A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2009年07月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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雑誌広告が完全復活する日は来ない?

7月15日のエントリーで、雑誌広告の落ち込みが深刻で、このままいけば世界大恐慌以来最大の落ち幅を記録することになると書いた。そうなる可能性は、ますます高まっている。

『アドバタイジング・エイジ』(Advertising Age)が伝えるところによると、月刊誌の8月発売号の広告集稿ページ数は前年同月比22%減で、『ティーン・ヴォーグ』(Teen Vogue)や『ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー』(National Geographic Traveler)のように落ち幅が40%を越した雑誌も珍しくない。

9月発売号は、女性誌が秋冬のニューモデルや新製品を一斉に掲載する号で、出版社にとっても広告主にとってももっとも重要な号だが、春よりも状況が悪化している雑誌が多い。例えば、『ヴォーグ』(Vogue)は昨年、9月号だけで年間の23%にあたる673.89ページの広告を掲載したが、今年は37%減の427ページにとどまっている。同誌の、同じくファッション誌の稼ぎ頭である3月号は前年比25%減だった。ハースト(Hearst)の代表的ファッション誌『ハーパース・バザー』(Harper’s Bazaar)の9月発売号も3月(15%減)よりも悪化して23~26%減となる見通しだ。アシェット・フィリパッキ(Hachette Filipacchi)の『エル』(ELLE)の9月発売号は、3月(28%減)よりは改善したものの、それでも21%減と近年にない落ち込みを見せている。

このような広告の不振を出版社の多くは、不況がもたらした一時的なものと説明しているが、そう考えていない関係者は多い。『アドバタイジング・エイジ』の取材に答えて、大手メディア・エージェンシー、メディアエッジ:CIA(Mediaedge:cia)の北米担当CEO、リー・ドイル氏(Lee Doyle)は、「広告予算は雑誌以外のメディアにシフトしている。(いまの状態は)この根本的な変化を不況が加速させているにすぎない」と説明している。メディアヴェスト(MediaVest)の顧客サービス担当プレジデント、グレッグ・ウォレン氏(Greg Warren)も「雑誌広告が2007年以前の水準に戻るとは思わない」と語っている。

『アドバタイジング・エイジ』によると、いま雑誌が直面している危機は、読者の減少がもたらしたものではない。調査会社メディアマーク・リサーチ&インテリジェンス(Mediamark Research & Intelligence)の最新の調査によると、米国の成人1億8900万人以上が過去1ヶ月間に雑誌を読んでおり、しかも雑誌広告は、ネット、ラジオ、テレビの広告・CMよりも信頼性が高いという結果が出たという。それでは何が問題なのか。雑誌に限らず、オーディエンス(読者)さえ獲得できれば広告は後から付いてくるという考え方が、危険であり陳腐化しているというのだ。

広告主企業は近年、以前よりもはるかに低コストで顧客あるいは見込み顧客にアクセスできる手段を手に入れた。加えて、広告主企業は効果測定をますます重視するようになっており、オンディマンド志向の高まりとともに測定結果を早く知りたいという欲求が顕著になっている。Forbes.comのCEOの職を間もなく辞するジム・スパンフェラー氏(Jim Spanfeller)は、「デジタルメディアの出現によって、即効的なアカウンタビリティが求められるようになった。雑誌媒体はもはや機能しないというのではなく、効果測定が困難な点が問題なのだ。雑誌の発行頻度にもよるが、読者の反応が得られるまで6週間~3カ月かかる。それを広告主は待ちきれなくなっている」と指摘する。

雑誌社は誌面の広告以外に収入源を確立すべきだという意見もある。ロデール社(Rodale)の男性向け健康情報誌『メンズ・ヘルス』(Men’s Health)が発表したiPhone向け有料アプリはその一例だろう。タイム社(Time Inc.)のスポーツ誌『スポーツ・イラストレイテッド』(Sports Illustrated)も、同誌の名物企画「水着特集」をiPhoneアプリとして2.99ドルで売り出し、1日で有料ライフスタイルカテゴリーの1位になった。

雑誌のブランド、コンテンツ、読者とデジタルをいかに融合させるかが不況脱出後の命運を握る鍵だというのが、『アドバタイジング・エイジ』の結論のようだ。

◆情報ソース
Publishers Fret Over September Issues (Advertising Age)
Fashion Mags Won't Have Their Usual Big September (Silicon Alley Insider)
Conde Nast September Monthlies Lose 1,680 Ad Pages (The New York Observer)
Why Ad Pages Won't Ever Fully Return to Mags (Advertising Age)
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自分の写真がナショナル・ジオグラフィックの表紙に

