A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 Condé Nast Portfolio廃刊の原因は?

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Condé Nast Portfolio廃刊の原因は?

すでに伝えられていることだが、去る4月27日、コンデナスト社の大型ビジネス誌『コンデナスト・ポートフォリオ(Condé Nast Portfolio)』(以下『ポートフォリオ』)の廃刊が発表された。非常にスタイリッシュで、脂ぎったところのない知的なビジネス誌として注目していただけに残念なニュースだ。わずか2年前に鳴り物入りで創刊されたこのビジネス誌が、廃刊に至った原因を『アドバタイジング・エイジ(Advertising Age)』が記事にしている。

CondeNast Portfolio cover


『ポートフォリオ』は「スマートで、本質を突き、いくらかのセックスアピールもある」ビジネス誌を目指して、2007年4月に創刊された。それは2005年8月に、コンデナスト社のサイ・ニューハウス(Si Newhouse)会長が、新ビジネス月刊誌の創刊に向けて、ジョアンヌ・リップマン(Joanne Lipman)を編集責任者、デイビッド・ケアリー(David Carey)を発行人として指名した時からのコンセプトだった。当時は経済状況も良かったため、コンデナスト社は創刊までに長い時間をかけた。それが最大のまちがいのひとつである。それから創刊までのおよそ2年間、人材の確保、企画、プロモーションに巨額の投資をしている間に、「セクシー」の意味するものが変容してしまった。つまり、テストイシューが発刊されてから、月刊誌としてスタートするまでの4カ月の間に、景気は後退期に突入してしまった。そして、2008年から今年にかけて、『ポートフォリオ』の掲載広告の80%を占める5つのカテゴリー(金融サービス、B2B、車、ビジネス・トラベル、高級品)の市場は急速に冷え込んでいった。

景気後退の影響で廃刊に追い込まれた雑誌は、『ポートフォリオ』以外にも数多くある。コンデナスト社の『ドミノ(Domino)』もそのひとつだ。しかし、広告ビジネスの不調が『ポートフォリオ』廃刊の原因のすべてではないと指摘する人もいる。

2007年初めから昨年8月まで『ポートフォリオ』の編集者だったジェフリー・チュー(Jeffrey Chu)氏は、リップマン編集長の指導者ぶりに疑問を投げかける。「入社前に彼女は、あらゆるものをビジネス・ストーリーにしていくと語っていたが、編集部に入ってみるとそれは違った。実際は、富裕層の人たちや、ヘッジファンドや財テクなど金持ちが喜ぶ話題ばかりを記事にするように強いられた。ある程度知られている世界の人たちを取り上げ、その人たちを豪華に飾り立てるような記事ばかりだった。」他の編集者にもチャンスを与えてほしいと願っていたスタッフはたくさんいる、とチュー氏は言う。

対してリップマン編集長は、自分の編集上、組織管理上の決定に間違いはなかったと反論し、「新しいものを生み出すために、スタッフには自分が快適だと感じるものから踏み出すことを強いた。そのために高いハードルを設定したから、それを不愉快に感じた人はいただろう」と語っている。発行人のケアリー氏も編集に問題はなかったと言い切る。「(廃刊が決まった後)企業のCEO、CMOをはじめ多くの人たちから、『ポートフォリオ』を読むのが楽しみだったというメールが山ほど届いた。」

『ポートフォリオ』の編集内容が評価されていたのは確かだ。同誌は昨年、ナショナル・マガジン・アウォードを受賞したほか、ビジネスジャーナリズムにおいて最高の賞と言われるジェラルド・ローブ賞でも3部門にノミネートされた。読者も間違いなく獲得していた。昨年下半期の同誌の有料予約購読者の数は、上半期よりも43%多い335,612人に達した。同じ時期に、店頭実売数は11%下落したが、それは多くの人が予約購読に移行したからだとコンデナスト社は分析していた。しかしこのころ、同社は2009年を乗り切るために『ポートフォリオ』の多くのスタッフをレイオフし、発行回数を年回12号から10号に減らす決断をした。ウエブサイトの運営にかける人員も大幅に減らした。その影響か、昨年11月に月間170万人まで増えたユニークビジター数は、今年3月には957,485人まで減少した。

コンデナスト社は、『ポートフォリオ』の創刊に莫大な投資を行った。当初の予定投資額は、5年間で1億ドルと言われている。同誌のスタッフ数はピーク時に140名を数え(人員削減後も85名が働いている)、高収入の編集者たちは、会社の経費で高級レストランでのランチを楽しんでいた。一方、予約購読者には年間12ドル(1号あたり1ドル)という廉価で雑誌を販売したため、広告収入に大きく依存せざるを得ない財務体質になっていた。

Media Industry Newsletterによると同誌の今年1‐4月期の広告集稿ページ数は、昨年同期のわずか39%まで落ち込んだ。昨年の方が発行回数が1号多いことや、コンデナスト社が他社に比べディスカウント率が低いことを勘定に入れても、致命的な下げ幅である。

莫大な投資と長い期間をかけて揺るぎない雑誌ブランドを築き上げ、その後販売と広告の両面で安定した売り上げをあげ資金回収を行っていくのが、これまでのコンデナスト流だった。しかし、雑誌を取り巻く状況も読者や広告主の認識も大きく変わりつつある。『アドバタイジング・エイジ』が書いているように、コンデナスト流で創刊される雑誌は二度と現れないのかもしれない。

◆情報ソース
Down Market: Conde Nast Shutters 'Portfolio' (MediaPost)
Why Conde's Cocktail of Sex Appeal, Biz News Failed (Advertising Age)

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