A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2008年08月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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米新聞社のオンライン広告に陰り

販売部数の低下、広告の減少、その結果余儀なくされた人員削減と、このところまったく良い所なしの米新聞業界にとって、頼みの綱だったオンライン広告の伸びが陰りを見せ始めた。頼みの綱とは言っても、オンライン広告は単価が安いため、部数低下や印刷版の広告の落ち込みをカバーできる水準にはほど遠い状況なのだが、それでも成長を続けるオンライン広告が唯一の明るい兆しであったのは確かだろう。

New York Times社が発表した7月の業績によると、同社のニュース・メディア・グループの広告売上は前年同月比17.9%減だった(同社のプレスリリースでは、その主な原因は印刷版の広告の落ち込みであると説明されている)。それよりも同社にとってショッキングだったのは、インターネット広告売上の成長率が1%に満たなかったことだ。

St. Louis Post-Dispatchなど、米中西部を対象とした新聞を発行するLee Enterprisesは、今年4-6月期のオンライン広告売上が前年同期比で9.1%減少した。同社はその要因を、主要カテゴリーで紙(印刷版)とオンライン両方の広告出稿額が落ち込んだためと分析している。

Tribune Co.は、4-6月期のオンライン広告売上が前年同期比4%減だった。同社の経営陣によると、Los Angeles Times、South Florida Sun-Sentinel、Orlando Sentinelといった同社の新聞が、カリフォルニア・フロリダ両州の景気の悪化と、自動車および不動産分野の広告減の影響を受けているためだという。

E.W.Scrippsが発行するRocky Mountain News、Memphis Commercial-Appealなどの新聞のオンライン広告は、同じく4-6月期で8%落ち込んだ。同社の役員Mark Contrenasによると、同社のオンライン広告は印刷版広告と関連しているものが68%と多く、その影響を受けて減少しているのだという。オンライン広告のみを出稿している広告主に限れば、同期の売上高は26%増だった。

E.W.Scripps社の説明のとおり、新聞社のオンライン広告の不調は、印刷版広告との抱き合わせ販売が一因となっているといえる。その証拠に30以上の日刊紙を発行する全米第2の新聞社McClatchy Co.の広告売上は、4-6月期で前年同期比12%以上の成長を見せた。同社のCEO、Gary Pruittが投資アナリストに語ったところによると、この成功の秘訣のひとつは、オンライン広告を印刷版から切り離したことだ。2006年末時点で、同社のオンライン広告売上の70%は、印刷版広告のアップセル(ある商品の付加価値/グレードアップ商品として他の商品を販売すること)、あるいは印刷版広告とのパッケージで販売したものだった。しかし現在は、印刷版広告主による売上は、ウエブ事業全体の50%まで下がっている。オンライン広告を主に利用する広告主の獲得に成功したからだ。

他の新聞社がMcClatchyに学ぶべき点は多いだろう。しかしいまは、景気後退による主要カテゴリーの広告投資額の落ち込みが事態をさらに深刻にしている。新聞業界を30年以上にわたり見てきた、Benchmark Co.のメディアアナリストEd Atorinoが「史上もっとも悲惨な状態」と呼ぶ新聞業界の冬の時代は、まだまだ続きそうだ。

◆情報ソース
Uh-oh, Where Did Those Newspaper Web Ads Go? (Advertising Age)
New York Times Shocker: Online Ad Growth Stalls (Advertising Age)
The New York Times Company Press Release




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Amazonが愛書家向けSNSのShelfariを買収

米Amazonが愛書家のためのソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)のShelfariを買収すると、Seattle Post Intelligencerが報じている。また、Shelfariはユーザー向けのブログで、買収を発表している。

Shelfari


Shelfariはシアトルに本拠を置くスタートアップ企業で、同社のSNSでは仮想の本棚を作り、読んだ本やその感想を知人と共有することができる。上記のShelfariのブログによると、Amazonはすでに長期間にわたり同社をサポートしてきている。また、Seattle Post Intelligencerによると2007年2月にAmazonが資金的な援助を行い、同社の一部を所有していたという。

一方、Amazonは、これまで自費出版や出版社向けのオンデマンド印刷サービスを提供するBooksurge、オーディオブックの大手出版社であるBrilliance Audio、書籍、新聞、雑誌、テレビ番組、ラジオ番組などをデジタルオーディオ化したコンテンツを提供するAudible、電子書籍リーダーの開発元であるMobibookを買収。さらに8月1日には、絶版本や新古書などを販売するAbeBooksの買収を発表したばかりだった。(AbeBooksはShelfariのライバルであるLibraryThingの株を所有しているが、その扱いについては明らかにされていない。)

