界的に女性誌ELLEのウエブサイトをはじめとして大がかりなてこ入れを行ったが、はかばかしい結果を得ることができなかった。同社にとってフランスに次ぐ世界第2の市場である米国で、ラガルデールの直接統治が進行している背景には、こうした事情があるのかもしれない。

ハースト社でも今年初め、デジタルへの本格的転換を予感させるような出来事があった。2月に、雑誌系ウエブサイトの広告・マーケティングの責任者だったPamela Raley氏が入社後わずか1年で退任させられ、ティーン誌CosmoGirlの創刊編集長であり同誌のデジタル化を推進したKristine Welker氏が後任となったのだ。ハースト社のCEO、Victor Ganzi氏の突然の退任発表も、この転換が原因なのではないかとMediaPostは推測している。

コンデナスト・インタラクティブ(Condé Nast Interactive)でも今年2月、広告営業担当バイス・プレジデントの交代劇があった。さらに先週、CondeNetのクリエイティブ・ディレクターを2003年から務め、Men.style.comの立ち上げでも中心的な役割を果たしたMark Jarecke氏が、理由を明らかにしないまま退任した。

これら一連の動きは、MediaPostが推測するように雑誌社が紙からデジタルへ本格的に舵を切ったことの現われなのではなく、どうも雑誌社がデジタル以外に活路を見いだせずにいて、しかもその頼みの綱のデジタルで思うように売上げを伸ばせないことへのあせりがあるのではないかと思われる。

同じMediaPostの記事が紹介しているように、監査・コンサルティング会社プライスウォーターハウス・クーパーズ(PricewaterhouseCoopers)は、雑誌社のインターネット事業の売上が今年、前年比63%増の3億4,200万ドルに達すると予測しているが、これはインターネット広告市場全体の4%にしか過ぎない。しかも、インターネット広告市場の41%は検索型広告によるもので、そのうち、ソースによってばらつきはあるが68%~76%はグーグルの売上である。IAB(Interactive Advertising Bureau)の統計によると、今年第1四半期(1~3月)のインターネット広告売上は昨年同期比18.2%増の58億ドルに達したが、検索型とその他の広告の差は広がっており、このうちディスプレイ広告の売り上げは20億ドルにとどまった。

加えて、ここにきてインターネット広告の成長率に鈍化の傾向が見える。インターネット広告の売上は13四半期連続で直前の四半期を上回ってきたのだが、今回初めて下回る結果になった。昨年第4四半期(10~12月)のインターネット広告売上は59億ドルで、上記の数値よりも多かった。もちろん、毎年第4四半期はクリスマスシーズンということもあって広告量が増えるのだが、昨年は第1四半期にその前年の第4四半期よりも多くの予算がインターネット広告に投じられたのだ。(※以上はすべて米国内の数値)

上記の結果については、景気の影響があるので軽々には断定できないが、ネットへの過度な、あるいは安易な依存・シフトは危険である。

◆情報ソース
Mag Turnover Points to Digital Future (MediaPost)
Hachette to Relaunch All Titles' Sites by Year End (Mediaweek)
IAB Ad Revenue Report Shows Mixed Trends (ClickZ)
アシェットがデジタル部門を再編?
アシェットとハーストの経営トップが退任



広告の印象や口コミ効果では旧来型メディアの方が優れている―ヤンケロビッチ調査

テレビ、雑誌、新聞などの旧来型メディアに掲載された広告の方が、デジタルメディアに掲載された広告よりも良い印象を生み出すとの調査結果が発表された。

「When Advertising Works」と題されたこの調査は今年4~5月、米ヤンケロビッチ社(Yankelovich)がシークエント・パートナーズ社(Sequent Partners)と共同で行ったもので、ボール・ステイト大学(インディアナ州)のメディア・デザイン研究所が調査協力した。

テレビ、屋外広告、雑誌、新聞、ラジオ、映画館(劇場広告)、インストアなどの旧来型メディアと、Eメール、インターネット・バナー広告、SNS、ゲーム、動画共有型サイト(YouTubeなど)などのデジタルメディアの計16メディアによる広告について調査が行われた。

その結果、旧来型メディアで見た広告について良い(ポジティブな)印象を受けたと答えた人が回答者の56%を占めたのに対し、デジタルメディアで見た広告について同様に答えた人は31%だった。逆に、悪い(ネガティブな)印象を受けたと答えた人の割合は、旧来型メディアの13%に対して、デジタルメディアでは21%だった。また、良い印象も悪い印象ももたなかったと答えた人は、旧来型メディアでは32%、デジタルメディアの場合は48%だった。

この結果について、ヤンケロビッチの調査責任者は、人々は旧来型メディアを見ているときの方が娯楽を受け入れる姿勢が顕著でリラックスしているから、広告についてもポジティブな印象を持ちやすい。デジタルメディアは問題解決に適しており、それがデジタルメディアを使う主な理由にもなっている。情報を追い求めたり何かを比較したりしているときはいらいらした気分になりがちだが、テレビや雑誌を見ているときはそんなことはなく、広告に注意を向けることにも抵抗がないのではないか、と解説している。

