A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2009年02月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

コンテンツ有料化は新聞を救うか

新聞業界に吹き荒れる冬の嵐は収まりそうにない。

先週21日、『ニュー・ヘイヴン・レジスター』(New Haven Register)などを発行するジャーナル・レジスター(Journal Register Co.)が、破産法11条の適用を申請した。23日には、180年の歴史を持つ地方紙『フィラデルフィア・インクワイアラー』(The Philadelphia Inquirer)などを発行するフィラデルフィア・ニュースペーパーズ(Philadelphia Newspapers LLC)も破産法の適用を申請した。

ジャーナル・レジスターの負債総額はおよそ7億ドル。同社は昨年、債務不履行に陥り、コネチカット、ペンシルバニア等で発行していた数多くの週刊新聞を廃刊した。負債の多くは90年~2000年代に、次々とこれらの新聞を買収した際に生まれたものだった。

Philadelphia Inqurer

フィラデルフィア・ニュースペーパーズは、まもなく期限が訪れる負債3億9千万ドルの支払いができなくなった。この負債のほとんどは、現CEOのブライアン・ティアニー(Brian Tierney)氏が2006年に、『インクワイアラー』紙と『フィラデルフィア・デイリー・ニューズ』(The Philadelphia Daily News)をマクラッチー社(McClatchy)から買収した際の借入金5億6千万ドルの一部だ。ティアニー氏によると本業の経営は健全で利益も出しているため、新聞の発行は続けながら経営再建を目指すという。

ハースト(Hearst Corp.)も24日、同社傘下のハースト・ニュースペーパーズ(Hearst Newspapers)が発行する、144年の歴史を持つ『サンフランシスコ・クロニクル』(The San Francisco Chronicle)を、短期間に大がかりな経費節減ができなければ売却か廃刊すると発表した。

新聞社が危機に瀕しているのは米国だけではない。英国でも新聞社の広告売上は昨年、対前年比11.68%の落ち込みを見せた。英国最古のタブロイド紙『デイリー・メール』を発行するデイリー・メール&ジェネラル・トラスト社(Daily Mail & General Trust)の今年1月の広告売上は、全国紙で23%、地方紙で40%も下降した。フランスでも今年1月、サルコジ大統領が18歳になった若者に日刊紙を1年間無料で提供すると発表したが、これは活字メディアの支援策の一環だ。

こうした中、2月18日のエントリーで紹介したタイム誌の記事は大きな反響を呼び、活字メディア(特に新聞)はオンラインで救済できるかをめぐり、当の新聞を中心に多くの意見や提言が寄せられている。アドバタイジング・エイジ(Advertising Age)の記事によると、それらの見解を大別すると、ユーザーはコンテンツ課金を受け入れるというもの(課金肯定派)と受け入れないというもの(課金否定派)に分けられるようだ。

TIME save newspaper

MSNBC.comの社長チャーリー・ティリンガスト(Charlie Tillinghast)氏や、ニューヨーク・デイリー・ニュース(New York Daily News)の発行人でUSニュース&ワールド・リポート(US News & World Report)の編集長でもあるモート・ザッカーマン(Mort Zuckerman)氏は否定派だ。

肯定派は有料サイトの成功例としてウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)やフィナンシャル・タイムズ(the Financial Times)を挙げるが、読者の多くが仕事上の必要から呼んでいるこれらの新聞以外に、有料化に成功している新聞サイトはないに等しい。肯定派はまた、ニュースに対する需要はいま、これまでにないほど高まっていると言う。確かに、米国の新聞サイトのトラフィックは昨年、12%伸びたし、MSNBC.comの今年1月のユニーク・ビジター数は、4,500万に達した。

しかし、需要の高いスポーツ、ビジネス、国内・国際ニュースといったカテゴリーは、どこのサイトでもニュースを掲載しており、有料化するために質の面で差別化するのは至難の業だ。ウォール・ストリート・ジャーナルの編集長、ロバート・トムソン(Robert Thomson)氏は、「グーグルは人々をコンテンツに誘導するが、その質の違いを見分ける役には立たない。しかしコンテンツを有料化するとなると、読者に質の違いを判断してもらわなくてはならない」と述べている。

