A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2009年04月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

新聞社の不振は加速。NYタイムズは風前の灯。

米国の新聞社の業績は悪化の一途をたどっている。

メディアポスト(MediaPost)がABC(Audit Bureau of Circulation)の統計をもとに計算したところによると、日刊紙トップ100紙の平日の発行部数合計は、2008年10月~2009年3月の半年間の平均で、前年同期の2,656万部から2,459万部へと7.5%減少した。しかも、その減少率は大きく加速している。同じ100紙の総発行部数は、2002年から2008年までの6年間ではマイナス11.5%(年平均マイナス2%未満)だったが、昨年から今年にかけてはマイナス6.5%だった。

主な全国紙およびメトロ紙の発行部数と減少率は以下のとおり。
※部数は2008年10月~2009年3月期の1号あたりの平均発行部数。減少率は前年同期の平均発行部数との比較。
USA Today 2,113,725部(▲7.5%)
New York Post 558,140部(▲20.6%)
New York Daily News 602,857部(▲14.3%)
New York Times 1,039,031部(▲3.4%)
Los Angeles Times 723,181部(▲6.6%)
Chicago Tribune 501,202部(▲7.5%)

唯一、ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)だけは、わずか0.6%ではあるが部数を伸ばした(一号あたりの平均発行部数は2,082,189部)。

この中でニューヨーク・タイムズ紙は落ち幅がゆるやかだが、同紙を発行するニューヨーク・タイムズ社(New York Times Co.)の経営は、いよいよ風前の灯と言っても良い状態だ。今年1‐3月期の同社の広告売上は、前年同期と比べ27%、およそ1億2400万ドルも落ち込んでいる。これが大きく響いて、同社はこの四半期で7,447万ドルもの赤字を計上した。

そんな中で開かれた同社の第113回年次株主総会で、アーサー・サルツバーガー(Arthur Sulzberger)会長は、NYTimes.comをはじめとする同社のサイトの有料化を考えていると発表した。具体的な計画には触れなかったが、「新たな視点で、綿密に、掘り下げて様々な購読、記事ごとの課金、およびマイクロペイメントのモデルを検討していく」とのこと。同時にサルツバーガー氏は、広告依存型のサイト運営をすぐには転換するつもりのないことも明らかにした。同社は「他の30以上の企業のビジネスモデルを分析し、それらがいかに効率的にオンラインで収益を上げているかを検討したが、そのほとんどよりもNYTimes.comの広告モデルの方が大きな収益を得ていることがわかった」からだという。

さらに、サルツバーガー氏は、成功に向けてどのような戦略を立てようとも、そこで鍵となるのはジャーナリズムの質であると強調した。彼は、トリビューン社(Tribune Co.)のサム・ゼル(Sam Zell)会長が昨年、インタビューに答えて「ピューリッツァー賞で金を稼げるとは思ったことがない」と発言したことを取り上げ、「(この発言には)慎んで、しかし断固として反対する」と訴えた。「優れたジャーナリズムこそが読者の熱心な支持と忠誠心を獲得し、そのような読者の質の高さとコミットメントこそが広告を獲得する原動力となる」というのだ。(ニューヨーク・タイムズは今年、調査報道や速報など5部門でピューリッツァー賞を受賞し、同紙の受賞数は計101になった。)

しかし、ニューヨーク・タイムズ社の株価はこの一年で75%も下落し、最近ではすべての主要格付け機関が同社の格付けを下げた。それでもいまの体制を維持できているのは、サルツバーガー家が多数議決権株式(super voting share)を握っているためだ。だが、資金が枯渇し身動きできない状態になってしまっては、それも何の役にも立たない。ジャーナリズムの牙城を守ってほしいとは思うが、経営の立て直しを考えるとサルツバーガー氏の発表はあまりにも説得力に欠ける。ゼニス・オプチメディア社(Zenith Optimedia)の予測によると、今年の新聞広告市場は12%縮小するというのだから。

◆情報ソース
Big Newspaper Circs Drop 7.5%(MediaPost)
NYT Again Mulls Paid Online Content (Adweek)
NYTimes Co. Reconsiders Online Paid Subscriptions (MarketingVOX)

