A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2009年11月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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デジタル・コンテンツ販売に向けて出版社連合による新会社が誕生

10月13日のエントリーで、雑誌記事のデジタル版の販売に向けて複数の出版社が協力態勢を模索していると書いたが、それがいよいよ動き出すとニューヨーク・オブザーバー(The New York Observer)が伝えている。しかも、タイム(Time Inc.)、コンデナスト(Condé Nast Publications)、ハースト(Hearst Corporation)といったライバル関係にある大物たちが、手を携えて新会社を発足する見通しだという。

新会社設立に向けて音頭をとってきたのは、タイムの筆頭副社長であるジョン・スクワイアーズ氏(John Squires)だ。スクワイアーズ氏は去る10月14日、米雑誌協会(Magazine Publishers of America)が開催した「イノベーション・サミット」のパネル・ディスカッションでデジタル版販売拠点の共同構築を呼びかけ、他の出版社との会合を重ねてきたようだ。

新会社はアマゾン・キンドル(Amazon Kindle)のような電子ブックリーダー向けのEブックではなく、iPhone、ブラックベリー(BlackBerry)その他様々なプラットフォームで閲読できる、プリント版とはまったく異なるデジタル・コンテンツを開発し、iTunesのような方式で販売しようとしているらしい。そこではプリント版の雑誌も販売するという。OSも性能もデザインも異なる多様な機器に対応したコンテンツを準備し、それをワンストップで購入できるようにするというのは夢のような話だが……。

計画どおり進めば新会社は数週間以内に発足し、スクワイアーズ氏はタイムを離れて暫定的にこの会社の経営にあたるという。

◆情報ソース
Time Inc.'s Squires: Digital Magazine Consortium in the Works (MediaWeek)
Time Inc.'s Squires Assembles Team of Rivals to Harness Digital Media (The New York Observer)
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悪戦苦闘の続くビジネス誌

今年7月、米国の有力ビジネス誌の広告売り上げが危機的状況にあると書いた。その後10月に、3大ビジネス誌のひとつ、『ビジネス・ウイーク』の発行元マグロウヒル(McGraw-Hill Cos.)は、同誌を金融情報大手ブルームバーグ(Bloomberg LP)に売却した。残りの2誌、『フォーブズ』(Forbes)と『フォーチュン』(Fortune)も生き残りをかけて、スタッフの削減や発行回数の縮小を進めている。

『フォーブズ』は先週、600名のスタッフのうち100名のレイオフを実施した。同誌の経営陣は、軸足をデジタルに移すことを強調している。しかし、それでも同誌は90万人の有料購読者に向けて隔週で印刷版を発行し続けている。そのための経費は、ウエブの売り上げで補えるようなものではない。

「デジタルは確かに重要だが、すぐれた印刷媒体を発行するための編集経費を捻出できるほどの売上げはもたらさない。印刷媒体でも売上を確保できるようにするべきだ」と、あるビジネス誌のベテランは言う。

しかし、定期購読の売り上げも減少傾向にある。『フォーブズ』は昨年、定期購読一部当たり1.24ドルの売上を計上したが、2003年の一部当たり売上は1.58ドルだった。その差わずか34セントだが、これに定期購読者の数(886,483)と発行回数(年間27号)を掛け合わせると馬鹿に出来ない数値(およそ814万ドル)になる。

『フォーブズ』ではいまのところ、発行回数を減らす計画も、部数を削減したり定期購読料金を値上げしたりする計画もないようだ。一方の頼みの綱である広告の集稿ページは、PIB(Publishers Information Bureau)によると今年1~9月で、前年同期比31%減だった(『ビジネス・ウイーク』と『フォーチュン』はいずれも35%減)。

IBMは2004年に、3大ビジネス誌すべてで広告出稿額のトップ10に入っていた。昨年、同社は再びすべての雑誌でトップ10に返り咲いたが、出稿額はこの4年間に3誌合計で3,970万ドルから2,220万ドルに、44%も少なくなった。トヨタも2004年は、3誌すべてでトップ10アドバタイザーに入っていたが、昨年はどのビジネス誌のトップ10からも姿を消した。このように、かつては巨額の広告売り上げをもたらしていたクルマ、IT、金融などの業界が不況に直撃され、後退を余儀なくされているいま、ビジネス誌は新たなカテゴリーの広告主を開拓する必要に迫られている。

人員削減をしても状況は改善しないと指摘する人もいる。独立系のメディア・エージェンシー、ターゲットキャスト(TargetCast)の筆頭副社長、オードリー・シーゲル(Audrey Siegel)氏によると、「(出版社では)ビジネスについて詳細な話ができる人材がどんどん少なくなっている。人員削減は、長期的にみると商品の質を損なうことになる。」

『フォーチュン』は販売収益の改善に取り組んでいる。同誌は、現在年間24号の発行回数を18号に減らして読者の反応を見る計画だ。年間購読料金は据え置く予定だから、これは実質的な値上げだ。昨年、同誌の一誌あたりの年間購読売上げはわずか83セントだった。2003年には1ドル43セントだったから、大幅な値下げをしていることになる。これは、購読部数を拡大して広告売り上げを支えるためだが、その結果、広告依存度が強まり、広告売り上げが不調のいま経営を圧迫する大きな要因になっている。その意味では、販売と広告の収益をバランスのとれたものにするための施策だ。同誌はまた、ネット上のコンテンツの多くが速報型である点を考慮して、プリント版ではひとつの題材を深く掘り下げた記事や実用的な上方にシフトしようとしている。

一方で、『フォーチュン』の発行元タイム(Time Inc.)は、同誌からスピンオフしたアメリカン・エクスプレスのカードホルダー向けの無料会員誌『フォーチュン・スモール・ビジネス』(Fortune Small Business)の発行を、今年12月を最後に打ち切ることを決めた。同誌の広告売り上げがここ数年、大幅に減少しているためだ。同社はまた、経費削減策の一環として昨年およそ600名のレイオフを実施したが、さらに今年から来年にかけて400~500名の人員削減を行う計画だ。

ブルームバーグに買い取られた『ビジネス・ウイーク』はどうか。ブルームバーグのチーフ・コンテンツ・オフィサー、ノーマン・パールスタイン(Norman Pearlstine)氏は先週、同誌の記事の数とページ数を増やし、国際的な記事を拡大し、紙質を厚いものにする計画を発表した。また、同誌のウエブサイトでは、無料で閲覧できるコンテンツに加えて、年間100ドル程度を支払ったユーザーだけがアクセスできるコンテンツを新設する計画だという。編集陣の入れ替えも行われるようだ。

ブルームバーグはいまだに印刷媒体の可能性を信じているかのようだが、今後、景気が回復してもビジネス誌の広告売上げが好調時の水準に戻る可能性は極めて低いだろう。どのビジネス誌も(ビジネス誌に限った話ではないかもしれないが)、広告依存型のビジネスモデルからの脱却が大きな課題となっている。

◆情報ソース
Business Magazines Face Harsh Reality (Advertising Age)
Bloomberg to Build Out 'Business,' Set Web Strategy (MediaWeek)
Time Warner: More Layoffs, 'Fortune Small Business' Shuttered (MediaPost)

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