こうして見ると、コンテンツの有料化は極めて難しいように思えるのだが、先のタイム誌の記事を寄稿した、同誌の元編集主幹ウォルター・イザクソン(Walter Isaacson)氏はどう考えているのだろう。彼のインタビューが、アドバタイジング・エイジに載っていた。その一部を要約する。

Ad Age(以下AA) 本質的な問題は、新聞がかつての独占的な地位を失ったことにあるように思える。新聞と同様のコンテンツを提供するソースがいまのように数多くある時代に、どうしたら課金できると思うか。

Isaacson氏(以下WI) APやロイターで同じようなことを伝えている記事が読めるなら、ワシントン・ポストの記事にお金を払わない人はたくさんいるだろう。しかし、私が言っているのは高額な課金のことではない。数十セントか1ドル程度であれば、ワシントン・ポストの記事やニューヨーク・タイムズの記者イーサン・ブロナーのガザのレポートを読むために、私はまちがいなく支払う。

今回、問題提起をしたのは、新聞社のいまのウエブ広告売上は、おそらくウエブ運営をするにも足らぬほどのものだからだ。広告売上が毎年拡大し続けるなら、こんな議論をする必要はない。

私は、タイム社のサイト(Pathfinder:同社発行雑誌のサイトのネットワーク)構築に携わったものとして、罪悪感をもっているんだ。

AA Pathfinderは、有料化を検討したが、結局しなかった。

WI 当時、ウエブ広告は急激な成長を見せ始めたところだった。だから、人がたくさん集まるサイトを作れば、有料化する必要はないだろうと考えた。そのまま推移していれば、素晴らしいビジネスモデルになっただろう。私はいまでも読者から売上を得ることに意味があると思っているが、それは哲学的な問題だ。

ところで、いまの議論は旧来型のメディアを救うだけでなく、ニューメディアに収益をもたらすためにもなる。単なるエゴからではなく、コミュニティへの貢献を望み、そのためにブログなどで情報を発信しているような人や、あるいはゲームや動画といった知的資産を作り出している人は、その対価を人々が支払えるシステムがあれば励みになるだろう。



引用しなかったが、イザクソン氏は上のインタビューで、自分の記事をきっかけに多くの意見・提言が寄せられたことを大変心強いと語っている。そのとおりで、ひょっとしたらこうした議論の中から新しい技術やビジネスモデルが生まれるかもしれない。アップルをはじめ、いま世の中を動かしている有力企業やビッグブランドの中には、深刻な不況期に生まれたものが数多くあるのだ。

◆情報ソース
Red Ink: Philly Papers, Journal Register File for Bankruptcy (MediaPost)
'San Francisco Chronicle' May Be Sold, Shut Down (Editor & Publisher)
U.K. Magazine Circulation Up, While Papers Struggle (Advertising Age)
Wanted: Online Payment Plan for Print (Advertising Age)
Making the Case for Micropayments in News (Advertising Age)
スポンサーサイト

難しいからとウエブ解析を実施していない企業が過半数

米国のウエブ解析プラットフォームのプロバイダー、Alterianが、北米と英国の広告主、広告会社、マーケティング・サービス企業、システム・インテグレーター企業の担当者1545名を対象に行った調査によると、オンラインで行ったキャンペーンの効果を測定するために、ウエブ解析を行っている企業は全体の半分以下、47%にすぎないことがわかった。また、広告主のおよそ4分の1は、結果分析がキャンペーンのもっとも困難な部分であると答えた。

今年、オンライン・マーケティング予算を増やす予定と答えた企業は62%、昨年並みと答えた企業は26%で、減らすと回答した企業は6%にすぎなかったが、一方でオフラインのダイレクト・マーケティング予算を増やす予定と回答した企業も38%あった。

