A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2008年09月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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テレビが舞台 ― ELLEとmarie claireの熾烈な戦い

米国でファッション誌のライバル『エル(ELLE)』と『マリ・クレール(marie claire)』がテレビ番組を巡って熾烈な競争を繰り広げている。

米ケーブル・ネットワーク、ブラヴォー(Bravo)に『プロジェクト・ランウェイ(Project Runway)』という人気番組がある。無名のファッション・デザイナーを発掘するリアリティ番組で、オーディションを通過したデザイナーが番組内で課題に沿った衣服の制作を行い、その優劣を競う。『エル』は2004年から、ファッション・ディレクターが審査員を務め、優勝デザイナーの作品を『エル』本誌やウエブサイトで大きく取り上げるなど、同番組のオフィシャル・パートナーとして参加。以来、同誌の販売部数は増え続け、広告集稿ページ数もファッション誌のカテゴリーで6位から『ヴォーグ(Vogue)』に次いで2位にまで伸びた。今年は景気後退の影響でどの雑誌も前年割れしているが、9月号の広告ページ数は『ヴォーグ』が前年比マイナス7.1%だったのに比べ、『エル』は6.6%増だった。同誌の発行人、キャロル・スミス(Carol Smith)の言葉を借りれば「500万人のオーディエンスを持つテレビ番組は強力なブランディング・ツール」なのだ。

一方『マリ・クレール』は先週、コムキャスト・エンタテインメント・グループ(Comcast Entertainment Group)傘下のケーブル・ネットワーク、スタイル・ネットワーク(Style Network)と組んで、新番組『ランニング・イン・ヒールズ(Running in Heels)』を来年3月からスタートさせると発表した。これは、同誌の編集者、ライターからインターンにいたるまで、雑誌作りに携わっているスタッフの日常を追いかけるドキュメント番組だという。

それだけではない。『プロジェクト・ランウェイ』に『エル』を代表して審査員として出演していたのは、ニナ・ガルシア(Nina Garcia)という同誌の名物ファッション・ディレクターなのだが、『マリ・クレール』が彼女を引き抜いたのだ。のみならず、『プロジェクト・ランウェイ』のプロデューサー、ハーヴェイ・ウエインスタイン(Harvey Weinstein)が同番組の放映権をブラヴォーのライバル局であるライフタイム(Lifetime)に1億5千万ドルで売り、来年1月からライフタイムで放送を開始することになった。同時に、同番組のオフィシャル・パートナーも『エル』から『マリ・クレール』にスイッチし、ニナ・ガルシアは引き続き審査員を務めるのだという。(ブラヴォーの親会社NBC Universalはウエインスタインを相手に訴訟を起こしている。)

『エル』も負けてはいない。同誌はCWネットワークと組んで『スタイリスタ(Stylista)』という新番組を10月22日からスタートさせる。その中心人物はニナ・ガルシアの後を継いでファッション・ディレクターとなったアンヌ・スロウィー(Anne Slowey)だ。この新番組は映画『プラダを着た悪魔』のリアリティ番組版とも言える内容で、11人のファッション・エディター志望の女性たちが毎回課題を与えられ、その仕事ぶりをアンヌ・スロウィーが審査して最終回となるシリーズ第8回で優勝者を決めるというもの。優勝者には10万ドルの賞金と、『エル』の編集アシスタントとしてのポジションが与えられる。

『エル』と『マリ・クレール』の競争は、ニナ・ガルシアとアンヌ・スロウィーという二人の名物編集者の戦いの様相を呈し始めている。ニナ・ガルシアは『ニュー・ヨーク・マガジン(New York Magazine)』のインタビューでアンヌ・スロウィーとの違いを尋ねられて、「私は(彼女と違って)有名になりたいと思ったことなどない」と皮肉たっぷりに答えている。ちなみに、米国では『エル』はアシェット・フィリパッキ(Hachette Filipacchi)、『マリ・クレール』はハースト・マガジンズ(Hearst Magazines)が出版しているが、日本では両誌ともひとつの出版社(アシェット婦人画報社)から出版されている。

◆情報ソース
'Running in Heels' Joins Stampede of Fashion Reality-Shows (Advertising Age)
Mags Go From Spreads to Screens (Advertising Age)
America’s Next Top Fashion Editor (New York Magazine)
The CW Announces Premiere Date for 'Stylista' (BuddyTV)




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米雑誌協会の新広告キャンペーン

日本では有力雑誌の休刊が相次いでいるが、米国でも、今年1‐6月期の雑誌の広告集稿ページ数は前年比マイナス7.4%と不調で、販売も多くの雑誌が落ち込みを見せている。

米ABC協会(Audit Bureau of Circulations)によると、今年1‐6月期の実売が前年を大きく割り込んだのは、Bauer Publishingが発行する『Life & Style』(シングル・コピー・セールス-30.2%/定期購読を含む総実売数-30%)と『In Touch』(シングル・コピー・セールス-27.7%/総実売数-28.7%)の2つの女性週刊誌。(※シングル・コピー・セールスとは、ニューススタンドや書店での一部売りの実売数)

