A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 我らが新聞を救う方法

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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我らが新聞を救う方法

米誌『タイム(TIME)』の元編集主幹、ウォルター・イザクソン(Walter Isaacson)氏が同誌の先週号に、「我らが新聞を救う方法(How To Save Your Newspaper)」と題する提言を寄稿した。

オリジナルの記事は2200ワードを超す長文だが、イザクソン氏の主張を少し乱暴に要約すると以下のようになる。
●新聞記事はかつてないほど多くの読者を獲得しているが、問題はその対価を支払っている人が少ないことだ(ピュー・リサーチ・センターの調べによると、米国では昨年、新聞や雑誌を有料で読む人の数を、オンラインで無料で読む人の数が上回った)。
●多くのプリント・メディアがオンラインでは、無料で記事を提供し、広告を主要な収入源としている。これは危険で、タイムの創設者であるヘンリー・ルースの言葉を借りれば「モラルに反する」と言える。なぜなら、広告への依存が高まると、景気の後退期に立ち行かなくなるし、ジャーナリズムとは第一義を読者に置くべきだからだ。
●したがって、今年は出版社や新聞社が提供する記事やサービスに、ユーザーが料金を支払うモデルの復活の年とすべきだ。とはいっても私は、ウォール・ストリート・ジャーナルのように月極めの購読料を課金するのが唯一の方法だとは思わない。特定の日の記事だけを読みたい人や、興味深い記事へのリンクに誘われて新聞社のサイトを訪れる人もいるからだ。
●そこでカギとなるのが、少額の都度課金を可能にするマイクロペイメントの技術だ。かつてインターネットの世界は、マイクロペイメントで失敗した企業であふれていたが、時代は変わった。スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)はiTunesによって、楽曲をネットを通じて一曲あたり99セントで販売することに成功しているし、Amazonのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)はKindleの発明によって、電子書籍・雑誌・新聞を人々が購入することを証明した。同じように、ワン・クリックで記事や動画の視聴を購入できる、シンプルなインターフェースのシステムができるはずだ。

新聞社救済の手段として、記事の有料化やマイクロペイメントに言及したのはイザクソン氏が初めてではないが、彼の記事をきっかけにして、反対意見をウエブ上で表明する人が相次いでいる。その多くは、新聞社というよりも地元有力紙である『ニューヨーク・タイムズ(New York Times)』の救済策の議論にすり替わってしまっているのだが…。

雑誌『コンデナスト・ポートフォリオ(Condé Nast Portfolio)』のフェリックス・サルモン(Felix Salmon)記者は、自分が『ニューヨーク・タイムズ』の記事を引き合いに出すのは、同紙に権威があることに加えて、ウエブ上の記事へのパーマリンクを同紙が壊すことがないからで、その記事が有料化されたら『ガーディアン(Guardian)』や『ロイター(Reuters)』の記事を参照先にするだけだ。一般のユーザーも同様に、無料サイトのニュースを見に行くようになるだろう、と述べている。

また、オンラインマガジン『スレート(Slate)』でガブリエル・シャーマン(Gabriel Sharman)氏は、iTunesは新聞救済のモデルにならないと主張している。iTunesのユーザーが楽曲のダウンロードに99セント支払うのは、それが永久に自分の資産として利用可能になるからだ。加えて、確かにネット上で合法的にダウンロードされた楽曲の数は、昨年だけで14億曲におよんだが、その一方で非合法にやり取りされている楽曲の数は400億以上と推計されている。アップルがiTunesのサービスを続けているのは、それがiPodやiPhoneの販売につながるからだ。ジャーナリズムや書籍は、文化的な価値は高いが、残念ながら音楽や動画ほどの需要は見込めない。電子書籍が受け入れられているといっても、AmazonのKindleの販売台数は累計でわずか50万台である。iTunesのサービスが機能しているのは、同サービスが開始された2001年に、音楽業界がいっせいに無料の楽曲提供を(合法的なサイトでは)しなくなったからだ。対して、無料で提供されるニュースは山ほどある。
新聞社が危機に直面しているのは、iPodのような端末がないからではなく、民主主義を支える優れたジャーナリズムを無料で手に入れられる環境が、人々にとって電気や水のように当たり前の存在になってしまったからだ、という。

こうしてみると、どうもマイクロペイメント否定派に分があるように思える。かといって、いまのままオンラインで無料の記事を配信し、いくらユーザー数やページビューを増やして広告ビジネスをテコ入れしても、赤字を補てんできるほどの売り上げは、まず実現できないだろう。(オンライン版に専念して、紙版の印刷・配送費をなくした場合、バランス・シートがどのようになるかは、データがないためわからない。)

『コンデナスト・ポートフォリオ』のサルモン記者は、定期購読者が新聞社の株を買い取り資金調達を助ける方法なら、救済策になるかもしれないと書いている。また、米イエール大学の基金運営責任者で著名な投資家であるデビッド・スウェンセン(David Swensen)氏と投資アナリストのマイケル・シュミット(Michael Schmidt)氏は、ニューヨーク・タイムズに共同で寄稿した記事で、基金のようなものを設け、その利息で運営してはどうかと提言している。ニューヨーク・タイムズの年間の運営コストは約2億ドル。年利5%としても、50億ドルもの基金が必要になるのだが。

自力で再生できるビジネス・モデルは見つからないのだろうか。取り返しのつかない事態になる前に、米国の健全なジャーナリズムに道が開けることを願うばかりだ。

◆情報ソース
How to Save Your Newspaper (TIME)
Why Micropayments Won't Work for the NYT (Condé Nast Portfolio)
Time to the Rescue of Failing Papers? (MediaPost)
Micro Economics Why Steve Jobs and micropayments won't save the media (Slate)
News You Can Endow (New York Times)



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