同調査はまた、これまでウエブについて通説とされてきたことを覆すような結果を提示している。旧来型メディア―特にテレビCMや劇場のスポット広告―の方が、デジタルメディアよりも、口コミを誘発しやすいというのだ。ただしそれは、「見た人がその広告を気に入った場合に限る」と、上記の調査責任者は述べている。また、「口コミ効果を実現するためには、旧来型メディアとニューメディアをうまく組み合わせて使う必要がある」とのこと。

この調査結果を紹介しているニューヨーク・タイムズの記事には、調査方法が記されていないが、ヤンケロビッチのサイトで見つけた調査概要によると、サンプルは16歳以上の男女1500名。45分間のインターネット・インタビューを通じて、様々なメディアを通じての広告接触例を5000以上収集し、分析を行ったとのこと。

◆情報ソース
Traditional Media Not Dead Yet for Marketing, Study Says (New York Times)
ヤンケロビッチ社サイト:When Advertising Works



アシェットとハーストの経営トップが退任

2つの主要メディア企業のトップの退任が相次いで報じられている。

一人は、雑誌『エル(ELLE)』、『カー・アンド・ドライバー(Car and Driver)』などを発行する出版社アシェット・フィリパッキ・メディア(Hachette Filipacchi Medias) U.S.のCEO、ジャック・クリガー(Jack Kliger)氏。後任には、親会社ラガルデールの一部門ラガルデール・アクティヴ(Lagardère Active)の役員アラン・ルマルシャン(Alain Lemarchand)氏が9月1日付で就任する模様。クリガー氏には新設の会長のポジションがオファーされているが、クリガー氏は正式には受諾していない。

この人事は一部では、驚きをもって受け止められている。というのは、クリガー氏はCEOとしての契約を2009年まで延長したと伝えられていたし、その後任には2003年4月から筆頭副社長兼COOを務めているフィリップ・ゲルトン(Philippe Guelton)氏が就くと、多くの関係者が信じていたからだ。

クリガー氏は在任中、『プレミア(Premiere)』、『エル・ガール(ELLE Girl)』などの雑誌を休刊、大がかりな経費削減策を推進する一方で、インターネット広告会社ジャンプスタート・オートモーティブ・メディア(Jumpstart Automotive Media)を買収するなどネット事業の強化を行った。2005年から2007年までは米雑誌協会(MPA: Magazine Publishers of America)の会長を務め、今年2月には、雑誌業界で長年にわたり顕著な貢献を行った人に贈られるヘンリー・ジョンソン・フィッシャー・アウォード(Henry Johnson Fisher Award)を受賞した。

退任が報じられているもう一人の人物は、ハースト社(Hearst Corp.)の社長兼CEO、ビクター・ガンジ(Victor F. Ganzi)氏だ。ハースト社は『レッドブック(Redbook)』、『グッド・ハウスキーピング(Good Housekeeping)』などの雑誌、『ヒューストン・クロニクル(Houston Chronicle)』などの日刊紙を発行し、ローカルテレビ局ハースト・アーガイル・テレビ(Hearst-Argyle Television Inc.)を傘下にするメディア複合企業で、新聞王ウイリアム・ランドルフ・ハーストに始まるハースト家の資産運営を受託する理事会によって経営されている。ガンジ氏の退任は、この理事会との経営方針を巡る意見の衝突が原因だと伝えられている。他のメディア企業同様、ハーストの基幹産業である雑誌、新聞、ローカルTVは、広告市場の変化、米国の景気停滞の影響で困難に面しているらしい。

ガンジ氏の後任には、2002年にガンジ氏が引き継ぐまで23年間、CEOを務めていたフランク・ベナック(Frank A. Bennack Jr.)氏が暫定的に復帰する。その後の候補者としては、ハースト・マガジンズ社の社長、キャシー・ブラック(Cathie Black)氏が有力視されている。ブラック氏は、『ヴァニティ・フェア (Vanity Fair)』、『ニューヨーカー (New Yorker)』の編集長を歴任したティナ・ブラウン(Tina Brown)氏を迎えて鳴り物入りで創刊させた『トーク(Talk)』が大失敗に終わり、一時名声を落としたが、その後『オプラマガジン (O, The Oprah Magazine)』の成功で名誉挽回している。

同誌は、カリスマ的な人気を誇るTVパーソナリティ、オプラ・ウィンフリー (Oprah Winfrey)が監修する女性ライフスタイル誌で、彼女のポジティブな姿勢をベースに、美容やフィットネスのテクニック、料理、カルチャー、その人脈を生かした著名人とのロングインタビューなどが掲載されている。

◆情報ソース
Jack Kliger Replaced as Hachette CEO (Advertising Age)
Hearst Chief Quits in Clash With Board (Wall Street Journal)



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