A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2009年01月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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雑誌の表紙は広告スペースではない と言い切れるか

いま発売中の米『エスクァイア(Esquire)』2月号は、あろうことかオバマ大統領のイラストの顔の部分が切り抜きの扉になっており、開くと掲載記事の引用と並んで、ディスカバリー・チャンネル(Discovery Channel)の新番組、「One Way Out」の広告が現れる仕組みになっている。このスペシャル・ユニットのお値段は、製作費と本文1ページ広告の掲載料と合わせて25万ドル。同誌は6月号でも、表紙にプルタブのついた広告(広告主はBMW)を予定しているとのこと。

Esquire window cover

広告不況の中、斬新なアイデアで売り上げを確保しようとする努力の見本のような広告だが、これにコンデナスト社の『ポートフォリオ(Portfolio)』誌が疑問を呈している。米雑誌編集者協会(American Society of Magazine Editors: ASME)の定めるガイドラインに抵触しているのではないかというのだ。

米国の雑誌業界では、記事と広告に一線を画すためにガイドラインが設けられている。それは、「広告面と編集面が読者にとってはっきり区別できるようにする」という読者保護と、「編集は広告主の影響や圧力を受けない」という編集の独立性保証の観点から設けられた規定だ。例えば、アドバトリアル(記事形式の広告)では、記事と同じタイポグラフィ(活字)を用いることはできず、広告であることを明示しなくてはならない。表紙についても、「編集スペース」であり広告主は立ち入ることができないと、厳密に規定されている。では、『エスクァイア』は上の広告を掲載するにあたり、事前にASMEの了承を得ていたのか。

この点を『ポートフォリオ』がASMEのシド・ホールト(Sid Holt)会長に確認したところ、答えは「ノー」だった。そして、もし事前に問い合わせがあれば、「この広告はASMEのガイドラインに違反しているとは思わないが、実現すると我々は大変困った立場になる、と答えていただろう」とのこと。

実は、ホールト氏が会長に就任してから、ASMEはガイドラインの見直し作業に着手した。現ガイドラインは、テレビがプロダクトプレースメント広告で売上を上げているいまの時代にそぐわなくなっているのではないか、という会員社の声が大きくなってきたからだ。確かに、厳格なガイドラインは広告営業の面では足かせになっている。しかも、見直しを求めているのは広告担当者だけではない。『アドバタイジング・エイジ』の取材に応えて、「ASMEなどくそくらえ。読者にとっておもしろければ、何だっていいだろう」と主張している編集者も、一部ではあるにしてもいるのだ。

もともと、ASMEのガイドラインはあまり強力な強制力を発揮してはこなかった。2003年には、ファッション・ブランドのGapのモデルに起用されていたマドンナの写真を、『ハーパース・バザー(Harper’s Bazaar)』誌が表紙に掲載した。問題となったのは、マドンナがGapの服を着ていたばかりでなく、使用された写真がGapの広告のアウトテイクだったことだ。同誌は昨年7月号でも、エスティ・ローダー(Estée Lauder)の新しい香水「センシュアス(Sensuous)」の広告に起用された4人の女性、女優のグウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)、エリザベス・ハーレー(Elizabeth Hurley)、モデルのキャロリン・マーフィー(Carolyn Murphy)、ヒラリー・ローダ(Hilary Rhoda)を表紙に掲げ、記事ページでは40ページを割いて彼女たちを特集した。

Harper's Bazaar Sensuous models cover


『エスクァイア』も昨年2月号で、ビクトリア・シークレット(Victoria’s Secret)のモデル4人をそろって表紙に起用し、そればかりでなく、男性向けの「ランジェリー・ショッピング・ガイド」と銘打って9ページを割いて下着姿の彼女たちの写真入りの記事を掲載した。この記事で取り上げられている女性下着は、すべてビクトリア・シークレットの商品だった。

Esquire Victoria's Secret cover


この『エスクァイア』のケースなどは、あきらかにやりすぎだろう。新香水「センシュアス」のキャラクター4人を特集した『ハーパース・バザー』は、よく売れたそうだ。つまり、読者に支持されたということになるが、それにしても香水のキャンペーンに大きく寄与したのはまちがいない。(この記事の仕掛け人は、エスティ・ローダーのグループ・プレジデント、John Demsey氏だったと、『ポートフォリオ』は暴露している。)余談だが、この2誌の発行元はハースト社(Hearst Communications Inc.)だ。どうもハースト社は、確信犯的にASMEガイドライン破りをやっている節がある。