米ナショナル・ジオグラフィック誌(National Geographic)は2006年6月にYour Shotというプロジェクトを開始した。これは、読者からデジタル写真の投稿を募り、同誌のウエブサイトで “Daily Dozen”と題して編集者の選んだ作品12点を日替わりで発表。読者の人気投票も受け付けて、多くの票を集めた作品は本誌に掲載するというもの。このプロジェクトに寄せられた写真作品の数は、開始から3年余りで15万点を超えた。

同誌はこのほど、このプロジェクトに寄せられた投稿写真の中から選んだ100点余りで全ページを構成する特別号を出版する。おもしろいのは、その特別号の表紙に、読者の撮影した写真を印刷してくれるサービスだ。希望者は所定のウエブサイトから高解像度の写真をアップロードし、できあがりのイメージを確認して注文するだけ。

National Geographic customized cover

このオリジナルカバーの投稿写真部分は、ヒューレット・パッカード社のデジタル印刷機Indigoで印刷される。気になるお値段は19.99ドル+送料。海外からのオーダーも受け付けてくれるかはわからない。

◆情報ソース
National Geographic Taps Digital Press for On-Demand ‘Your Shot’ Covers (Folio)

Fair Syndication Consortiumの会員社が1000を突破

5月29日のエントリーで、Attributor社が発起人となって、オンライン・コンテンツの無断転用をしているサイトやそこに広告を配信しているネットワークに報酬の支払いを求める組織Fair Syndication Consortiumを設立したと書いたが、当初50社ほどだった会員社が1000を越したようだ。

会員社には、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)、ワシントン・ポスト(The Washington Post)、ダラス・モーニング・ニュース(The Dallas Morning News)、マクラッチー(McClatchy)、など米国の大手新聞社の半数以上が名を連ねる。また、米雑誌協会(Magazine Publisher of America)や、ブログネットワークのゴーカー・メディア(Gawker Media)、政治ブログサイトのハフィントン・ポスト(Huffington Post)なども会員社になっている。加えて、広告マーケットプレースのアドブライト(AdBrite)が同組織に協力することになった。

◆情報ソース
More than 1,000 Publishers Join Fair Syndication Consortium (Editor & Publisher)

有力ビジネス誌の広告売上が危機的状況に

前回(7月15日)のエントリーで、不振が目立つ雑誌カテゴリーとしてビジネス誌をあげたが、その代表格である『ビジネスウィーク(Business Week)』、『フォーブス(Forbes)』、『フォーチュン(Fortune)』は広告売上の落ち込みが深刻だと、『アドバタイジング・エイジ(Advertising Age)』が伝えている。

3誌の今年上半期(1‐6月期)の広告集稿ページ数は合計で2,204ページで、10年前の1999の上半期(6,193ページ)と比べると64%も落ち込んでいる。前回のエントリーで書いたように、雑誌広告の減少幅は昨年から四半期ごとに拡大しており、すぐに底を打ちそうな状況ではない。

Biz mag ad for 10 years


ビジネス誌の状況がどれほど深刻化というと、例えば『ビジネスウィーク』は、発行元のマグローヒル社(McGraw-Hill Cos.)が売却を検討していると伝えられている。しかも売却価格はたったの1ドルだとか無償譲渡するのではないかと言われている。

昨年末、プライベート・エクイティ企業のオープン・ゲイト・キャピタル(OpenGate Capital)はマクロビジョン・ソリューションズ社(Macrovision Solutions)が売りに出していたテレビ番組ガイド誌『TV Guide』を1ドルで買い取り、およそ900万ドルの負債を肩代わりした。これとまったく同じ取引を、マグローヒルは目論んでいるようだ。『ビジネスウィーク』は昨年、4200万ドルの赤字を計上したと伝えられている。

マグローヒル社は昨年、21,000名の従業員のうち1,045名を削減した。その中には傘下の格付け会社スタンダード&プアーズ(Standard & Poor’s)や顧客満足度調査で知られるJDパワー(J.D. Power)のスタッフに加えて、『ビジネスウィーク』のスタッフも相当数含まれていると言われている。今回の売却は、コストカットに苦しむマグローヒル社が、『ビジネスウィーク』の不振を支え切れなくなったということなのだろう。

『フォーチュン』も『ビジネスウィーク』ほどではないにしても、6月22日号までの広告集稿ページは昨年同期比でマイナス39%と、深刻な状況に変わりはない。同誌の編集主幹ジョン・ヒューイ(John Huey)は内外のエキスパートによる緊急対策チームを結成し、誌面の改訂に乗り出した。しかし同誌は編集長アンディ・サーワー(Andy Serwer)の下で、2年足らず前に大幅なリニューアルを行ったばかりだ。サーワー編集長も緊急対策チームの会合に席を並べているというが、内心穏やかではないだろう。