Amazonは上記の買収を通じて、自費出版物まで扱い品目に加え、オンデマンド印刷企業を傘下に収めることにより少部数の書籍も在庫コストを最小に抑えながら販売できる態勢を整えた。また、電子書籍やオーディオブックの開発元およびPOD(point on distribution)としてのキープレーヤーにもなりつつある。つまり、出版にかかわるあらゆるサービスを提供し、売れ行き情報などを一手に握る一大帝国を築きつつある。出版社側から見ればAmazonは、パートナーシップを結べば低リスクで自社の多くの資産をビジネスに結び付けることができる相手となりつつあるのだが…。

日本でAmazonが同じことを始めたらどうなるのか、考えると恐ろしい気がする。

◆情報ソース
Amazon.com buys Shelfari, a startup for book lovers (Seattle Post Intelligencer)
Shelfari joins the Amazon.com family (Shelfari)




いよいよインタラクティブTV誕生か

視聴者がテレビを観ながら、友人とチャットやメールのやり取りをしたり、最新のニュースや株価情報をチェックできる―そんなインタラクティブTV技術をIntelとYahooが発表した。

widget channel

Yahooはテレビ画面の下部にメニューを表示し上記のサービスを提供するためのwidgetを開発し、Intelがテレビやセットトップボックスなどの機器に同サービスを搭載するためのチップを開発した。両社はこのサービスをWidget Channelと呼んでいる。Widget Channelのメニューはクリックすると拡大表示され、通常のインターネット・ブラウザのようにYou Tubeを見たり、ネット・オークションに参加したりもできる。

すでに、米国最大のケーブルテレビ事業者Comcastが来年、セットトップボックスにWidget Channelを搭載して試験放送を行うと発表しているほか、ディズニー傘下のテレビ局ABC、ソニー、東芝、サムスン電子、モトローラがサポートを行っている。

Intelのシニア・ヴァイス・プレジデントのEric Kim氏は、消費者は来年にはこの技術を手にできるだろうと述べている。

◆情報ソース
Intel to build Yahoo widgets into new TV chips (Reuters)
Yahoo + Intel ITV Efforts = YaHell? (Marketing VOX)
Intel, Yahoo Target Web Services on TV (Wall Street Journal)




タイム社が定期購読事業を拡大

米国の雑誌は日本よりも定期購読者の割合が高い。そのため、定期購読者の減少は深刻な実売部数の落ち込みにつながり、結果、広告ビジネスにも影響しかねない。大幅な割引料金を設定し、定期購読キャンペーンに力を入れるのはそのためだ。出版社に代わり定期購読の契約を取り、コミッションを得る代理店(subscription agent)の存在も大きい。

QSPもsubscription agentのひとつだ。この企業は1963年に、Time Inc.とReader’s Digestの出資により設立され、1970年にReader’s Digest Association (RDA)がTime Inc.から株式を買い取り完全子会社化した。QSPの特長は、定期購読エージェントビジネスを通じて学校や地域コミュニティなどの基金獲得を行っている点だ。学校の生徒や非営利法人の職員は雑誌の定期購読を売って基金にあて、出版社との仲介をするQSPはその一部をコミッションとして得る。このように社会貢献の一面もあるため、ほとんどの出版社が同社と契約している。

そのQSPを、もともとの親会社であるTime Inc.がRDAから1億1千万ドルで買収することになった。Time Inc.はすでに、定期購読販促会社のSynapse Groupや日本の取次にあたるTime Distribution Servicesをグループ企業として抱え、新しい雑誌定期購読サイトMaghound.comの開設を9月に予定しているが、これらの事業との統合は予定されていない。こうしてみると、Time Inc.は自社ばかりでなく、出版社横断的な雑誌定期購読の仲介や販売促進を事業の柱の一つと位置付けているようだ。この背景には、書店やニューススタンドでの雑誌販売の落ち込みがある。出版業界向けのニュースレターを発行するCircMattersが ABCのデータを分析した結果によると、今年上半期の書店の雑誌販売は、昨年同期比でマイナス6.4%だった。

定期購読へのテコ入れ以外にも、出版業界は書店実売の落ち込みを補うために涙ぐましい努力をしている。雑誌『Life & Style』の元編集者、Mark Pasetskyが立ち上げたサイト、CoverAwards.comでは雑誌の最新号の表紙が紹介されているが、そこには “Click here to buy it now!”の一文があり、Universal Newsの雑誌販売サイトにリンクしている。

Mark Pasetskyは独立後、Mark Allen & Co.という会社を設立。雑誌のカバーテストなどを行うメディア・コンサルティングを業務としている。彼のサイトが雑誌の売れ行きにどれほど寄与できるのかは疑問だが、出版業界が先行きに大きな危機感を抱いているのは間違いない。

◆情報ソース
Time Inc. Buys Subscription Source From Reader's Digest (Advertising Age)
From Web Post to Hard Copy (Advertising Age)
タイム社が新形態の雑誌予約購読サイトを開設