雑誌業界には、ASMEガイドラインの見直しではなく尊守を主張する声もある。冒頭に紹介した『エスクァイア』の「扉」広告も、ASMEの役員ばかりでなく広く編集者たちの間で論議の的になったという。『エスクァイア』のような有力誌が前例を作ることにより、それが雑誌界全体に波及して倫理が荒廃し、編集者の立場が脅かされることを懸念する関係者もいる。

それでも、ガイドラインはきっと規制緩和の方向に向かうのだろうが、問題はガイドラインの文言をどのように改めるかではない。目先の広告ビジネスが欲しいあまり、読者をないがしろにするようなことを続けていると、読者離れをますます加速させることになる―そのことを心配すべきだろう。読者は、以前よりもはるかに広告(的なもの)に敏感なっている。巧妙に記事を装っても広告の匂いをかぎ分ける臭覚を備えている。インターネットの普及で、業界情報にも通じている。読者はもはや、その昔、ASMEのガイドラインが制定された時代のように、無垢でだまされやすい「保護すべき」存在ではなくなっているのだ。だから、少しでもなめた真似をするとそっぽを向かれる。逆に、読者がおもしろいと感じれば、これ見よがしの広告でも受け入れられるだろう。(その意味で、上の『アドバタイジング・エイジ』の取材に答えた編集者の発言は的を得ている。)読者なしでは広告は成り立たないという当たり前のことを、雑誌出版社も広告主も、最大のガイドラインにすべきだ。

◆情報ソース
Open Here・to Peek at Esquire’s Articles and Ad (New York Times)
Does 'Esquire' Cover Ad Sell Out Everyone Else? (Portfolio)
The Magazine Industry's Crisis of Conscience (Portfolio)
As ASME Fortifies Ad/Edit Divide, Some Mags Flout It (Advertising Age)
Advertising 1, Journalism 0 (Portfolio)
'Esquire's' Not-So-Secret Shame (Portfolio)
A Cover, 40 Pages, 4 Faces and One Perfume (New York Times)



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J.D.パワーのウエブサイト評価調査でホンダが1位に

自動車業界向けのマーケティング・コンサルティング企業の米JDパワー(J.D.Power & Associates)が、自動車メーカーのウエブサイトを新車の購入を考えている消費者がどのように評価しているかを調査し、その結果を発表した。同社は “Manufacturer Web Site Evaluation Study” と題するこの調査を、10年前から年2回、実施している。

この調査で対象となるのは、今後24カ月以内に新車の購入を検討する予定の消費者11,400人以上で、回答者が各社のウエブサイトがどれだけ役に立つかを、見た目、スピード、ナビゲーション、情報/内容を基準に採点したものを、JDパワーが総合点を1000ポイント満点に換算してランキングしている。今回発表されたのは、昨年11月に実施された調査の結果。

最新の調査で、対象となった38サイト中もっとも評価が高かったのはホンダのウエブサイトで、昨年6月に発表された前回調査から14ポイント、総合点を伸ばし882ポイントだった。同社はナビゲーションのしやすさが特に高く評価された。2位はポルシェ(867ポイント)で、三菱自動車(866ポイント)、韓国の紀亜(865ポイント)、アキュラ(Acura: ホンダの高級ライン/862ポイント)が続く。今回の調査では、全サイトの平均ポイントが前回調査よりも9ポイント落ち、2桁代の下落となったサイトが16あった。これは、10年前に調査を開始して以来、最大の落ち幅だという。