『Newsweek』もシングル・コピー・セールスが-17.3%、定期購読が-12.6%、総実売数が-12.8%。『U.S. News & World Report』も総実売数を10%落とした。一方、同じニュース誌の『TIME』は、シングル・コピー・セールスは-7%だったが、定期購読による販売を伸ばしたため総実売数は-0.3%にとどまった。

『Vogue』はシングル・コピー・セールスが-14.8%、総実売数が-6%だった。『Men’s Vogue』はシングル・コピー・セールスが40%近く下落したものの、定期購読が43.6%伸びたことが奏功して総実売数はおよそ20%増となった。もっとも米国の場合、主に広告料金の基礎となるレートベース(最低保証部数)を確保するために定期購読を大幅なディスカウント料金で提供する上、配送等のコストもかかるので、定期購読による販売が伸びてもさほど収益の改善には寄与しない。

このように雑誌出版業界に逆風が吹く中、米雑誌協会(MPA: Magazine Publishers of America)は、業績不振に歯止めをかけようと様々な手を打っている。この新しい広告キャンペーンもそのひとつ。

MPA ad 1 small


“Under the Influence of Magazines”(雑誌に影響されて)というコピーで、雑誌の影響力の強さを訴えるこの広告は、Toy New Yorkというエージェンシーが制作した。米国の広告業界で最高の賞であるケリー賞を受賞したアディダス、ハーゲンダッツ、ミニクーパーの製品に消費者が囲まれているビジュアルで、MPAのリリースによると「ユーモラスな」効果を狙っている。

MPAはこの広告とともに、BIGResearch、Dynamic Logic、Roper Reports、Marketing Evolutionなどの企業によるデータを提示し、雑誌広告が消費者の購買意向や検索などのネット上の行動に他媒体(主にテレビ)よりもはるかに強い影響力を発揮することを訴えていく。

◆情報ソース
Consumer Magazines Take Huge Hit at Newsstand (FOLIO)
MPA reliease



エスクァイア75周年記念号は表紙が電子ディスプレイに

Esquire anniv issue

米『エスクァイア(Esquire)』誌の創刊75周年記念号となる10月号は、表紙のタイトルが電光掲示板のように光る。百聞は一見に如かず。すでにYouTubeには、その様子を映したいくつもの動画がアップロードされている。



この記念すべき表紙を実現したのはE Inkという企業の技術で、Amazonの電子書籍リーダーKindleにも使われている。E Inkが最初に、『エスクァイア』にデモンストレーションを行ったのは7年程前のことだったが、当時は店頭ディスプレイ用の技術で雑誌に組み込むことは不可能だった。しかし2年前、『エスクァイア』を発行するハースト(Hearst)社が表紙に組み込めるほどの小型で薄い電池の開発資金を負担するという条件付きで、光る表紙は実現に向けて動き出した。

下の写真はディスプレイと、表紙に挟み込まれている電子基板。丸いのはリチウム電子。

Esquire e-ink cover inside

これらは中国で製造・アセンブルされた。それがどのような過程を経て読者の手に渡ったかが、『エスクァイア』のウエブサイトで説明されている。それによると、電池の寿命は90日間しかないので、消耗を遅らせるために輸送はすべて冷凍状態で行われたらしい。完成品となったディスプレイと電子基板はまず、テキサス州ダラスに到着し、それからメキシコに運ばれて手作業で表紙の紙に挟み込まれた。できあがった表紙は再び冷凍車でケンタッキー州にある印刷所に運び込まれ、この表紙のために特別に作られた装置で本誌部分と製本され、全米の書店に向けて送り出された。

当然のことながら、この表紙の開発・製作には膨大な費用がかかっている。ハースト社は金額を明らかにしていないが、その一部をスポンサーとなったフォードが負担した。75周年号の表紙を開くと、同じ技術を使った同社の新SUV、Flexの広告が現れる。



この電子ディスプレイ表紙の効果もあって、『エスクァイア』75周年号は、10月号としては同誌創刊以来の広告を集めた。ラルフ ローレン、ドルチェ&ガッバーナ、グッチ、エルメネジルド ゼニア、H&M、ヴェルサーチ、サルヴァトーレ フェラガモなど、Advertising Ageの表現を借りると「山ほどの」ファッション・ブランドに加え、マツダ、サーブ、日産などフォード以外の自動車メーカーも出稿。表4にはメルセデス・ベンツの広告が掲載されている。

製作費が原因なのだろうが、表紙が電子ディスプレイになっている特別仕様の『エスクァイア』は、書店・ニューススタンドで販売される10万部に限られている(同誌の総発行部数は約72万部)。ハースト社は、このE Ink社の技術を2009年末まで独占的に使用する契約を結んでいるようだ。同誌のDavid Granger編集長は、来年前半にも次なるE Inkプロジェクトを実現したい意向とのこと。

