A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2008年11月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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ディスプレイ広告の終わりが近い?

不況が深刻化すると、広告主企業の宣伝担当者はますます厳しく予算を精査する必要に迫られる。そのために、オンライン・ディスプレイ広告が存続の可否を問われる危機に直面しているという。

ネット上のブランド広告はこれまで、パフォーマンス・ベースの広告に比べると、ROI(Return on Investment: 対投資費用効果)を問われることがなかった。効果測定を行うにしても、パフォーマンス・ベースの広告と同じくクリックやコンバージョンといった指標が用いられ(売り上げやトラフィック誘導に直接結び付く、直前のクリックだけを重視するのが通例となっている)、ブランディングのためのインパクトを計測する指標は確立されてこなかった。また、ウエブ上のディスプレイ広告は、それがバナー広告であれ大型のリッチメディア広告であれ、味気なくインパクトに欠けると感じている広告主は少なくない。そのために、広告予算が削減されると、ディスプレイ広告が真っ先にその対象となることが多かった。

オンライン広告が急速に広がりを見せ、ネットに進出する伝統的ブランドも増えてきたいま、ディスプレイ広告売上への依存度を高めているサイト運営企業やエージェンシーは、ディスプレイ広告にも投資価値があることを証明しなくてはならない立場に追い込まれている。

そこで注目を集めているのが、今年2月、マイクロソフトが発表した「Engagement Mapping」と呼ばれる新手法だ。この新手法では、直前の1クリックだけではなく、そこに至るまでにアクセスを促したすべてのキャンペーンの効果を評価できるよう、消費者が取った複数の行動を追跡できるという。マイクロソフト傘下の広告配信企業アトラス社(Atlas Institute)によると、経済情勢が悪化するに従い、「Engagement Mapping」に基づいた新ソリューションを利用する企業が増えているという。同社は既存データにユーザーのデモグラフィック・データを重ね合わせることで、どの広告が見られたかに加えて、どんな人が見たかも明らかにする予定だ。

ネット視聴率調査会社のコムスコア(comScore)も、クリック・スルーだけでなくビュー・スルー(広告が見られたか否か)を測定するサービスを発表した。このサービス、Brand Metrixは、広範囲な産業の200近いのブランドのインパクトを計測し、それをデータベース化したもので、広告キャンペーンによるブランド認知、ブランドに対する態度、購入意向などの変化や、実際に購買行動にむすびついたかまで知ることができる。具体的には、コムスコアがパネルを抱え、特定の広告に接触した人としなかった人の態度や行動の比較により効果を見るという。

しかし当然のことながら、ブランディングはネットだけで完結するものではない。確かにネットは、トラッカビリティ(消費者の行動追跡性)においては他のメディアよりも優れており計測も容易だが、例えばたまたま目にした駅貼りポスターや雑誌広告がネットでの検索行動を促し、それが購買につながるようなケースもあるわけで、その意味では既存メディアも、投資価値があることを証明する必要に迫られている点ではディスプレイ広告と同じだ。

◆情報ソース
Is the End Near for Display Ads? (Mediaweek)
comScore press release





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雑誌保証部数 減らすか増やすか

当ブログで何回か書いているように、米国の雑誌出版社はレートベース(広告料金の基礎となる保証部数)を設定し、実売部数(ABCによる査定部数)がレートベースを下回った場合、広告料金のディスカウントやフリースペースの提供によって広告主に穴埋めをするのが慣習となっている。実売部数が大幅に下がった場合、翌年度のレートベースを引き下げることもある。では、同時に広告料金の値下げも行うかというと、必ずしもそうではない。長年レートベースの改訂を行わず、広告料金だけを変更している雑誌もある。そもそも、広告料金はエージェンシーや広告主との交渉によって決められるケースがほとんどで、広告料金をはじめとする取引条件は広告主によって異なる(だから料金の透明化を求める声も出てくるのだが)。その意味で、レートベースは広告掲載の条件を決める上でのひとつの目安と考えた方が良いだろう。

とはいえ、実売部数、あるいはレートベースが下がれば、広告掲載条件を決める上で不利になるのはまちがいない。雑誌出版社が部数を維持・拡大するために、予約購読料金を大幅にディスカウントしたり、美容室、病院、空港の待合室などの公共の場所に格安の売値で、あるいは無料で雑誌をばらまいたりするのはそのためだ(こうして配布された雑誌もABCの実売部数としてカウントされる)。一方で、部数を維持するには、紙・印刷代や配送費用などのコストがかかる。格安・無料で流通する雑誌が増えればそれだけ、出版社の財政を圧迫することになる。