スポンサーサイト

コカ・コーラが広告会社の業務の価値で報酬を決める制度を推進

コカ・コーラ社が、パフォーマンスに基づいて広告会社への支払いを行う、価値ベースの報酬制度を標準的な慣行として推進していくと、4月20日に開催された広告主協会の財務経営カンファレンスの席上で発表した。この報酬制度は、広告に効果が認められなければ、広告会社に実費以上の支払いを行わず、代わりに目標を達成した場合は最大30%のフィーを認めるもの。「広告会社には利益を上げてほしいが、それは保証されるものではなく目標の達成を通じて得るものでなくてはならない」と、ワールドワイドで同社のメディア&コミュニケーションを管轄するサラ・アームストロング氏はいう。

コカ・コーラはこれまで、業務量に基づいて支払いを行うフィー制度を採用していたが、昨年、5つの市場(オーストラリア、中国、ドイツ、英国、フィリピン)で価値ベースの報酬制度への転換を行った。今年はさらに対象市場を少なくとも35にまで拡大し、2011年までにすべての広告/メディア・エージェンシーに適用する予定だ。コカ・コーラと取引のある複数の広告会社の役員は非公式に、新制度の背景にある考え方には反対しないが、実際にどのように適用するのかが問題だと懸念を表明している。「価値の増大に応じて請求金額が増えるのは良いが、やっかいなのはどうやって価値を評価するかだ」と、新制度への移行を終えていないある広告会社のトップは述べた。

これまで、業務の価値を計測するのは広告会社の役割で、目標を達成するために費やす人の数や作業時間を自己申告することによってそれを行ってきた。コカ・コーラの新制度では広告主側が、設定された任務の戦略的な重要性やその他の要素、達成のために投入される人材の量、あるいは他の広告会社でも達成可能な任務か、といった観点をもとに価値を決定する。ひとたび価値が決定されると、広告会社の業務遂行状態とそれによって広告主の業績がどう変化したかによって、広告会社への支払金額が決められる。目標を完全に達成できれば、広告会社は最大で経費の30%にあたるフィーを手にできる。逆に全く目標を達成できなければ、広告会社が請求できるのは経費だけで、利益はゼロになる。

カンファレンスでのアームストロング氏の発表に、他の広告主たちは沸き立った。アンハウザー・ブッシュ社(Anheuser-Busch)のマーケティング担当バイス・プレジデント、キース・レビー氏(Keith Levy)もそのひとりだが、彼は「広告会社がどれだけ努力を傾けようとそれと価値とは別物だというコカ・コーラの主張には賛成だが、目標達成に向けて時間を使い努力をするのは事実なのだから…」とも言う。

この不況下で、広告会社と値下げ交渉をする広告主は多い。しかし、報酬制度の変更は経費節減とは関係ないと、アームストロング氏はいう。とはいっても、コスト削減はコカ・コーラ社の大命題のひとつとなっている。同社は2011年までに、年間400万~500万ドルのコストカットを実現することを掲げており、その大きな標的になっているのがマーケティング予算だ。広告会社利用の最適化も課題になっている。同社は過去18ヶ月間に、取引先広告会社の数を半分以下に減らした。にもかかわらず、同社は昨年、全世界で前年を200万ドル上回る30億ドルもの宣伝予算を投じている。

コカ・コーラの新報酬制度は、理論的には宣伝の質を予算規模に応じたものに高めるための良策といえるが、リスクが伴う。さんざん苦労をした挙句に利益がゼロになる危険性があることがわかっていて、広告会社が良い仕事をできるかどうかだ。アームストロング氏は、「広告会社は競争が厳しいことを理解しているから、何があろうと最高の仕事をするはず」と、意に介さない様子だが。

人材と時間を最大限に投入しても売上にならない可能性があるという状況は、広告会社にとっては大きなギャンブルだろう。特に、いまのような厳しい時期に、それを引き受けるだけの余裕が広告会社にあるのか。