分析を行うにあたっては、複数の、ほとんど/まったく統合されていないシステムを使用している企業がほとんどであることもわかった。51%の企業は3~4種類のアプリケーションをつかっており、7種類以上のアプリケーションを使っている企業も26%あった。

また、自社のウエブサイトでは最低限のことしかやっておらず、マーケティングの中心的存在にはなっていないと回答した企業が、全体の5分の1あった。調査を主催したAlterianのCEOは、ブランドや企業のサイトは効果的なマーケティング・プログラムの要であることを広告主は忘れてはならない、と語っている。

この調査は同社が6年前から年に一度、行っている。今回の調査は昨年10月1日~12月4日のオンライン調査と、10月と11月に開催された3つのマーケティング・コンファレンスの会場での聞き取り調査を組み合わせて行われた。

◆情報ソース
Frustrated by Difficulty, Half of Marketers Forego Analytics (Marketing Charts)
Fewer Than Half Of Marketers Use Online Metrics (MediaPost)

雑誌協会からの脱退が続く

2月12日のエントリーでアシェット・フィリパッキ・メディア(Hachette Filipacchi Media U.S.)が、米雑誌協会(MPA: Magazine Publisher of America)を脱退したとお伝えしたが、心配されていたとおり、この動きにニューヨーク・マガジン(New York magazine)とアメリカン・メディア(American Media)が追随したとアドバタイジング・エイジ(Advertising Age)が伝えている。理由はアシェットと同じく、不況対策として(というよりも、業績の落ち込みを少しでも軽減するために)、会費の支出を抑えるためだ。

会費がいかほどなのかは協会も会員社も公表していないが、各社の年会費は雑誌の発行部数と広告売上に基づいて算定される。その総額は、アドバタイジング・エイジが入手した2007年の資料によると、合計1,070万ドル近くになるとのこと。現在の会員社数は約240社とのことだから、単純に平均すると一社あたり約44,600ドル(400万円)ということになる。大手の出版社の場合、その負担は何倍にもなるはずだ。

雑誌『ニューヨーク』の脱退は、アシェットの場合同様、MPAにとってショッキングだったはずだと『アドバタイジング・エイジ』は書いている。というのは、同誌は昨年、ナショナル・マガジン・アウォードを1部門で受賞、他の8部門でもファイナリストに残った有力誌だからだ。それだけでなく、2005年以降毎年、同賞の「ジェネラル・エクセレンス(総合部門)」にノミネートされ、2006年と2007年には受賞している。ちなみに、この賞を主催しているのは米雑誌編集者協会(ASME: The American Society of Magazine Editors)で、同協会、MPAいずれの会員であることも、賞にノミネートされる条件にはなっていない。また、両協会は非常に近しい存在ではあるが、MPAを脱退しても、ASMEを自動的に脱退することにはならない。実際、『ニューヨーク』はいまでもASMEの会員のままだ。

アメリカン・メディア社の場合は、やむを得ないという雰囲気のようだ。同社はだいぶ前から経営危機が囁かれており、今月初めには、債権者が連邦破産法第11条(Chapter 11)の適用をまぬがれるために経営の実権を握る事態となった。

MPAの悩みの種は、さらなる追随者が出かねないことだろう。MPAは当ブログでも紹介してきたように媒体としての雑誌の地位向上のために広告キャンペーンを行ったり、媒体評価の新たな指標を提案したり、あるいはロビー活動を展開するなど、雑誌業界の環境改善・地位向上のために様々な活動をしているが、アシェットをはじめとする出版社はそれよりも目前の自社の業績を優先させる決断をした。MPAに限らず、業界団体の役割や存在意義が問われつつある。

◆情報ソース
MPA Loses Two More Members to Recession (Advertising Age)

