A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 大変革に直面するロサンゼルス・タイムズ

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

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大変革に直面するロサンゼルス・タイムズ

米紙ニューヨーク・タイムズが2月19日付の記事で、ロサンゼルス・タイムズ(以降LAタイムズ)の現状を象徴するような、こんなエピソードを紹介している。

昨年、LAタイムズは、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに名前を刻まれることになった。ショービジネス界で活躍した人の名前が刻印された星型のプレートが2000以上連なり観光名所となっている、あの歩道だ。2006年10月に親会社のトリビューン社(Tribune Company)からCEO兼発行人としてLAタイムズに送り込まれたばかりのデイビッド・ヒラー(David Hiller)氏は、喜んでプレート設置のセレモニーに参加し、それを記事にするように編集部に命じた。しかし、編集部からは見苦しい自画自賛の売名行為だとして猛反発を受け、ヒラー氏はこの命令を撤回せざるを得なかった。

当ブログの4月2日のエントリーでも触れたとおり、LAタイムズも、米国の新聞社の例にもれず販売と広告という両輪の不振にあえいでいる。親会社のトリビューン社は昨年、不動産王のサミュエル・ゼル(Samuel Zell)氏に身売りし、プライベート・カンパニーになった。ヒラー氏は経営を立て直し、新しいボス(ゼル氏)の信任を得なくてはならない。

一方、編集部門には、ヒラー氏に対して大きな不信感があるようだ。彼は、シカゴからロサンゼルスに来たよそ者であり、ジャーナリストの経験がない(法律事務所の出身)。ウォーク・オブ・フェームの件にしても、業績不振のときに余計な金など使っていられないだろうという皮肉な思いがあっただろう(ウォーク・オブ・フェームに名前を刻印されるには、ハリウッド商工会議所に25,000ドルを支払わなくてはならない)。

こうした経営サイドと編集部門の間の溝を深めるような出来事が続いている。先月、編集局長のジェームズ・オシー(James O’Shea)氏が、編集部門の人員削減案に反対して退任した。編集部門のスタッフは過去8年間に、1200名から870名まで削減されている。ミラー氏はさらに今年、40~50名のスタッフ削減を行う考えだ。加えて今週月曜には、編集部門のNo. 2であるジョン・モントリオ(John Montorio)氏が、今月いっぱいで退任すると発表した。

ごたごたは続く。6月10日付のニューヨーク・タイムズ紙は、LAタイムズが、月刊のサプルメントその他、本紙以外の記事のコントロールを編集部門から経営サイドに移し、編集スタッフも総入れ替えをする計画を立てているというリーク情報を記事にした。すでに先月から動きがあり、編集局長のラス・スタントン(Russ Stanton)氏も知らない間に、編集スタッフが採用され、特集の企画が練られたり、表紙のデザインが作られたりしていたらしい。これが本当だとしたら、経営陣は編集に干渉しないという米新聞業界の伝統が破られたことになる。

そして今日(6月11日)、当のLAタイムズが、従来の編集部門は7月号以降、月刊サプルメントの編集を行わないと報じた。ニューヨーク・タイムズの記事のとおり、ヒラー氏は編集部門から独立したスタッフにより、新しいサプルメントを(早ければ8月から)出版するための話し合いを進めていたとのこと。

こうした騒動とは別に、トリビューン社のオーナー、サミュエル・ゼル氏とCOOのランディ・マイケルズ(Randy Michaels)氏は先週、同社傘下企業の発行する新聞(LAタイムズ、シカゴ・トリビューンなど13紙)の記事を週あたり合計500ページ削減し、広告との割合を50:50にすると発表した。LAタイムズは週あたり82ページ、記事を減らすことになる。記事を減らすということは、紙代や印刷コストの縮小につながるだけではない。その分の編集スタッフも不要になるということだ。ランディ・マイケルズ氏は、編集スタッフ一人あたりのコンテンツの生産性を精査した結果、余剰な人員が多数いることがわかったと述べているらしい。