『フォーブス』は本誌ではないが、Forbes.comの最高責任者ジム・スパンフェラー(Jim Spanfeller)が退任し、旧来型メディアのウエブ事業を立て直すメディア・マネージメントの会社を起業すると、『アドバタイジング・エイジ』が伝えている。同紙とのインタビューでスパンフェラー氏は、Forbes.comのマネタイズはうまく進んでいないと明かしている。フォーブス社は2006年、自社の株式の40%をベンチャー・キャピタル企業のエレベーション・パートナーズ(Elevation Partners)に売却したが、マネタイズの遅れに対して同社から圧力があったわけではないと、スパンフェラー氏は答えている。

ビジネス誌の広告売上がここまで落ち込んだ原因を、『アドバタイジング・エイジ』は、広告主が雑誌よりも効率的に、直接ターゲットである消費者にアプローチできる方法を手に入れた結果だと分析しているが、果たして事はそれほど単純なのか。ビジネス誌の主要なターゲットは企業の経営者や意思決定者と投資家だ。投資家対策のメディアが雑誌からウエブにシフトしている可能性は確かにある。また、ここのところ広告主が企業広告やブランド構築よりも売上拡大に直接結びつく施策に予算をシフトする傾向にあるとも聞いている。こうした変化が複合的にビジネス誌の不振をもたらしているのか。それは景気が好転した後も続くのか。引き続き情報収集に努めたい。

◆情報ソース
A Decade of Evaporating Ad Pages for BusinessWeek, Forbes, Fortune (Advertising Age)
McGraw-Hill might 'give away' Business Week for nominal $1 (Financial Times)
McGraw-Hill Considering All 'Options' for BusinessWeek (MediaWeek)
HUEY: NEW FORTUNE TELLER (New York Post)
Forbes.com CEO Jim Spanfeller Leaving to Start Own Firm (Advertising Age)

雑誌広告は世界大恐慌以来最大の落ち幅

米PIB(Publisher’s Information Bureau)の統計によると、同社がモニターする米国の一般誌250誌の今年第2四半期(4-6月期)の広告集稿ページ数は、昨年同期比で29.4%減だった。このままいくと、2009年の雑誌広告業界は、世界大恐慌の最中にあった1932年以来、最悪の落ち幅を記録することになりそうだ。

雑誌広告ページ数は、以下のように2007年第2四半期から9四半期連続で前年同期比割れを続けている。

2007年
4-6月 -2.1%
7-9月 -2.3%
10-12月 0.2%
2008年
1-3月 -6.3%
4-6月 -8.3%
7-9月 -12.9%
10-12月 -17.2%
2009年
1-3月 -26.1%
4-6月 -29.4%

ご覧いただくとわかるように、雑誌広告不況は昨年から深刻化し、しかも期を追うごとに下げ幅が拡大している。

250誌のうち、今年4-6月期の広告ページが前年同期比より増えたのは、以下の11誌だけだった。(カッコ内は増加率)
Cooking with Paula Deen (0.2%), Country Weekly (8.4%), Family Circle (8.2%),
Fitness (18.4%), Muscle & Fitness (16%), OK Weekly (16.6%), Organic Gardening (3.2%),
People Style Watch (15.9%), Scholastic Parent & Child (2.5%),
Sports Illustrated Kids (2.1%), The Week (11.3%)

また、18誌は廃刊するかデータの提出がなかった雑誌なので、残りの221誌(全体の88%)はすべて、前年同期比割れをしたことになる。落ち幅が30%以上と特に大きかったのは以下の雑誌だ。(カッコ内は減少率)
Architectural Digest (49.5%), Boating (49%), Wired (47.6%), Gourmet (46.1%), W (44.2%),
Life & Style Weekly (44.1%), Dwell (43.1%), Town & Country (42.9%),
Conde Nast Traveler (42.4%), Teen Vogue (40.8%), Men's Journal (38.4%),
Fortune (38.2%), Details (37.3%), Southern Accents (37.4%), Business Week (36.8%),
Automobile Magazine (36.6%), Latina (35.8%), Maxim (35.8%), Real Simple (35.6%),
Vanity Fair (35.2%), Bon Appetit (34.5%), Fast Company (33.6%), New York (33.5%),
National Geographic (33.2%), Allure (32.4%), Autoweek (32.1%),
Entertainment Weekly (31.9%), GQ (31.8%), Road & Track (31.8%),
Metropolitan Home (31.4%), Motor Trend (31.3%), Vogue (31%), Money (30.5%),
Forbes (30.2%)

ここにあげられた32誌のうち、10誌はコンデナスト社の雑誌だ。タイム社の雑誌も4誌入っている。カテゴリー別にみると、自動車、インテリア/ホームデザイン、ビジネス/ファイナンス分野の雑誌の不振が目立つ。

◆情報ソース
Magazine Ad Pages Tumble 29.4% in Q2 (MediaPost)
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