ELLE好調の立役者、キャロル・スミス語る

このところ販売・広告ともに好調で、昨年、アドバタイジング・エイジの “A-List”にも選ばれた米女性誌『エル(ELLE)』(アシェット・フィリパッキ・メディア/Hachette Filipacchi Media)の発行人、キャロル・スミス(Carol Smith)氏がForbes.comのインタビューに応えて好調の理由や今後の見通しを語っている。スミス氏が発行人になった2002年、『エル』は、広告集稿が前年比18.2%も落ち込んでいたが、それからは6年連続で広告を増やし、多くの雑誌が不調に終わった昨年も前年比5%の成長を達成した。

スミス氏はウォール・ストリート・ジャーナル初の女性広告営業担当としてキャリアをスタートした後、雑誌『ペアレンティング(Parenting)』(当時はタイム社/Time Inc.、現在はボニエル社/Bonnier Corporationが発行)の創刊発行人、業界誌出版社ミラー・パブリッシング(Miller Publishing Corporation)の副社長兼発行人などを歴任した。彼女が発行人に就任した後、『エル』は人気テレビ番組「プロジェクト・ランウェイ(Project Runway)」のオフィシャル・パートナーとなるなど積極的な業績拡大策をとり、いまや『ヴォーグ(Vogue)』の地位を脅かすほどの存在となっている。

以下にインタビューの一部を紹介する。

Q 他の雑誌が業績を落としたり休刊したりする中、『エル』は過去3年間で27%も広告集稿数を伸ばしました。何か他誌と違う方法をとったのですか?

Carol Smith(以下CS) 「プロジェクト・ランウェイ」という大きなリスクを取ったことかしら。『ヴォーグ』が(パートナーになるのを)断ったことは知っていました。(フランスの上司からは)「愚かな」ことをするなと言われましたし。それが最大のリスクでした。

もう一つのリスクは私を採用したことでしょう。私は『ペアレンティング』や『アメリカン・ヘリテージ(American Heritage)』などの雑誌の経験しかなく、ファッション誌のバックグラウンドはありませんでしたから。そんな人間をファッション誌の担当にするなんて、大きなリスクだったと思います。

Q 『エル』の広告は今後も伸び続けると思いますか?

CS いいえ。わかるでしょう。どの媒体が伸びると?伸びる余地なんてありますか?グーグルだって伸びていないのに。しかし、シェアを伸ばすことはできると思います。『ヴォーグ』にはとても近い位置まで来ていますから、その差をさらに縮めることはできるでしょう。

Q その差を縮めるためには何をすべきと?

CS いまの路線を続けることです。『エル』はいまの時代に合った雑誌だと思いますから。他誌がコストを削っても編集への投資を続け、販売部数を伸ばすための投資も続ければ、強力な競合誌も射程距離に入ってくると思います。

Q 『エル』は「プロジェクト・ランウェイ」、「スタイリスタ(Stylista)」、「アグリー・ベティ(Ugly Betty)」などの番組でエンタテインメント業界での存在感を増していますが、そうしたプロジェクトが『エル』の成功にどのように結び付いたと?

CS 「プロジェクト・ランウェイ」がはじまってから、『エル』が話題になることが増えたと思います。人々にとっての『エル』の存在感が大きく変化しました。そして、ポップカルチャーの中心的な存在、ポップカルチャーとファッションをとらえ直す上での中心的な存在になったのです。

タレント・エージェンシーのCAAに、私たちが未経験の世界に踏み込み、正しい決定をするための道案内を頼んだのですが、その結果、「プロジェクト・ランウェイ」は全く予想外の、素晴らしい効果をもたらしてくれました。「スタイリスタ」と「アグリー・ベティ」はその延長線上にあるといって良いでしょう。いまは私たちも、もう少し様子がわかってきましたけど。CAAは、私たちが映画、テレビ、ウエブ、DVDなどとどのようにかかわるべきかを知る手助けをしてくれています。

Q オンラインとプリント版の両方で読者を引き付けるには何が必要だと思いますか?