ボニエル社(Bonner Corporation)は来年2月から、『アウトドア・ライフ(Outdoor Life)』誌の保証部数を13.5%引き下げると発表した。部数維持のために費やしていた費用を、誌面やウエブサイトの改良、広告主へのサービスなどに振り分けるためだ。ボニエル社によると、同誌の部数の10%は予約購読を継続しない、熱心でない読者=広告主にとっても見込みのない読者に読まれているという。つまり、部数が下がっても広告媒体としての価値は維持できるという理屈だが、同社にはこれから、読者の質の高さを証明し、広告主に納得してもらうという大仕事が残されている。

Details magazine

逆にレートベースを増やす雑誌もある。コンデナスト社(Condé Nast)は来年から、男性誌『ディテールズ(DETAILS)』のレートベースを425,000部から450,000部に引き上げる。同誌の実売部数は458,000部を維持しており、3万部を超すボーナス・サーキュレーションを提供してきたとのこと。ディズニー・パブリッシング(Disney Publishing)も子育て誌『ファミリー・ファン(Family Fun)』のレートベースを、5%増の210万部とする。同誌の部数は来年も成長が見込まれるため、不況期にあるいまこそ広告セールスのシェアを拡大し、景気回復期までに確固たるポジションを確立するのが狙いだと、同社のヴァイス・プレジデント、Aparna Pandeは説明している。

◆情報ソース
Magazines Weigh How to Manage Circulation (Advertising Age)




新聞業界は破たん寸前の危機と米新聞協会

去る11月13日、米国新聞協会(American Press Institute: API)会員社による非公式なトップ会合が行われ、米国の新聞業界は破たん寸前の危機的状況に瀕しており、おそらく外部の助けなしには状況の悪化に歯止めをかけることはできないと結論付けた。(出席者のリストはここに掲載されている。)

米国の新聞は実売部数の減少が加速している。ABC(Audit Bureau of Circulations)によると、査定対象となっている500強の新聞の今年3~9月の部数は平均して、昨年同期比で平日版が4.6%減、日曜版が4.8%減だった。大手新聞でかろうじて部数を維持したのはUSA TodayとThe Wall Street Journalだけで、10万部以上を発行するおよそ100の新聞の中で部数を伸ばした新聞はひとつもなかった。

米国の新聞は業績の悪化をコスト削減で補うため、人員の削減に加え、判型を小さくしたりページ数を減らすなどの手を打ってきたが、これがさらに読者離れを招くという負のスパイラルに陥っている。

広告売上の下落はさらに深刻だ。今年第2四半期の広告売上は対前年同期比16%減で、9四半期連続の減少となった。オンライン広告の売上もプリント版の落ち込みを補うにはほど遠く、それどころか今年第2四半期はついに前年割れとなった。

上記の新聞協会のサミットでは、事業再生のスペシャリストといわれるノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院のジェームス・シェイン(James Shein)教授を招いてのセッションも行われた。シェイン教授は、新聞は現在、「破たん」の手前の「危機」の段階にあると述べた。このセッションには、経営破たんした自動車部品メーカー、デルファイ社(Delphi Corp.)のスティーブ・ミラー(Steve Miller)会長も招かれた。ミラー会長は自身の経験に照らして、「人員削減でコストは減らせるが即効性はなく、製品の品質低下を招く」と助言を行った。また、シェイン教授とミラー会長は、起業家になったつもりで行動せよ、POI(ポートフォリオ・オブ・イニシアティブ)を作成せよ等の提言もした。

なお、サミット参加者たちは半年以内に再度、会合を開くことで合意したとのこと。

◆情報ソース
API Summit Concludes: Industry in 'Crisis,' Needs Outside Help (Editor & Publisher)
Newspaper Circulation Continues to Decline Rapidly (The New York Times)
Negative Momentum: Newspaper Ad Revenues Gaining Downhill Speed (Even Online Is Declining) (TechCrunch)



メディア企業の新たな役割

アドバタイジング・エイジ(Advertising Age)の記事によると、今月初旬、プロクター&ギャンブル(Procter & Gamble Co.)がシンシナティで開催した「サプライヤー・サミット」では、多くのサプライヤーに加えて40のメディア企業が招かれていた。このサミットで、同社の最高経営責任者、A.G. ラフレイ(Lafley)氏はメディア企業を含む参加者に、「アイデアをください。採用のあかつきには、お返しをしますから」と呼びかけたという。