JDパワーのリサーチ・マネジャー、スコット・ケイン(Scott Kane)氏は、この下落の原因を、景気の後退で消費者は財布のひもが固くなっており、これまでよりも慎重に車選びをしようとしているのに対し、各社のサイトは予算引き締めの影響で、それに見合った水準を満たせなくなっているためと分析している。「購入金額の計算機能など車の比較を行うためのツールは最重要ではないものの重要性は増しており、ないがしろにすると評価を下げることになる」とケイン氏は述べている。また、車のイメージを写真や動画で見せる多彩さにおいても、各社のサイトは後退しているという。とはいっても、トヨタのサイオン(Scion)のサイトは動画を多用しすぎたために、スピードの面で大きく評価を下げることになった。しかも同ブランドは、ターゲットであるY世代(Generation Y: 1980年以降に生まれた若年層)による評価が、全世代平均を下回った。「動画を使ったブランディングは大切だが、やりすぎは禁物」とケイン氏は指摘している。
※全サイトのランキングは、ここからダウンロードできるPDFファイルで見ることができる。

◆情報ソース
Honda's Web Site No. 1 Based On Usefulness (MediaPost)
J.D.Power Press Release




グーグルが新聞広告サービスを打ち切り

オバマ新大統領の就任式でアメリカ中が沸き立っていた20日、新聞業界にとっては残念な発表がなされた。グーグルが、新聞広告の仲介サービス「Google Print Ads」を打ち切ることになったのだ。

同サービスのディレクター、スペンサー・スピネル(Spencer Spinnell)氏はGoogle Blogで、「我々はPrint Adsが新聞社に新たな収益源をもたらし、消費者にとってよりかかわりの深い広告を提供できることを期待していたが、我々、およびパートナーが望むようなインパクトを生み出すことはできなかった」と述べている。

グーグルはもともと2005年に、雑誌向けに同サービスを試験運用したが、2006年に新聞向けに切り替え、800以上の新聞がこのネットワークに参加した。新聞社もこのサービスにより、以前は新聞に広告を出稿しなかった広告主のビジネスを獲得できることに期待を表明していた。なのになぜ、Print Adsは打ち切られることになったのか。

グーグルはその理由を詳しく説明していないが、クリックとコンバージョンで投資効果を測ることに慣れた広告主にとって、効果測定の難しい新聞広告は魅力がなく思うように広告が集まらなかったからではないかと、アドバタイジング・エイジは分析している。同じオフラインメディアでも、ラジオとテレビ向けの仲介サービス、Google AudioとGoogle TV Adsは継続される。それは、この2つのメディアのデジタル化が進んでいるからではないかというのだ。

グーグルはここのところ、非広告分野の収益化に力を注ぎ、ボトムラインの改善に寄与しない事業の切り捨てを進めてきた。同社は新聞社の救済策は模索し続けると述べているが、それが実現されるとすれば、ヤフーが2年前から取り組んでいるアドバタイジング・コンソーシアムのように、紙ではなくオンラインを対象としたものになるだろう。

◆情報ソース
Google Halts Print Ads Program (Advertising Age)
Cost-cutting Google scraps newspaper ad program (YAHOO! TECH)



悪戦苦闘が続く出版界で創刊誌

米国では年が明けても、レイオフを実施する出版社が後を絶たない。

メレディスとフォーブスに続いて、『フード・アンド・ワイン(Food & Wine)』、『トラベル・アンド・レジャー(Travel & Leisure)』などを発行するアメリカン・エクスプレス・パブリッシング(American Express Publishing)が33名のレイオフを発表した。親会社のアメリカン・エクスプレス社が昨年、全従業員の10%にあたるおよそ7000名の人員削減を発表しており、その流れを受けたもの。同社は昨年10月にも22名のレイオフを行っている。

ニューヨーク・マガジン(New York Magazine)はレイオフではなく、賃下げによるコスト削減を選んだようだ。編集主幹のアン・クラーク(Ann Clarke)がスタッフライターを個別に呼び出し、交渉を行っているという。

このように逆風が吹く中、新雑誌を創刊した出版社もある。ソブリン・ホームステッド・パブリッシング(Sovereign/Homestead Publishing)という出版社で、創刊するのはエコロジカルな美容製品を求める女性のための『オーガニック・ビューティ(Organic Beauty)』という隔月刊誌だ。編集長は『ニューヨーク・マガジン』の美容エディターや『エル(ELLE)』のエディトリアル・ディレクターを歴任してきたローナ・バーグ(Rona Berg)。発行人のダイアン・ヒンツ(Diane Hintz)によると、ナチュラル/オーガニックな美容製品の情報はあちこちのサイトや雑誌で紹介されているが、一冊の雑誌にまとめたものはこれまでなかったという。

