A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2010年03月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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電子書籍化―日米の動き

アップルが1月にiPadを発表してから、新聞社や出版社は自社媒体のiPad向けバージョンの開発を加速させている。そのトップランナーのひとつがコンデナスト社(Conde Nast)だ。

同社は4月にiPadが出荷されるのと同時に、雑誌『GQ』のiPad版電子雑誌の販売を開始すると発表した。また、これに続いて『ワイアード(Wired)』と『ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)』は6月号から、その後年内に『ニューヨーカー(The New Yorker)』と『グラマー(Glamour)』のiPad版も販売する予定だ。ガネット(Gannett)も近い将来、フラッグシップ紙である『USAトゥデイ』のiPad版電子新聞の発行を始めると発表した。コンデナストはすでに、『GQ』をはじめ有力誌のiPhoneアプリを発表している。また、ガネットの『USAトゥデイ』もiPhoneとiPod Touchで読める。

既存媒体のデジタル版ではなく、オリジナルなiPhoneアプリの開発チームを立ち上げた出版社もある。ハースト社(Hearst Corp.)はLMK(Let me knowの略)と呼ばれる部隊を編成し、同社が得意とするスポーツや芸能などをテーマとしたiPhoneアプリを開発。99セントで販売しており、今後もさらに多くの商品を市場に送り出す予定だ。

ここに登場したコンデナスト、ハーストなどの大手出版社は、昨年、元タイム(Time Inc.)の筆頭副社長ジョン・スクワイアーズ氏(John Squires)が発起人となってスタートした、デジタル雑誌の販売拠点の準備組織の一員でもある。この準備組織には “Next Issue Media”というワーキング・ネームが付けられ、発起会社として3社のほかにメレディス(Meredith)とニューズ(News Corporation)も名を連ねている。すでにウエブサイトも立ち上がっており、そこには雑誌だけではなく「新聞、書籍、ブログ等々、あらゆる有料コンテンツの流通を担う出版プラットフォームを目指す」と謳われている。

日本ではどうだろうか。上記のコンデナスト社の動きは米国に限ったことではなく、日本でも3月16日に、コンデナスト・ジャパンが雑誌「VOGUE NIPPON」「GQ JAPAN」「VOGUE HOMMES JAPAN」のiPad版電子雑誌を開発中であると発表した。その翌日の新聞では、政府が本や雑誌をデジタル化した電子書籍の普及に向けた環境整備に着手したとのニュースが掲載された。その一歩として官民共同の懇談会が開かれ、作家や出版者、新聞社、印刷会社、書店、通信事業者、メーカーの代表者が出席したという。

今後は、コンデナスト・ジャパンのように独自路線を歩む企業と、業界団体を中心に共同歩調を取っていこうという動きが並行して進んでいくのだろう。官民・業界団体をベースにした動きには、負け組を作らない、あるいは、いまの出版業界の体制をデジタル・コンテンツの流通においても温存していこうという意図が垣間見える。元マイクロソフト社長の成毛眞さんがツイッター(@makoto_naruke)で、「日経3頁「電子書籍官民で統一規格」米国じゃ競争、日本じゃ官民。会議の座長は78才。有識者74才、権利者75才と62才、新聞社75才。スゴイネ。」と嘆いていたが、未来の電子書籍リーダーのユーザー(おそらくその中心は若者たちだろう)が歓迎するのはどんなものなのかを視座に最適化を図るのでなければ、ダイナミックな動きを見せる外国企業にかなわないだろうし、紙からデジタルへの移行は、流通をはじめとする業界構造にも大きな変革をもたらすはずだ。それをビジネスチャンスにしようという発想がなければ、業界総負け組、またひとつ日本がガラパゴス化するという最悪の事態にもなりかねない。

◆情報ソース
Publishers Plan New iPad Products (MediaPost)
Hearst Jumps Into the Apps Business (The Wall Street Journal)
コンデナスト、VOGUE NIPPONなど3誌のiPad版電子雑誌アプリを開発 (CNET Japan)
電子書籍に統一規格、流通や著作権を官民で整備 (NIKKEI NET)
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