CS ファッションという、雑誌で光り輝くカテゴリーにかかわれて良かったと思っています。ファッションのページは、オンラインでどれほど素敵に見えたとしても、雑誌にはかないません。ページをめくるたびに、「まあすてき」とため息をもらすような経験ができるのは雑誌だけです。

その意味で、雑誌にとって幸運なカテゴリーに出会えたと思っています。いまの私の課題は、読者にオンラインの世界を見てもらうことと、オンラインにふさわしいファッション・コンテンツを実現することです。そのための投資はしていますが、うまくいっているとは思っていません。オンラインでファッションというと、ショッピングにつきるのではないかしら。実際に、誌面をショッピングに結びつける計画もあります。雑誌の表紙を飾るドレスを、電話一本で、あるいはネットに接続するだけで購入できるような仕組みを。

Q 昨年の秋は、ファッション誌が9月号で記録的な広告売上を達成しましたが、今年はどのような見通しを?

CS 春の号は前年比22%ダウンとなります。通年でも15%程度の落ち込みになるでしょう。秋の号の締め切りは6月ですが、それまで小売店は在庫を増やさないでしょうし、広告予算も抑えられたままだと思います。今年は去年みたいに厚い号は見られないでしょう。雑誌の数が多すぎるし、ファッション・ブランドの数も多すぎではないかしら。生き残りが大変。

Q 雑誌の業績落ち込みは景気後退に歩調を合わせたものだから、いずれ持ち直すという人がいますが、同意見ですか?

CS 高級品市場も高級誌も復活すると思います。その顔ぶれがどうなるかはわかりませんが。2007年と同じ顔ぶれにはならないのでは?広告ページ数でトップ3の月刊誌は、『ヴォーグ』、『ブライズ(Brides)』、『エル』になると思います。

いちばん心配なのはシェアを失うことです。『エル』は5年かけて、ナンバー2の地位まで這いあがってきました。その地位を手放すことを考えるとぞっとします。『エル』のポジションは非常に強固なものですが、だからといって3位以下の雑誌の標的になることに変わりはありません。『ヴォーグ』は絶対的な存在ですから、誰もが『エル』を攻撃目標にするのはまちがいありません。その意味で『エル』は、うんざりするくらい大変な位置にいるのです。

◆情報ソース
How Smith Keeps Elle Glossy (Forbes.com)

我らが新聞を救う方法

米誌『タイム(TIME)』の元編集主幹、ウォルター・イザクソン(Walter Isaacson)氏が同誌の先週号に、「我らが新聞を救う方法(How To Save Your Newspaper)」と題する提言を寄稿した。

オリジナルの記事は2200ワードを超す長文だが、イザクソン氏の主張を少し乱暴に要約すると以下のようになる。
●新聞記事はかつてないほど多くの読者を獲得しているが、問題はその対価を支払っている人が少ないことだ(ピュー・リサーチ・センターの調べによると、米国では昨年、新聞や雑誌を有料で読む人の数を、オンラインで無料で読む人の数が上回った)。
●多くのプリント・メディアがオンラインでは、無料で記事を提供し、広告を主要な収入源としている。これは危険で、タイムの創設者であるヘンリー・ルースの言葉を借りれば「モラルに反する」と言える。なぜなら、広告への依存が高まると、景気の後退期に立ち行かなくなるし、ジャーナリズムとは第一義を読者に置くべきだからだ。
●したがって、今年は出版社や新聞社が提供する記事やサービスに、ユーザーが料金を支払うモデルの復活の年とすべきだ。とはいっても私は、ウォール・ストリート・ジャーナルのように月極めの購読料を課金するのが唯一の方法だとは思わない。特定の日の記事だけを読みたい人や、興味深い記事へのリンクに誘われて新聞社のサイトを訪れる人もいるからだ。
●そこでカギとなるのが、少額の都度課金を可能にするマイクロペイメントの技術だ。かつてインターネットの世界は、マイクロペイメントで失敗した企業であふれていたが、時代は変わった。スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)はiTunesによって、楽曲をネットを通じて一曲あたり99セントで販売することに成功しているし、Amazonのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)はKindleの発明によって、電子書籍・雑誌・新聞を人々が購入することを証明した。同じように、ワン・クリックで記事や動画の視聴を購入できる、シンプルなインターフェースのシステムができるはずだ。

