A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 2010年12月

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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ラガルデールが海外雑誌ビジネスを売却か

『エル』(ELLE)、『カー・アンド・ドライバー』(Car and Driver)などの世界的な雑誌ブランドを持つ仏ラガルデール社(Lagardère SCA)は12月1日、フランス以外の国で展開している雑誌ビジネスの売却を検討していることを明らかにした。広報の発表をそのまま訳すと「他社との提携、ジョイント・ベンチャー、売却などあらゆる可能性を念頭に非公式な交渉を行っている」ということだが、同社の希望は「売却」であると考えてまちがいないだろう。(ただし、ラガルデールは雑誌を手放すにしても『エル』の編集上のコントロールは保持する意向。)

同社傘下のラガルデール・アクティブ(Lagardère Active)は、雑誌出版、ラジオ、テレビ、デジタル事業などからなるメディア・コングロマリットで、フランス以外では42カ国で200タイトル以上の雑誌を発行している。今年10月には『エル』(ELLE)ベトナム版を創刊したばかり。日本のアシェット婦人画報社や米国のアシェット・フィリパッキ・メディアの親会社である。

米国ではだいぶ以前から、アシェットが一部の雑誌あるいは会社を丸ごと売却するのではないかとの噂が囁かれていた。そのときに、常に買い手の一番手として名前があげられるのがハースト(Hearst Corp.)だった。同社とアシェットはマリ・クレール(Marie Claire)をジョイント・ベンチャーで発行する関係にあり、これに『エル』と『エル・デコ』(Elle Décor)を加える相談もあったようだ。今回もハーストは交渉相手の筆頭と目されている。ラガルデールが同社に5億ドル以上の売却金額を提示したとの報道(ニューヨーク・ポスト)もある。

アシェットもご多聞にもれず、リーマンショック以降の不況のあおりを受け、業績が低迷していた。デジタル関連事業のテコ入れもうまくいかず、一昨年ラガルデール・アクティブから送り込まれたAlain Lemarchandが今年9月、CEOの職から退き、ソース・インターリンク(Source Interlink)の元CEO、Steve Parrが就任したばかり。とはいっても、広告ビジネスが上向きになっている雑誌もある。例えばPIBの統計で今年1~9月の広告集稿ページを昨年同期と比較すると、『エル』が8.9%増の1,548ページ、『カー・アンド・ドライバー』が4%増の608ページだった。それでも金食い虫の雑誌ビジネスでは利益の回復は見込めないとの判断なのか。

◆情報ソース
Lagardère May Sell Foreign Magazine Business (The Wall Street Journal)
Hearst hungry for French deal (New York Post)
Hearst May Buy Hachette Titles (MediaPost)
【“ラガルデールが海外雑誌ビジネスを売却か”の続きを読む】
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雑誌社とiPadの距離

ネクスト・イシュー・メディア(Next Issue Media)は来年第1四半期中に、デジタル・ニューススタンドをオープンさせる予定だ。当面は同社の立ち上げメンバーであるコンデナスト(Condé Nast)、ハースト(Hearst)、メレディス(Meredith)、ニューズ(News Corp)およびタイム(Time Inc.)の雑誌(紙とデジタルの両方)を販売し、徐々に他社の出版物も追加していくとのこと。

出版社にとって、このニューススタンドを通して販売する最大のメリットは、読者情報へのアクセスが許されることだろう。読者情報がなければ、年間予約購読などのダイレクトマーケティングも広告主に読者プロフィールを提示することもできない。

アップルはいまだに読者情報へのアクセスを認めていない。したがって、ネクスト・イシュー・メディアがデジタル・ニューススタンドでiPad向けに雑誌のデジタル版を販売する見通しは立っていない。いまのところは、アンドロイド端末を念頭に準備を進めているのだと言う。ゆくゆくはiPadをはじめすべての端末やウエブOSにも対応していくとのことだが、その前途は厳しそうだ。(とはいっても、タイム社はiPad向け『スポーツ・イラストレイテッド』(Sports Illustrated)を、コンデナストはiPad向け『ワイアード』(Wired)を発売しており、全方位外交を展開している。)

一方、iPadにご執心なのがニューズ社のルパート・マードック会長(Rupert Murdoch)とヴァージン・グループ(Virgin Group)のリチャード・ブランソン会長(Richard Branson)だ。

ニューズ社はマードック会長の号令のもと、iPad専用の日刊新聞『ザ・デイリー』(The Daily)を今月創刊させるために社内外から多くのスタッフやジャーナリスト、評論家を起用し、準備を進めている。ブランソン会長肝いりのiPad専用雑誌『プロジェクト』(Project)は、創刊号がすでにiPad App Storeで販売されており(定価は$2.99)、iPadの情報サイトに紹介記事が掲載されている。

この創刊に先立って11月30日に開かれた記者会見でブランソン会長は、同誌の収入源は販売収入と広告収入であること、創刊号の広告主はレクサス、アメリカン・エクスプレス、フォード、クローネンバーグであること、いまはiPad専用に設計されiPadでしか読むことができないが他のタブレット端末向けの発行も可能性があることを発表した。

◆情報ソース
Next Issue Newsstand to Launch With Limited Offerings (Mediaweek)
News Corp. Tablet Daily Staffs Up (Mediaweek)
Branson's Project vs. Murdoch's Daily (Mediaweek)

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