A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 雑誌の表紙は広告スペースではない と言い切れるか

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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雑誌の表紙は広告スペースではない と言い切れるか

いま発売中の米『エスクァイア(Esquire)』2月号は、あろうことかオバマ大統領のイラストの顔の部分が切り抜きの扉になっており、開くと掲載記事の引用と並んで、ディスカバリー・チャンネル(Discovery Channel)の新番組、「One Way Out」の広告が現れる仕組みになっている。このスペシャル・ユニットのお値段は、製作費と本文1ページ広告の掲載料と合わせて25万ドル。同誌は6月号でも、表紙にプルタブのついた広告(広告主はBMW)を予定しているとのこと。

Esquire window cover

広告不況の中、斬新なアイデアで売り上げを確保しようとする努力の見本のような広告だが、これにコンデナスト社の『ポートフォリオ(Portfolio)』誌が疑問を呈している。米雑誌編集者協会(American Society of Magazine Editors: ASME)の定めるガイドラインに抵触しているのではないかというのだ。

米国の雑誌業界では、記事と広告に一線を画すためにガイドラインが設けられている。それは、「広告面と編集面が読者にとってはっきり区別できるようにする」という読者保護と、「編集は広告主の影響や圧力を受けない」という編集の独立性保証の観点から設けられた規定だ。例えば、アドバトリアル(記事形式の広告)では、記事と同じタイポグラフィ(活字)を用いることはできず、広告であることを明示しなくてはならない。表紙についても、「編集スペース」であり広告主は立ち入ることができないと、厳密に規定されている。では、『エスクァイア』は上の広告を掲載するにあたり、事前にASMEの了承を得ていたのか。

この点を『ポートフォリオ』がASMEのシド・ホールト(Sid Holt)会長に確認したところ、答えは「ノー」だった。そして、もし事前に問い合わせがあれば、「この広告はASMEのガイドラインに違反しているとは思わないが、実現すると我々は大変困った立場になる、と答えていただろう」とのこと。

実は、ホールト氏が会長に就任してから、ASMEはガイドラインの見直し作業に着手した。現ガイドラインは、テレビがプロダクトプレースメント広告で売上を上げているいまの時代にそぐわなくなっているのではないか、という会員社の声が大きくなってきたからだ。確かに、厳格なガイドラインは広告営業の面では足かせになっている。しかも、見直しを求めているのは広告担当者だけではない。『アドバタイジング・エイジ』の取材に応えて、「ASMEなどくそくらえ。読者にとっておもしろければ、何だっていいだろう」と主張している編集者も、一部ではあるにしてもいるのだ。

もともと、ASMEのガイドラインはあまり強力な強制力を発揮してはこなかった。2003年には、ファッション・ブランドのGapのモデルに起用されていたマドンナの写真を、『ハーパース・バザー(Harper’s Bazaar)』誌が表紙に掲載した。問題となったのは、マドンナがGapの服を着ていたばかりでなく、使用された写真がGapの広告のアウトテイクだったことだ。同誌は昨年7月号でも、エスティ・ローダー(Estée Lauder)の新しい香水「センシュアス(Sensuous)」の広告に起用された4人の女性、女優のグウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)、エリザベス・ハーレー(Elizabeth Hurley)、モデルのキャロリン・マーフィー(Carolyn Murphy)、ヒラリー・ローダ(Hilary Rhoda)を表紙に掲げ、記事ページでは40ページを割いて彼女たちを特集した。

Harper's Bazaar Sensuous models cover


『エスクァイア』も昨年2月号で、ビクトリア・シークレット(Victoria’s Secret)のモデル4人をそろって表紙に起用し、そればかりでなく、男性向けの「ランジェリー・ショッピング・ガイド」と銘打って9ページを割いて下着姿の彼女たちの写真入りの記事を掲載した。この記事で取り上げられている女性下着は、すべてビクトリア・シークレットの商品だった。

Esquire Victoria's Secret cover


この『エスクァイア』のケースなどは、あきらかにやりすぎだろう。新香水「センシュアス」のキャラクター4人を特集した『ハーパース・バザー』は、よく売れたそうだ。つまり、読者に支持されたということになるが、それにしても香水のキャンペーンに大きく寄与したのはまちがいない。(この記事の仕掛け人は、エスティ・ローダーのグループ・プレジデント、John Demsey氏だったと、『ポートフォリオ』は暴露している。)余談だが、この2誌の発行元はハースト社(Hearst Communications Inc.)だ。どうもハースト社は、確信犯的にASMEガイドライン破りをやっている節がある。

雑誌業界には、ASMEガイドラインの見直しではなく尊守を主張する声もある。冒頭に紹介した『エスクァイア』の「扉」広告も、ASMEの役員ばかりでなく広く編集者たちの間で論議の的になったという。『エスクァイア』のような有力誌が前例を作ることにより、それが雑誌界全体に波及して倫理が荒廃し、編集者の立場が脅かされることを懸念する関係者もいる。

それでも、ガイドラインはきっと規制緩和の方向に向かうのだろうが、問題はガイドラインの文言をどのように改めるかではない。目先の広告ビジネスが欲しいあまり、読者をないがしろにするようなことを続けていると、読者離れをますます加速させることになる―そのことを心配すべきだろう。読者は、以前よりもはるかに広告(的なもの)に敏感なっている。巧妙に記事を装っても広告の匂いをかぎ分ける臭覚を備えている。インターネットの普及で、業界情報にも通じている。読者はもはや、その昔、ASMEのガイドラインが制定された時代のように、無垢でだまされやすい「保護すべき」存在ではなくなっているのだ。だから、少しでもなめた真似をするとそっぽを向かれる。逆に、読者がおもしろいと感じれば、これ見よがしの広告でも受け入れられるだろう。(その意味で、上の『アドバタイジング・エイジ』の取材に答えた編集者の発言は的を得ている。)読者なしでは広告は成り立たないという当たり前のことを、雑誌出版社も広告主も、最大のガイドラインにすべきだ。

◆情報ソース
Open Here・to Peek at Esquire’s Articles and Ad (New York Times)
Does 'Esquire' Cover Ad Sell Out Everyone Else? (Portfolio)
The Magazine Industry's Crisis of Conscience (Portfolio)
As ASME Fortifies Ad/Edit Divide, Some Mags Flout It (Advertising Age)
Advertising 1, Journalism 0 (Portfolio)
'Esquire's' Not-So-Secret Shame (Portfolio)
A Cover, 40 Pages, 4 Faces and One Perfume (New York Times)



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