新聞社救済の手段として、記事の有料化やマイクロペイメントに言及したのはイザクソン氏が初めてではないが、彼の記事をきっかけにして、反対意見をウエブ上で表明する人が相次いでいる。その多くは、新聞社というよりも地元有力紙である『ニューヨーク・タイムズ(New York Times)』の救済策の議論にすり替わってしまっているのだが…。

雑誌『コンデナスト・ポートフォリオ(Condé Nast Portfolio)』のフェリックス・サルモン(Felix Salmon)記者は、自分が『ニューヨーク・タイムズ』の記事を引き合いに出すのは、同紙に権威があることに加えて、ウエブ上の記事へのパーマリンクを同紙が壊すことがないからで、その記事が有料化されたら『ガーディアン(Guardian)』や『ロイター(Reuters)』の記事を参照先にするだけだ。一般のユーザーも同様に、無料サイトのニュースを見に行くようになるだろう、と述べている。

また、オンラインマガジン『スレート(Slate)』でガブリエル・シャーマン(Gabriel Sharman)氏は、iTunesは新聞救済のモデルにならないと主張している。iTunesのユーザーが楽曲のダウンロードに99セント支払うのは、それが永久に自分の資産として利用可能になるからだ。加えて、確かにネット上で合法的にダウンロードされた楽曲の数は、昨年だけで14億曲におよんだが、その一方で非合法にやり取りされている楽曲の数は400億以上と推計されている。アップルがiTunesのサービスを続けているのは、それがiPodやiPhoneの販売につながるからだ。ジャーナリズムや書籍は、文化的な価値は高いが、残念ながら音楽や動画ほどの需要は見込めない。電子書籍が受け入れられているといっても、AmazonのKindleの販売台数は累計でわずか50万台である。iTunesのサービスが機能しているのは、同サービスが開始された2001年に、音楽業界がいっせいに無料の楽曲提供を(合法的なサイトでは)しなくなったからだ。対して、無料で提供されるニュースは山ほどある。
新聞社が危機に直面しているのは、iPodのような端末がないからではなく、民主主義を支える優れたジャーナリズムを無料で手に入れられる環境が、人々にとって電気や水のように当たり前の存在になってしまったからだ、という。

こうしてみると、どうもマイクロペイメント否定派に分があるように思える。かといって、いまのままオンラインで無料の記事を配信し、いくらユーザー数やページビューを増やして広告ビジネスをテコ入れしても、赤字を補てんできるほどの売り上げは、まず実現できないだろう。(オンライン版に専念して、紙版の印刷・配送費をなくした場合、バランス・シートがどのようになるかは、データがないためわからない。)

『コンデナスト・ポートフォリオ』のサルモン記者は、定期購読者が新聞社の株を買い取り資金調達を助ける方法なら、救済策になるかもしれないと書いている。また、米イエール大学の基金運営責任者で著名な投資家であるデビッド・スウェンセン(David Swensen)氏と投資アナリストのマイケル・シュミット(Michael Schmidt)氏は、ニューヨーク・タイムズに共同で寄稿した記事で、基金のようなものを設け、その利息で運営してはどうかと提言している。ニューヨーク・タイムズの年間の運営コストは約2億ドル。年利5%としても、50億ドルもの基金が必要になるのだが。

自力で再生できるビジネス・モデルは見つからないのだろうか。取り返しのつかない事態になる前に、米国の健全なジャーナリズムに道が開けることを願うばかりだ。

◆情報ソース
How to Save Your Newspaper (TIME)
Why Micropayments Won't Work for the NYT (Condé Nast Portfolio)
Time to the Rescue of Failing Papers? (MediaPost)
Micro Economics Why Steve Jobs and micropayments won't save the media (Slate)
News You Can Endow (New York Times)



次のページ

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。