多様化する雑誌社のオンライン広告運営

デジタル・メディアの立ち上げには巨額の費用がかかる。携帯電話のサイトも同様だ。出版社やテレビ局などの旧来型メディア企業の多くが、広告の不振をデジタル・メディアで補う道を模索しているが、思うように収益が上がらず苦しんでいる。確かに雑誌社のオンラインでの広告売上は拡大してはいるものの、ボトムラインを改善するまでにはいたっていない。大手監査・コンサルティング会社PricewaterhouseCoopersによると、米国の出版社のオンライン広告売上は、広告売り上げ全体のわずか3.8%にすぎない。

せっかく用意したオンライン広告枠を効率的に販売できないことも、出版社の大きな悩みとなっている。その有効な解決策として注目を集めたのが、外部の広告ネットワークだ。過去7年程の間に、多くの出版社が本格的にオンライン事業に乗り出し、それとともに広告枠の売れ残りも増えていった。同時に、広告ネットワークの数も、投資銀行ThinkEquity Partnersの統計によると50足らずから300以上に急増した。

Men’s Health、Prevention、Runner’s Worldなどの健康誌や専門誌を出版し、そのオンライン版を運営するRodaleも、広告ネットワークに助けを求めた。同社は2年前、プリント版とデジタル版の広告営業を統合し、デジタルビジネスを全広告売上の10%以上を計上する水準にまで成長させた(同社によると、今年6月のデジタル広告売上は、昨年同期比で11%の成長を果たした)が、広告枠の売れ残りの問題に直面し、今年3月、一部を外部の広告ネットワークにゆだねる決断をした。

しかし、新たな問題が浮上した。Rodaleが独自の営業である自動車メーカーに提供したサイトに、ネットワークの配信する競合メーカーの広告が表示される事故があった。ファーストフードチェーンの広告が、(ファーストフードに否定的な)栄養学を説くページに配信されてしまったこともあった。最悪なのは、Women’s Health誌の英語サイトに、不注意のためにスペイン語の広告が配信されてしまったケースだ。広告内容の管理が行き届かないという問題もある。イメージを重視する雑誌のサイトに、いかがわしい商品やサービスの広告が表示されては、雑誌ブランドに傷をつけることにもなりかねない。結局、Rodaleはわずか6週間でネットワーク広告の契約を打ち切った。

広告ネットワークやアド・エクスチェンジ(広告主が、個人サイトを含めたオンライン・メディアの広告枠に対して入札して出稿するオンライン広告取引システム)事業者との取引に危機感を覚え、契約を打ち切る媒体社は増えている。Martha Stewart Living OmnimediaのCEO、Wenda Millardは、今年2月に行ったスピーチで、「広告枠を豚バラ肉のように売るべきではない」と訴え、他の出版社も外部に広告のコントロールを任せることの危険性を認識するよう呼びかけた。

Martha Stewart Living Omnimediaは外部のネットワークに頼るのではなく、昨年11月、自社サイトを中心にライフスタイル分野に絞った広告ネットワークMartha’s Circleを立ち上げた。現在、このネットワークにはおよそ35のサイトやブログが連なっている。Hearstも自社の20ほどのサイト群を「Portfolio of Experts」と名付け、広告ネットワークとしてアピールしている。経済誌『Forbes』のデジタル部門Forbes Digitalも昨秋、同社が選別したRealClearPolitics.comやInvestopediaなどのサイトを束ねる広告ネットワークを立ち上げた。

Conde Nast社はあくまでも自社運営にこだわる。同社のオンライン部門、CondeNetは、広告ネットワークに対抗して営業チームの再編に着手した。これまで営業チームは、Style.com、Epicurious、雑誌サイトなどのプロパティによってグループ分けされていたが、今後はコンテンツのカテゴリーによってグループ分けされ、プロパティを横断して営業活動を行うという。同社のサイトのひとつ、Epicuriousは6月に190万近いユニークビジター数を記録した(出所はComScore Media Metrix)。他のサイト、Conciergeの6月のビジター数で622,000、Style.comは413,000、Men.Styule.comは331,000だった。今回の組織再編によって、広告主はCondeNetの一人の担当者とコンタクトするだけでこれら複数のサイトを横断して広告を出稿することができる。

広告ネットワークそのものを買収してしまうという、思い切った策を取った出版社もある。アシェット・フィリパッキは昨年4月、車分野に特定した広告ネットワークJumpstart Automotive Mediaを、8,400万ドルを投じて買収した。

一方、Time Inc.は社内に営業部隊を持つのと同時に様々なネットワークへのアウトソースもしており、オンライン広告をどのように販売すれば良いか「山ほどの分析」を行っているという。同社はGlamやプレミアム・コンテンツへの広告掲載を売り物に近年台頭してきたShortTail Mediaのように、プレミアム・コンテンツへの広告掲載を橋渡しするニッチな企業に注目している。

◆情報ソース
Special Report: Publishers Rethink Third-Party Pacts (Mediaweek)
CondeNet Positions to Better Compete With Ad Networks (Advertising Age)



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