先だって、オムニコム・グループ(Omnicom Group)の今年第1四半期の業績が発表されたが、純利益は昨年同期比で21%の落ち込みを記録した。売上もワールドワイドで見ると、昨年の32億ドルから27億ドルへ14%減少した。米国内に限ると、売上は16億ドルから15億ドルへ8%減。米国外では15億ドルから12億ドルへ20%減と大幅に下落した。他の広告グループの業績はまだ発表されていないが、景気後退の影響は明らかだろう。

◆情報ソース
Coke Pushes Pay-for-Performance Model (Advertising Age)
Omnicom First-Quarter Net Income Falls 21% (Advertising Age)

ブログやアグリゲーターだけでなくグーグルも寄生虫扱い

通信社や新聞社が提供するコンテンツを「横取り」しているブログやアグリゲーターに対して、法的措置などを講じるとAPが発表した。同社の年次総会の席で会長のディーン・シングルトン氏は、同社が配信契約を行っているウエブサイトとともに、配信契約を行わずにニュースを利用している運営者に対する法的措置を模索するとともに、そうした運営社のニュースの掲載方法や内容を監視するシステムを開発すると語った。

この背景には言うまでもなく、広告売上と販売の減少という新聞業界の二重苦がある。頼みのオンラインでも十分な収益を上げることができずにいる新聞社にとって、彼らが苦労して生み出したコンテンツを、対価を支払うことなく利用してアクセスを稼ぐサイト運営者は目障りなだけでなく、時として自社のサイトへのトラフィックの流入を妨げる忌まわしき存在なのだ。

彼らの避難の標的はブロガーやアグリゲーターにとどまらない。

ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)の編集長ロバート・トムソン氏(Robert Thomson)は、オーストラリアの全国紙オーストラリアン(The Australian)の取材に応えて、コンテンツはタダだという「間違った認識」から利益を得ているグーグルのような企業は「寄生虫」だとこき下ろした。

一方、非難の的になっているグーグルは、自分たちはトラフィックを増やし新聞社がオンライン広告で収益を上げる手伝いをしているであって、決してコンテンツを横取りしているのではないとの、法務担当のコメントを同社のブログに掲載した。「我々はニュースを検索・表示するだけでニュースそのものを掲載するわけではない。グーグルに掲載される見出しや記事の抜粋を見た読者は、もっと詳しい記事を読みたいと思うはずであり、そのリンクの先にはオリジナル記事の掲載サイトがある」と、そのブログには述べられている。また、同社のCEO、エリック・シュミット氏(Eric Schmidt)は、APが上記の発表を行った翌火曜(4月7日)、米新聞協会の年次総会に出席し、グーグルはAPに数百万ドルの配信料を支払っていると反論した。

しかし、新聞業界からは、彼らが「寄生している」と称するブログやアグリゲーターとオリジナルの記事とが同列に扱われ、時としてそれらのサイトがオリジナルの記事よりも上位に表示されることに対する不満が噴出している。また、グーグル・ニュースに対しても、ユーザーは見出しや抜粋だけで満足して、オリジナルの記事を見に行かなくなってしまうとの批判がある。

これに対してシュミット氏は、グーグルはあくまでも消費者を尊重する立場にあり、オリジナルの記事を必ず見に行くように仕向けるなど、彼らに何かを強制することはできないと主張している。

もともと様々な情報が区別なく遍在するのがネットの世界だ。その中で、ブログやアグリゲーターにアクセスが集まるのは、どんなニュースに注目すべきなのか、ある記事で報じられていることがすべてではなく別の見方があるのではないかといった「知見」を、人々が欲しているからではないのか。だとしたら考えるべきなのは、記事の提供者が正当な対価を得るべきだという原則論にとどまらず、いまの新聞報道のあり方は果して今日的なのか、つまり新聞社は現代の消費者に取って魅力あるコンテンツを提供できているのか、ということだと思うのだが。

◆情報ソース
AP to Aggregators: Free Ride Is Over (Advertising Age)
WSJ editor attacks Google 'parasite' (The Australian)
Google is good for newspapers: executive (Yahoo! TECH)
Google CEO: Consumers Won't Pay for Most Online News (Advertising Age)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。