A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2009年10月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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広告主の費用削減要求に音を上げる広告会社

クライアント企業は、媒体社にマーケティング・パートナーとしての役割を求める一方で、マーケティング予算の管理に厳しい目を向けている。以前、コカコーラが広告会社への報酬を、広告のパフォーマンスに基づいて決める新制度を導入すると書いたが、プロキュアメント(購買部門)を立てて料金交渉を行うクライアント企業も現れ、音を上げる広告会社も出てきた。

『アドバタイジング・エイジ』(Advertising Age)の伝えるところによると、貨物輸送大手UPSの2億ドル以上のグローバル広告予算をめぐるピッチ(競合プレゼンテーション)から、WPPグループのジェイ・ウォルター・トンプソンが撤退した。同社のボブ・ジェフリー会長・CEOは社内向けのメールで次のように書いた。「UPSは予算と同様に取引上の問題も大きな企業だ。彼らは当社や他の広告会社をパートナーして扱ってしかるべきだが、そのような文化は彼らにはないようだ。我々は競合を勝ち抜くために膨大な時間とエネルギーを費やしてきた。したがって、この(撤退の)決断は簡単なものではなかった。」このジェフリー会長の言葉が、JWTとUPSの間で何が起こったかを如実に語っている。

フォルクスワーゲン・オブ・アメリカは先週、北米担当のクリエイティブ・エージェンシーとしてインターパブリック・グループのDeutschを指名したが、その数週間前に、同社ほかコンペに参加する広告会社を本社に呼び寄せ、予算や報酬に関する交渉を行った。会議室からげんなりした顔で出てきた、ある広告会社のAEは、次に部屋に入ろうとする競合先のチームに “Don’t cave”(負けるなよ)と囁いたという。フォルクスワーゲンの購買部門の締め付けがいかに厳しいものだったか、想像がつくだろう。

ミネラルウォーターの「エビアン」やヨーグルトで知られる食品大手のダノン・グループは、世界およそ20の市場における広告の見直しを進めている。その取り扱いを巡って、少なくとも3社の広告会社が4カ月近くの間、ピッチを行ってきたが、当初ダノンから提示された提案指示書(request for proposal)は、費用(あるいは費用対効果)に関する質問で埋め尽くされていたという。いわく「予算に関していかに柔軟に対応できるか(つまりどれだけ値引きを行えるか)詳細に示してください」「CPMの改善策を示してください」「ネットGRPの改善策を示してください」等々。ある広告会社のAEは「ダノンの関心は費用だけだ。彼らはメディアを調達資材なみにしか考えていない」ともらしている。このコンペの結果、北米のプラニング/バイイング(1億ドル)の扱いはアバス社(Havas)のMPG、英国(4000万ドル)はWPPグループのメディアエッジ:CIA、中国(1億5000万ドル)の扱いはオムニコム・グループのOMDが獲得する見通しだという。

世界的な不況の中で、企業が費用削減やコスト効率の向上に血眼になる事情はわかる。しかし、そのための努力を一方的に広告会社や、ひいては媒体社に求める風潮には釈然としないものを感じる。広告会社や媒体社が一度受け入れた条件は、景気が良くなったからといって元に戻してもらえる保証はどこにもないのだ。日本でも雑誌広告の効果測定を求めるクライアント企業の声に押されて、電通の音頭で携帯電話を使った調査が行われているが、その費用はすべて電通が負担するらしい(調査への協力を読者に呼びかける広告のスペースは出版社が無料提供)。本来であれば、こうした努力は媒体社と広告主の双方の負担で行うべきものだと思うのだがいかがだろうか。

◆情報ソース
JWT Pulls Out of UPS Review
Volkswagen Hands U.S. Advertising Account to Deutsch, Los Angeles
Havas' MPG to Hold on to $100 Million North-American Danone Media Account
Fed-Up Shops Pitch a Fit at Procurement
(以上、すべてAdvertising Age)

追記(2009年10月30日)

UPSの扱いはWPPグループのオグルヴィ・アンド・メイザー(Ogilvy & Mather)が獲得した。エージェンシー・ピッチには他に、同じWPPグループのヤング・アンド・ルビカム(Young & Rubicam)とアバス社のEuroRSCGが参加していた。現在、UPSの担当広告会社であるインターパブリック・グループ(Interpublic Group of Cos)のMarting Agency(米国内)と、国外市場を担当しているマッキャン・エリクソン(McCann-Erickson)、ユニバーサル・マッキャン(Universal McCann)およびMRMとの取引は、2010年初めに終了する。

◆情報ソース
UPS Taps Ogilvy to Handle Global Ad Account (Advertising Age)
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アドバタイジング・エイジが選ぶ年間最優秀雑誌出版社

