これで月々800円程度で各社が発行するニューヨーカー(The New Yorker)、エスクァイア(Esquire)、エル(ELLE)、ベター・ホームズ・アンド・ガーデンズ(Better Homes and Gardens)、フォーチュン(Fortune)、ピープル(People)等の雑誌を制限なしで読めるようになるが、多くの月刊誌はタブレット版を1号あたり1.99ドルで定期購読できるので、月に5誌以上の雑誌を読む人でないと得することにならない。
ただし、毎月好きな雑誌を選んで読めるというメリットはある上、雑誌ごとに異なるアプリをダウンロードする煩わしさもない。この点、読者にとっては朗報だろう。伸び悩んでいると言われているタブレット版雑誌の販売部数も、これがきっかけで増えるかもしれない。
ネクスト・イシュー・メディアのサービスで読むことのできる32誌は、合計すると総読者数が3億5千万人、年間広告売上は80億ドルに達するという。同社では上記5社以外の出版社の参加も促して、これを100誌程度の規模に拡大する意向だ。購読料売上は読まれた雑誌に応じて参加出版社間で分配するようだ。
それだけではない。ネクスト・イシュー・メディアは広告もワンストップで複数の雑誌に掲載できるようにしようとしているらしい。しかし、広告料金体系や掲載ポリシーの異なる出版社が、窓口を一本化するのは容易ではないはずだ。
例えば、デジタル雑誌の場合、広告面から直接、特定のウエブページに読者を誘導できるのは広告主にとって魅力だろうが、このホットリンク(直リンク)の料金設定ひとつとっても出版社によってばらばらだ。コンデナストの雑誌では、ひとつの広告からひとつのURLにリンクをはると5,000ドルの追加料金がかかる。タイムはURLがひとつなら無料。ハーストはいくつリンクをはっても料金はかからない。
また、コンデナストは先月、タブレット端末向け雑誌の広告主のために、閲読状況に関する統計の提供を開始した。この統計をもとにした広告効果測定も可能だろうから、広告主は他社にも同様のデータの提供を求めるはずだ。ネクスト・イシュー・メディアが異なる出版社の雑誌に広告を掲載する窓口になるのなら、このような広告主の要望も同時に受け付けなくてはならないことになる。
ちなみに、コンデナストが提供するのは以下のようなデータだ。
■有料定期購読者と単号購読者の数
■当該号を実際に開いて読んだ読者の数(紙版定期購読の特典としてデジタル版を入手した読者も含む)
■読者が当該号を開いた回数
■読者が閲読に費やした時間
さらに、プレミアム広告、あるいは少なくともホットリンクを購入した広告主には、以下のデータも提供する予定だという。
■当該広告を見た読者の数
■広告が表示された回数のトータル
■読者が広告に接触した時間の平均
■上記すべての統計に関して、当該号全体の平均値との比較
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