Organic Beauty

市場調査会社ミンテル(Mintel International)によると、米国のナチュラルなパーソナル・ケア製品の市場は、2003年の814品目から2008年の6,566品目へと急拡大し、4億6,500万ドルの規模になっている。とはいっても、拡大率は2007年の15.2%から2009年は11.8%へと鈍化すると予測されている。(この不況時に2ケタ代の伸びが期待されているのだから有望市場には間違いないが。)

エコ系の雑誌もこれまであまりぱっとしなかった。最近ではナショナル・ジオグラフィック(National Geographic)の『グリーン・ガイド(Green Guide)』が廃刊になったし、ロデール社(Rodale)の『オーガニック・スタイル(Organic Style)』も2005年に、創刊から4年で幕を閉じた。この点について、新雑誌の発行人ヒンツ氏は、「オーガニック・スタイルは時代を先取りしすぎたし、オーガニックなライフスタイル全般をテーマにした点も失敗だった。その点、当社の雑誌は美容に絞り込んでいるからきっと成功する。他社が雑誌を創刊しないいまこそ好機だ」と強気だ。

◆情報ソース
American Express Publishing Lays Off 33 (Advertising Age)
New York Mag to Writers: You’re Keeping Your Jobs, Getting a Pay Cut (All Things Digital.)
'Organic Beauty' Sees a Niche Others Left (Advertising Age)
Organic Beauty web site



広告減に取次手数料の値上げ:弱り目に祟り目の雑誌業界

米国PIB(Publishers Information Bureau)によると、雑誌の広告集稿ページ数は、第4四半期で前年比17.1%減、通年では11.7%減で、ネット・バブルの弾けた2001年の落ち幅(11.67%)を上回った。落ち幅ではなく総広告ページ数で比較すると、2001年は237,612ページ、2008年は220,812ページで、7%悪化している。

カテゴリー別に見ると、すべてのカテゴリーが対前年比マイナスとなっている。もっとも落ち幅の大きかったのが自動車関連(automotive)で、ページ数(通年)で24.3%減、金額で20.5%減だった。このカテゴリーは、2005年にページ数で前年比7.1%減、同じく2006年に13.8%減、2007年に6.3%減と、年々広告が減っている。その次に落ち幅の大きかったのは金融・保険・不動産関連(financial, insurance and real estate)で、ページ数で17.3%減、金額で11.0%減だった。

このように広告の落ち込みに加え販売の不振にも苦しんでいる出版社に、新たな問題が突きつけられている。雑誌の小売店への配送を請け負う取次企業の大手、アンダーソン・ニュース(Anderson News)社が、取次手数料を雑誌一部あたり7セント値上げし、これに応じない出版社の配送は行わないと発表したのだ。

この値上げにより、たとえばピープル(People)誌だけでも、年間1500万ドルのコスト増になると見積もられている。

加えて、ウォルマート(Wall-Mart)のようなscan-based tracking(日本のPOSのようなシステム)を採用する大手小売店は、日本の委託販売制と同じく、scanを通した実売分のみ支払いを行って売れ残りは返品しており、これまで返品にかかわるコストは取次企業が負担してきたが、アンダーソン・ニュース社はこのコスト(年間7000万ドルにおよぶ)も出版社が負担するよう求めている。

アンダーソン・ニュース社は全米の主要雑誌の20~25%を扱う最大手。同社によると、米国の雑誌取次会社の4分の3は赤字を抱えており、今の条件のまま取引を続けることは無意味だという。これに対して、ハースト(Hearst Corp.)とコンデナスト(Condé Nast)が所有する取次大手のComag社は、いずれアンダーソン・ニュース社は撤退し、競合他社がシェアを奪うことになるだろうとの見方を示している。

◆情報ソース
For Magazines, 2008 Was Even Worse Than 2001 (Advertising Age)
PIB Revenue and Pages by Magazine Titles (MPA)
PIB Revenue and Pages by Ad Category (MPA)
PUBLISHERS WEAKLY: MAJOR WHOLESALER WANTS MILLIONS MORE IN FEES (New York Post)



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