◆情報ソース
Esquire Unveils E-Ink Digital Cover (Advertising Age)
News Flash From the Cover of Esquire: Paper Magazines Can Be High Tech, Too (New York Times)
How the E-Ink Cover Was Made (Esquire.com)



ケロッグ社がオンライン広告の投資効果はTV広告の2倍と査定

米食品大手ケロッグ社がオンライン広告費を増やし、TV広告予算を削減する決定をした。
同社のチーフ・マーケティング・オフィサー、Mark Baynes氏によると、過去18ヶ月間にわたりスペシャルKブランドのROI(Return on investment: 投資利益率)を計測した結果、オンライン広告がTV広告を2倍以上上回った。Baynes氏は、コスト削減策のひとつとして、来年のテレビ広告費を10~20%削減するとしている。Baynes氏はまた、スペシャルKブランドのみならず、ケロッグ社の事業全体に同様の施策を適用していくとも述べている。効果測定をどのように行ったのかは明らかにされていない。

ケロッグは2007年に10億ドルという同社史上最大の広告予算を投じた。今年はさらに、3億ドル上乗せする計画だ。同社は、ダイエットを目指す人は、朝食に加えて昼食か夕食をスペシャルKに切り替えれば、2週間で洋服サイズを落とすことができるというキャンペーンを展開してきた。スペシャルKのウエブサイトでは、消費者のための減量プラン、YahooのEメール・グループに参加するためのサインアップ画面、トレーナーや栄養士による記事、Amazonの購入窓口へのリンクなどが用意されている。こうしたプロモーションの結果、朝食以外のシリアル食品の消費を拡大することができたとCEOのDavid Mackay氏は語っている。

ケロッグは景気後退期にもかかわらず広告費を拡大してきた。「過去5年、広告費を増大させているのは、当社がこのカテゴリーの成長を信じ注力していることの証だ。そして、広告のパワーは成長モデルに欠かすことのできないものだ」とBaynes氏は言う。しかし、だからこそ広告効果が問われる。Baynes氏が打ち出している広告投資効果改善策は以下のとおり。

■事業部や国単位ではなく、ブランド横断的にマーケティング効果の測定を行う。
■ブランド横断的に戦略的な連携を進めることにより、TVコマーシャル制作本数を減らす。
■ROIモデルと効果測定を活用する。
■広告テストの手順を含め、プロモーション方法の意思決定プロセスのための“ベスト・プラクティス“の標準化を進める。
■オンラインでの取り組みを強化する。
■コマーシャルの撮りだめ:一度に5本のコマーシャルを同時に制作する。
■広告エージェンシーの報酬モデルを新たにし、エージェンシーコストを削減する。
■購買ポイントにおいて消費者がどのような付加価値を求めているのかを見直す。

◆情報ソース(ソースはすべてAdvertising Age)
Food Companies Stay the Course
Kellogg: Digital ROI Surpasses That of TV
Kellogg Says ROI on Digital Trounces TV by 'Factor of 2'



ウォール・ストリート・ジャーナルの富裕層向けサプルメント

WSJ magazine

だいぶ以前から話題になっていたウォール・ストリート・ジャーナルのサプルメント誌(原文では “magazine”となっているが、市販されず新聞とともに宅配されるのでこう表記する)が明日(6日)、ついにデビューする。誌名は『WSJ.』で、ラグジュアリー・ライフスタイル・マガジンと形容されている。

新聞の豪華サプルメントというと、ニューヨーク・タイムズの『T franchise』の評判が芳しくなかった上に、いま米国の新聞業界は業績不振で「この世の終わりのような不安感」に包まれているというが、ウォール・ストリート・ジャーナルはそういうものとは無縁だと、編集者は自信満々だ。

この第1号には、時の人サラ・ペイリン・アラスカ州知事(共和党副大統領候補)のインタビューが掲載される。まさにドンピシャのタイミングだが、話題はもっぱら彼女の体作り(というかダイエット)に関することらしい。『WSJ.』のウエブサイトにその抜粋が掲載されている。

一部の地域で、正式な発行日を待たずに、しかもニューヨーク・タイムズのサプルメントとして配布されてしまうというハプニングもあったらしいが、『WSJ.』は全米17のトップ・マーケットのウォール・ストリート・ジャーナル購読者80万世帯と、アジア、ヨーロッパの16万世帯に配布される。当面は年4回で、来年からは毎月発行される予定。創刊号には51社が広告を掲載しており、そのうち19社はウォール・ストリート・ジャーナルにとって初の広告主であるとのこと。

◆情報ソース
No Angst or Shame in 'WSJ' Magazine Debut (Portfolio.com)
Whoops! 'WSJ' Magazine in Debut Snafu (Portfolio.com)
How 'WSJ.' Lucked Out with Sarah Palin (Portfolio.com)



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