今年の『アドバタイジング・エイジ』年間最優秀雑誌出版社(Publishing Company of the Year)には、メレディス社(Meredith Corporation)が選ばれた。

メレディスは創立1902年。出版部門では『Better Homes and Gardens』、『Ladies' Home Journal』など 26の一般誌とおよそ200の専門誌を発行。放送部門では14のテレビ局と1つのラジオ局を所有している。もともとは、いわゆるシェルター・マガジン(住宅の内外装や家具の雑誌)を中心とする出版社だったが、2005年、有力ニュース誌『Stern』などを発行するドイツの出版社、Gruner + Jahr GmbHが米国から撤退する際、『Family Circle』、『Fitness』および『Parents』の発行権を買収し、大人の女性をターゲットとする総合出版社に転身した。

また、メレディスは “media and marketing company”を自称しているように、メディア事業に軸足を置きながらもクライアント企業に様々なマーケティング・サービスを提供している。カスタム・パブリッシング(企業向けの出版物制作サービス)やカスタム・ウエブサイト(ウエブサイトの制作)は他の出版社も行っているが、加えて、8500万人以上の消費者データからなるデータベースを持ち、ダイレクト・マーケティング、市場調査、広告効果測定、店頭プロモーションの手配なども請け負う。

まるで広告会社並みのサービス品目だが、メレディスは実際に、インタラクティブ・エージェンシーのO’grady Meyers、口コミ・マーケティングのNew Media Strategies、データベース・マーケティングのDirectiveを次々に買収。今年夏にはモバイル広告・マーケティング会社のThe Hyperfactoryの株式の一部を取得し、これらの企業を統括するメレディス・インテグレイテッド・マーケティング(Meredith Integrated Marketing)のトップとして、ピュブリシス(Publicis)などデジタル畑の経験が豊富なレイディ・マーティン(Reidy Martin)氏を雇い入れた。

さて、以前、クライアント企業がメディア企業にマーケティング・パートナーとしての役割を求めるようになりつつあると書いたが、そうした企業にとって、出版社の様々な資産や提供サービスの活用方法をワンストップで提案してもらえれば便利だし、出版社側にとってもビジネスの取りこぼしがなくなる。メレディスもこうした需要を見据えて営業部隊を再編し、一人の責任者の下に統括した。この新しい組織、Meredith 360(360は360度=全方位という意味)では、個人ではなくグループ単位で評価を行い、一般消費財のメーカーなど外部からも積極的に人材を採用している。

今回の不況では、メレディスも例外ではなく、今年6月までの年間広告売り上げは前年比マイナス14.5%と落ち込みを見せた。しかし同じ期間に、メレディス・インテグレイテッド・マーケティングの売り上げは13%、ブランド・ライセンス事業の売り上げは14%の伸びを記録した。

◆情報ソース
A-List Publishing Company of the Year: Meredith Corp. (Advertising Age)

『アドバタイジング・エイジ』が選ぶ年間最優秀雑誌にWomen’s Health

米メディア・広告業界誌『アドバタイジング・エイジ』(Advertising Age)恒例のMagazines A-Listが発表された。同誌は毎年、”A-List”と題して、その年にもっともすぐれたパフォーマンスを見せた雑誌10誌を選び10月に発表している。これまでは、広告集稿ページ数や実売部数などの数値を主な根拠として選んでいたが、今年から雑誌本体とその雑誌ブランドを活かしたビジネスでどれだけ成功したかに選考基準を変更した。例えば、雑誌ブランドによるライセンス・ビジネス、ウエブ展開、クロス・メディア・コンテンツや広告プラットフォームの構築などによりどれだけの収益をあげているかも基準となる。この新しい選考基準で “A-List”の第1位、マガジン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのはロデール社(Rodale Inc.)発行の女性向け健康雑誌『ウーマンズ・ヘルス』(Women’s Health)だった。

Women's Health Oct 09 issue

選出理由はひとことで言うと、雑誌販売とブランド・エクステンション(雑誌ブランドを活かした多事業展開)により売り上げの拡大に成功したからだ。

『ウーマンズ・ヘルス』の予約購読実売部数は、今年上半期平均で昨年同期比38.4%増となる108万部(公共の場への無料配布分は除いた数値)に達した。ニューススタンド・セールス(店頭実売部数)も、多くの雑誌が不振に苦しむ中(今年上半期の全雑誌平均は12.4%減だった)、8.7%伸ばして333,463部に達した。

