A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2009年09月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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クロス・プラットフォーム化でニールセンが岐路に?

テレビCMの視聴形態は、テレビのモニターからDVR、インターネット、携帯電話へと多様化が加速的に進んでいる。そうした状況の中、視聴率調査で揺るぎない地位を守ってきたニールセン・メディア・リサーチ(Nielsen Media Research)が危機に立たされているようだ。

ニールセンの主要取引先である媒体社、バイイング・エージェンシーおよび広告主14社が、「革新的な計測方法を求める企業連合」(The Coalition for Innovative Media Measurement: CIMM)を結成したとアドバタイジング・エイジ(Advertising Age)が伝えている。その目的は、視聴状況別の視聴率に加えクロス・プラットフォームでの広告効果測定方法の提案を、ニールセンを含む複数の企業に求めることにあるという。仮にこの提案でニールセンが敗れた場合、同社は600万ドルのビジネスを失うことになるらしいが、CIMMの真意は、競争原理を導入してなんとかニールセンに新たな広告効果測定法を開発させようということのようだ。

CIMMのメンバーは、Time Warner、 ESPN、 Disney Media Networks、 News Corp.、 InterpublicグループのMediabrands、 Viacom、 Starcom MediaVest Group Worldwide、 Procter & Gamble、 Unilever、 AT&T、 WPPグループのGroup M、 CBS Corp.、 Omnicom Media Group、 Discovery Communications、そして NBC Universal。各社はこの過酷な要求をただ突き付けるだけではなく、一社あたり10万ドル、計140万ドルを新たな計測方法の開発費用として投資する。しかし、これはとても十分とは言い難い金額だ。例えば、ニールセンは調査会社のアービトロン(Arbitron)と共同で、「プロジェクト・アポロ」(Project Apollo)というプログラムの開発に取り組んだ。これは、およそ3万世帯に端末を配布し、消費者が見聞きしたテレビ、ラジオや接触した新聞、雑誌、DM、屋外広告などをすべて記録。同時に各人の購買行動も調べて広告効果を測定するという壮大な計画だった。ニールセンはアービトロンとともに、この計画に1億ドル以上の投資を行ったが、結局、データを購入する企業が十分に集まらず計画は頓挫した。

CIMMの顔触れにも問題がある。メンバーにはポータル・サイトの運営企業、ケーブル事業者、インターネット動画の配信事業者、移動体通信事業者などは含まれておらず、テレビ局中心、クロス・プラットフォームからは程遠い布陣と言わざるを得ないからだ。インターネット広告業界団体のIAB(Interactive Advertising Bureau)はCIMMに共同作業を求めているらしいが、これだけ多様なプラットフォームの運営企業が集まると、測定方法や結果の評価をめぐって必ず衝突が起こるはずだ。現にIABは、ここのプラットフォームの計測方法に関して合意できるまではクロス・プラットフォームに踏み込むつもりはない、と述べている。

しかし、広告主がクロス・プラットフォームによる広告効果測定を強く求めているのは確かだから、いずれニールセン(およびその他の調査会社)は、その要望に応えざるを得ないだろう。日本の場合、ビデオリサーチ社の独壇場だがどうなのだろう。テレビ局の疲弊が甚だしくてそれどころではないと言われるだろうか。

◆情報ソース
Nielsen on Notice: Industry Demands a Meatier Metric (Advertising Age)



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新聞・雑誌はアグリゲーターに勝てるのか

新聞や雑誌のネット上の課金をめぐる議論がかまびすしい。

大学の友人とともに起業したBroadcast.comをYahoo!に59億ドルで売却し、いまやプロバスケットチームDallas Mavericksとエンターテインメント企業2929 EntertainmentのオーナーにしてHDTVの放送局HDNetの会長でもあるマーク・キューバン(Mark Cuban)氏は、Drudge ReportNewserなどのアグリゲーター・サイトに宣戦布告せよと主張している。アグリゲーターと旧来型メディアは同じ広告主の予算を争っている。しかし、旧来型メディアはコンテンツの制作に多大な投資を行っているのに、アグリゲーターはそれを利用してほとんど費用をかけずに収益を上げている。この理不尽な状況を打開するために、旧来型メディア企業はアグリゲーターのリンクを遮断するソフトウェアを導入して、彼ら“寄生虫”を退治すべきだというのだ。

この主張に対して、Newserの創始者であるマイケル・ウォルフ(Michael Wolff)氏が、「マーク・キューバンはとんでもない愚か者だ」(Mark Cuban is a big fat idiot)との見出しを掲げて反論を行った。Newserをはじめとするアグリゲーターは旧来型メディアに貢献をしている、アグリゲーター・サイトの読者の一部は元の記事を読むために彼らのサイトを訪れているからだ、というのがウォルフ氏の主張だ。確かに、アグリゲーター・サイトの読者の一部はリンク先である新聞や雑誌のサイトを訪れているだろうが、そうして生み出されたトラフィックを旧来型メディアが売上に転換できずにいるからキューバン氏のような過激な主張が生まれるのだ。

キューバン氏と同じくインターネットで巨万の富を築いたマーク・アンドリーセン(Marc Andreessen・ネットスケープの生みの親)氏は、ほとんどの旧来型メディアがネット読者への課金を始めるだろうと予測している。しかし、その結果、多くの読者が離れていってしまう。広告主は多くの読者が集まるところに投資するから、Newserのような新興サイトの売り上げが伸びることになる。そうして得た資金で、新興サイトは旧来型メディアを辞めた記者や編集者を雇って自前のコンテンツを作り始める。「だから私は、新興ニュース・サイトのBusiness InsiderTalking Points Memoに投資することにしたのだ」と、アンドリーセン氏は語っている。

ネット上の記事の有料化は、キューバン氏の主張する「遮断」論とほとんど同じ効果をもたらすと思われる。記事が有料になれば、アグリゲーターはこれまでのように自由にその一部を引用することができなくなるだろうし、読者がリンク先をたどって行っても、元の記事を読むことはできないからだ。しかし、一部のサイトが課金を始めても、読者の多くは無料サイトに流れていくだろうから、その効果はおそらくきわめて限定的なのではないか。

と思うのだが、ネット上の課金が思わぬ効果を生んだ新聞もある。

リゾート地として有名なロード・アイランド州ニューポートのローカル紙、ニューポート・デイリー・ニュース(Newport Daily News)が無料記事をほとんどなくし、ネット上の記事の定期購読料を印刷版よりも200ドル高い345ドルに設定したところ、同紙の宅配をキャンセルする電話が鳴りやみ、一日当たりの販売部数が200部、跳ね上がったという。同紙の発行部数は13,000部だというから、これは注目に値する数字だ。同時に同紙は、宅配圏外に住む読者に、ウエブ版の記事の購読を勧めるディスカウント・キャンペーンも行っているという。

こうしてみると、雑誌はともかく新聞がネット課金に踏み切る価値はあるのかもしれない。それで収益が改善すれば、新興のサイトに優れたジャーナリストを奪われることもないのだから。ただしそれは、お金を払って読むに値する報道を行っている新聞に限った話だが。

◆情報ソース
Exterminate the Parasite (Newsweek)
This News Doesn’t Want to Be Free (Newsweek)





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