同社がサプライヤーだけでなくメディア企業をも、新製品開発やそれらの製品を市場に送り出すためのアイデアを求めるパートナーと位置づけたことは驚くべきことではない。すでに、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)、キンバリークラーク(Kimberly-Clark)、クロロックス(Clorox Co.)、ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)、ベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)などの企業は、メディア企業を、消費者への単なる橋渡し役でなく、消費者に到達するための計画を共に開発するパートナーと位置付けて様々な試みを行っている。たとえばキンバリークラークは2年以上前、担当エージェンシーであるマインドシェアとメディア企業を一堂に会し、Vivaブランドのペーパータオルの販促案を話し合った。

去る10月、オーランド(フロリダ州)で開催された全米広告主協会(Association of National Advertisers: ANA)の年次総会では、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)によるラウンドテーブル・ミーティングの席上、エージェンシーに対する不満の声が出され、メディア企業を、エージェンシーと並ぶ―あるいはエージェンシーに優先する―戦略的パートナーと位置づける考え方に話題が集まった。

アドバタイジング・エイジの取材に対して、ヒューレット・パッカードのマーケティング担当バイス・プレジデント、ゲイリー・エリオット(Gary Elliott)氏は、「広告主はメディア企業をマーケターと同じように位置づけ、彼らが何をする必要があり、どんなサービスを提供すべきか、どのように効果的に提供できるかを明らかにするべきだ」と語り、ベリゾン・コミュニケーションズのマーケティングおよびデジタルメディア担当バイス・プレジデントのジョン・ハロビン(John Harrobin)氏は、「そのような関係づくりは広告主企業にとって、例外的なことではなく当たり前のことになりつつある」と述べている。

メディア企業がメディア・エージェンシーやクリエイティブ・エージェンシーなどに取って替わる存在になりえるかどうかの議論はさておき、ビジネス系サイトJackMyers.comを主宰するジャック・マイヤーズ(Jack Myers)氏は、こうした広告主側からの要請からさらに一歩踏み込んで、メディア企業は広告依存型のビジネス・モデルを脱皮すべきだと提言している。

マイヤーズ氏の提言の要旨は、以下のとおり。 

■ メディア企業は歴史的に、広告主や広告会社からマーケティング・パートナーとしては見られず、特定のオーディエンスにできるかぎり安価にメッセージを送り届けるために設計された商品として認識されてきた。また、メディア企業の営業担当たちは、クライアントのマーケティング上のニーズを満たすための、新しくクリエイティブな手段を開発する必要に迫られることがなかった。今後従来型のメディア企業が生き残っていくには、このパラダイムを転換し、現在の広告中毒状態から脱するべきだ。

■ そのためにメディア企業は、いまの事業を見直し、ブランド拡張性のある資産や潜在的な成長力のある資産に力を注ぎ、他との差別化が困難で市場の需給変動に左右されるような資産は切り捨てるべきだ。例えばテレビ局は、自社の番組に長期的なブランド力があるかを、視聴率ではなく新たな売上を生み出す可能性があるかどうかの視点から見直すべきだ。雑誌、新聞、ラジオも同様に、人材も含めた資産の見直しを行うべきである。

■ 見直しを行う際には、それぞれの資産が、イベント、セールス・プロモーション、データベース・マーケティング、コーズ・リレイテッド・マーケティング、ロング・テール型販売など、“below-the-line”の(マスメディア以外の)マーケティング・コミュニケーション予算を原資とする売上獲得に結び付くかを判断基準にする。(広告主のマーケティング予算の70~75%は、“below-the-line”のマーケティング・コミュニケーションのためのものである。)

■ すでに無駄のないところをさらに削ったり、ビジネス・モデルをいかに再構築するかの戦略的なビジョンなしにレイオフを進めてはならない。また、ブーズ・アンド・カンパニー(Booz & Co.)、マッキンゼー(McKinsey)、ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)などの伝統的なコンサルティング企業は、昔ながらのハーバード・ビジネス・レビュー的なケーススタディにとらわれ、メディア業界の現状については時代遅れの認識しかもっていないといってよい。したがって、顧客となるメディア企業に脱旧来型のビジョンを提供することはできない。