販売の好調に後押しされて、広告営業面でも『ウーマンズ・ヘルス』は、これまで出版元のロデール社にとって疎遠だった化粧品やファッション・ブランドの広告をもたらしている。同誌の今年1~10月の広告集稿ページ数は昨年同期比でマイナス14.4%だったが、月刊誌全体の平均(22%減)と比べれば健闘している方だろう。

雑誌以外のプラットフォームも確実に売り上げをもたらしている。同誌のホームページは無料で閲覧できるが、そのリンク先にある2つの姉妹サイト、Fit CoachAbs Dietはいずれも会費制でダイエット・プログラムを提供している。同誌はまた、毎年 “Are You Game?”と題するイベントを開催している。“Are You Game?”とは「~する元気がある?」という意味で、その名のとおりこのイベントでは、ワークアウト、ダンス、コンディショニング、サーフィンなどのレッスンや体験コーナー、体力測定、関連のファッションイベントなどが催される。今年は7月にニューヨークとシカゴで9社が協賛して開催され、延べおよそ6万人の参加者を集めた。書籍も同誌の名を冠して今年下半期に2冊を刊行し、今後も毎年6~10冊を発行していく計画とのこと。

『ウーマンズ・ヘルス』からは、男性向け健康雑誌『メンズ・ヘルス』(Men’s Health)もスピンアウトした。この2誌は共同でインタビューを行うなど、うまく資源を共有している。アップルのiPhone向けアプリの開発もそのひとつだ。『ウーマンズ・ヘルス』は今年8月、有料アプリ “Women’s Health Workouts”の販売を開始。先月には痩身関連のショッピング情報を提供する無料アプリ “Your Slim-Down Shopping List”の配信を始めた。(『メンズ・ヘルス』のiPhoneアプリに関する記事はこちら。)

“A-List”に選ばれた他の雑誌は2位から順に、『Better Homes and Gardens』(Meredith Corporation)、『Family Circle』(Meredith Corporation)、『The Economist』(The Economist Newspaper Ltd.)、『People』(Time Inc.)、『Essence』(Essence Communications)、『The Week』(The Week Publications)、『Backpacker』(Cruz Bay Publishing)、『Cosmopolitan』(Hearst Communications)、『National Geographic』(National Geographic Society)の9誌。『The Economist』は昨年のマガジン・オブ・ザ・イヤー、『National Geographic』は2年連続の選出となった。また、2位の『Better Homes and Gardens』と3位の『Family Circle』を発行するメレディスは、パブリッシング・カンパニー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀出版社)に選ばれた。この件についてはまた別の機会に。

◆情報ソース
THE A-LIST MAGAZINES (Advertising Age)
Women's Health Is Ad Age's Magazine of the Year (Advertising Age)

米雑誌協会が発表した広告効果測定調査結果

米雑誌協会(Magazine Publishers of America: MPA)が雑誌、テレビ、オンラインを比較した広告効果測定調査結果を発表し、消費者の購買にいたるまでの行動に与える影響においては雑誌広告がもっとも効果的、かつコスト効率が高いと訴えている。

MPAが発表したのは、広告効果測定の専門企業、ダイナミック・ロジック(Dynamic Logic)が2004年から2009年までの間に行った39の調査の分析結果で、この中の10の調査では費用対効果(ROI: Return on Investment)も調べている。ダイナミック・ロジックはこれらの調査結果をデータベースに蓄積しており、それらを総合的に分析することにより、3つの媒体による広告が、5段階のパーチャス・ファネル(purchase funnel: 認知から購入まで、消費者の態度が変容していくステップ)の観点から消費者の態度にどのような影響を及ぼしたかと、その費用対効果を明らかにした。分析は、各媒体単体による効果と、複数の媒体を組み合わせた場合の両方において行われた。

広告効果の測定方法としては、プレ/ポスト(広告実施の前後にそれぞれ調査を実施して回答の違いを分析する方法)とコントロール/エクスポーズド(回答者を広告に接触していないグループと接触したグループに分けて、その違いを分析する方法)とがあるが、ダイナミック・ロジックは後者を採用している。また、同社はパーチャス・ファネルを次の5段階で説明している。

Aided Brand Awareness
ブランドの助成想起。ブランドのリストを提示し、回答者が知っているか知らないかを答える。

Ad Awareness
広告認知。特定のブランドの広告を回答者が見た覚えがあるか。

Message Association
広告に表現されているメッセージやコンセプトを、回答者がブランドと結び付けて認知しているか。

Brand Favorability
ブランド好感度。回答者が特定のブランドに対して好意的な見方をしているか。

Purchase Consideration/Intent
消費者が特定のブランドの購入を検討する/購入意向を持つ、パーチャス・ファネルの最終段階。

さて、前置きが長くなったが、以下は分析結果をグラフ化したものだ。MPAの資料では、テレビ広告のみのインパクト(数値の上昇ポイント)を基準に、テレビにオンラインを組み合わせた場合の増加分と、さらにテレビとオンラインに雑誌を組み合わせた場合の増加分を比較している。(図は発表された数値を筆者がグラフ化したもの)

Purchase fusionグラフ

ご覧のとおり、パーチャス・ファネルの5つの段階すべてにおいて、上昇ポイントの合計の3分の1以上に貢献しているのは雑誌だけである。また、”Brand Favorability”、”Purchase Consideration/Intent”においては、雑誌を加えたことによるインパクトが、テレビ単体およびオンラインを加えたことによるインパクトを大きく上回っている。つまり、商品の購買につながる広告効果が最も大きいのは雑誌であるというのがMPAの主張だ。

次に費用対効果だが、消費者一人当たりの広告費用は、下の表のようにパーチャス・ファネルのすべての段階において雑誌がもっとも効率的であることがわかった。

ROI一人当たり費用チャート

また、費用あたりの有効人数は、下の表のように”Message Association”をのぞくすべてのステージにおいて、すべての媒体/組み合わせの中で雑誌が最も多かった。

ROI費用当たり有効人数チャート

もちろん、これは異なる調査の結果を融合させた分析結果で、同じ雑誌でもどの雑誌を使用するかで結果は異なるだろうし、計測対象ブランドのカテゴリー(例えば一般消費財なのか、ファッションブランドなのか)によって媒体との相性もあるだろうから、一概に雑誌広告がもっとも効果的・効率的であるとは言い難いが、MPAとしてはオンラインに広告予算を奪われつつある中、こうした努力を重ねていくしか有効な手立てを見いだせずにいるということだろう。

◆情報ソース

Magazines Take Page Out Of Online's Playbook, Use Cross-Media Studies To Tout Cost Effects (MediaPost)
MPAのウエブサイト

ネット広告とデジタル・コンテンツ販売で出版社が協力態勢を模索

米国の競合する雑誌出版社が共同で、広告ネットワークの構築に乗り出したと『アトバタイジング・エイジ』(Advertising Age)が伝えている。

広告ネットワーク事業者がウエブサイトの広告の空き枠をまとめて買い上げ、それをネットワークの一部として販売するシステムに不満を持つ雑誌出版社は増えている。なぜなら、自社の抱えるオーディエンスへのアクセスを提供するにしては、広告ネットワーク事業者の買値はあまりにも安いからだ。ただ、雑誌社が単独で広告枠を販売するにはスケールが十分ではない。それが、出版社同士の広告ネットワーク構築の動機になっている。

これまでも、自社サイトへの広告配信を第三者である広告ネットワークの手に委ねることに異論を唱える出版社や、アシェット・フィリパッキ(Hachette Filipacchi)のJumpstart Automotive Mediaやマーサ・スチュアート・リビング・オムニメディア(Marth Stewart Living Omnimedia)のMartha’s Circのように、特定のテーマに関連したウエブサイトの広告ネットワークを独自に運営する出版社はあった。タイム(Time Inc.)も今年4月、自社の28のウエブサイトを横断する広告ネットワークTime Axcessのサービス開始を発表したばかりだ。『アドバタイジング・エイジ』のこの記事は具体的な出版社名は明らかにしていないが、複数の出版社が手を組むことにより大規模なネットワークが構築できれば、質の高いオーディエンスを対象にした行動ターゲティング広告も可能になるかもしれない。

出版社による連合は広告ネットワークの構築に留まらない。Amazon Kindleのような電子ブックリーダーの機能を備えたタブレット・デバイスをAppleが近々、市場投入すると噂されているが、その日に照準を合わせて、複数の出版社や新聞社がデジタル・コンテンツの販売拠点を構築するために話し合いを始めているという。音楽業界は楽曲販売のコントロールをiTunesに握られてしまった。また、Kindle向けのデジタル・コンテンツの販売はAmazonの支配下にあり、出版社や新聞社は価格を決めることも購読者に直接コンタクトすることもできない。

こうした状況を目の当たりにしてきた出版・新聞社が、二の轍を踏まぬよう活字媒体のiTunesを作ろうとしているらしい。『アドバタイジング・エイジ』は、ある出版社役員の「我々はカスタマー・リレーションを手中にする必要がある」とのコメントを紹介している。

◆情報ソース
Magazine Publishers Talk of Creating Online Ad Network (Advertising Age)
Time Inc. Launches Time Axcess (Reuters)
Magazine Industry Looks to Create ITunes for Print (Advertising Age)
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