『ハフィングトン・ポスト』(The Huffington Post)に投稿されたこの記事は、どうもマイヤーズ氏のビジネスのPR的な色彩が濃く、具体性に乏しいのでどうかと思うが、広告主からマーケティング・パートナーとして機能してほしいという期待が寄せられているのは事実なので、ここで言われている新しいビジネス・モデルの構築を研究する価値はあるはずだ。ただし、広告主がメディアを評価するのは、消費者(読者や視聴者)と良好な関係を築いているからだということを忘れてはならない。

◆情報ソース
The Newest Ad Agencies: Major Media Companies (Advertising Age)
Media's Advertising Addiction Leaves Billions on the Table (The Huffington Post)

リーバイ・ストラウス社が広告料金の透明化を要求

リーバイ・ストラウス社(Levi Strauss & Co.)が自社ブランドであるリーバイス(Levi’s)とドッカーズ(Dockers)の宣伝(予算5,000万ドル)のメディア・プラニングとバイイングを任せるエージェンシーを決めるためコンペを行ったが、そのために同社が用意したRFP(Request for Proposal: 提案依頼書)の内容が物議を醸している。

このRFPの「媒体効果評価(Media Efficiency Review)」の項目で、同社はコンペ参加エージェンシーに、“広告効果データの有効性を実証するために、他の広告主への請求金額と、エージェンシーのデータベースにより測定された広告ごとのターゲット・オーディエンスのインプレッション数を開示する”ことを求めたのだ。RFPの内容はリーバイス・ストラウス社が起案し、エージェンシー評価を手伝うアドバンテージ・メディア社(Advantage Media)が作成した。

上記の要求に付け加えて、リーバイ・ストラウス社は、広告主を特定できるような情報を求めるものではない、と記しているが、広告効果分析を行うには、例えばテレビ広告ではCM放映日時、番組名、請求額を明らかにしなくてはならず、それさえわかれば広告主を特定するのは難しいことではないと、多くの業界関係者が指摘している。

このリーバイ・ストラウス社の要求を、『アドバタイジング・エイジ』誌(Advertising Age)は、「常軌を逸した物騒な要求」と書き、エージェンシー側の反対意見を紹介している。エージェンシーが反対する根拠は、広告主との守秘義務に反する行為だからというものだ。

結局、このコンペで勝ち、アカウントを獲得したのはオムニコム・グループ(Omnicom Group)のOMDだったが、同社がRFPの内容に応じて要求された情報を開示したのか否かはわからない。同社も、最後までコンペを争ったゼニス社(Zenith)やドッカーズ・ブランドの現担当エージェンシーであるインターパブリック・グループ(Interpublic Group)のコーズ・イニシアティブ社(Cos.’ Initiative)も、RFPの内容については口をつぐんでいる。確かなのは、広告料金の設定は、明らかに広告主ごとに異なっているということだ。
エージェンシー側は「ベストプラクティス」を強調するが、それが果たして本当にベストプラクティスなのかどうかは、広告主側は知ることができない。

こうした広告料金の不透明性を、元Adweek編集主幹のジム・エドワーズ(Jim Edwards)がビジネス系ウエブサイト『BNET』上で批判している。

エドワーズ氏によると、例えば乗用車を購入するとき、ディーラーの営業マンから料金の提示があったら、それが他の人への提示価格と比べて安いのか、あるいは他のディーラーと比べてお得なのかを気にしない人はいないだろうというのだ。広告業界で同じことをやろうとすると非難されるのは、エドワーズ氏によると、広告主への守秘義務などではなく、ひとたび料金が透明化されると競争原理が働き確実に低料金化につながるからだという。実際に、そのためなら自社の契約広告料金を公開してもかまわないという広告主もいるのだ。

『アドバタイジング・エイジ』は、いまの不況下では広告主が広告料金に過敏になるのは仕方がないという、あるエージェンシー幹部の声を紹介して記事を締めくくっているが、広告主がROI(Return on Investment: 広告の対費用効果)を重視し、広告会社や媒体社に透明化を求める流れは、例え景気が回復しても衰えないのではないかと思われる。オンライン広告が売上を伸ばしている要因のひとつは、その対費用効果の透明性にあるのだから。

◆情報ソース
Levi's Review Asks Shops to Reveal Sensitive Price Data for Other Clients (Advertising Age)
Levi’s Asks for Transparency and Media Buyers Balk (BNET)




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