ゼル氏とマイケルズ氏の連名で、トリビューン社の社員宛てに出されたメモには次のように書かれている。

当社のビジネスをつぶさに研究した結果わかったのは、現在の新聞のモデルはもはや機能しないということだ。次の2点に示した通り、当社のビジネスは供給と需要のバランスが崩れている。

1. 我々は読者に、読者が望むものを提供していない。
2. 我々は自分たちの許容量以上に大型の新聞を発行している。

まず、当社の出版ビジネスは―それは文字どおり、「ビジネス」である―顧客を中心としたモデルに作り直す必要がある。私たちはトリビューン社が過去数年にわたり行ったいくつもの読者調査を精査し、読者は以下のものを欲しているという、明白かつ一貫した分析結果にたどり着いた。

*バイアスのかかっていない、率直なジャーナリズム
*各地域の消費者や地域社会にかかわるニュース
*地図、図表、ランキング、統計

当社の新聞ではこれらの提供に成功しているものも、他紙よりもうまくできているものもあるが、それでもなお、当社のすべての新聞は、これらの分野での改善に取り組む必要がある。私たちは顧客を満足させビジネスに従事しており、顧客の欲求に応えていかなくてはならない。

(中略)

次に、私たちは新聞の規模を、広告主が望むものに戦略的に統一しなくてはならない。そのために、適正なサイズとして、広告と編集面の割合を50:50にしていく。これをベンチマークとして紙面を大幅に縮小し、コストを大幅に削減する。

私たちは、良質な製品を作ることと、許容できる製品を作ることのバランスを考えなくてはならない。

将来、中心的な収益源となるインタラクティブについても触れておきたい。当社は、eコマースからソーシャル・ネットワーキング、検索型広告にいたるあらゆるウエブ上のビジネスチャンスにおいて優位に立てるようなプラットフォームの開発の最終段階にある。

新しいプラットフォームはすべての事業に導入し、次なる繁栄のときに備える。新サイトは市場に合わせて、あるいは個々の読者に合わせてカスタマイズできるように作られているが、予算は限られており、収益をもたらすための投資であることをお忘れなく。

新しいウエブサイトは、まず当社のテレビ局からスタートして8月までに導入を終え、来年には各新聞も新サイトへの移行を行う。新しいサイトのサンプルは、KPLR-TV(セントルイス)のcw11tv.comで見ることができるだろう。

(中略)

これで、当社が「実行か死か」のチャレンジに直面していることがおわかりいただけただろう。我々は、このチャレンジをチャンスに変えるロードマップを手にしたのだ。



このトリビューン社の発表について、ニューヨーク・タイムズは賛否両論を紹介している。ガネット社(Gannette Company)の元会長・CEOのアレン・ニューハース(Allen Heuharth)氏は肯定派で、「ほとんどの新聞読者は、紙面のほんの一部分しか読んでいない」と述べている。対して、新聞アナリストのジョン・モートン(John Morton)氏は、「長期的には、新聞の生命線ともいえるブランドを損なうことになる」と否定的だ。編集陣のモラル(やる気)の低下を心配する声もある。

ニューヨーク・タイムズは次のようにも書いている。

LAタイムズが一流紙たり得たのは、国家あるいは世界にかかわる報道を行ってきたからだが、新聞業界の一部の経営陣はそうした記事は大衆にアピールしないという。海外ニュースや芸術面は熱心な読者には欠かせないものであり、そうした読者こそ広告主にとっては価値があるのではないか。トリビューン社の経営陣は、APやロイターなどの通信社への依存度を高めるのか否かについては言及しなかったが、そもそも通信社は、新聞社がより幅広く、より多くの地域を取材するために存在するのではなかったか。もし、新聞の紙面が通信社のニュースで埋められるようになったら、グーグルやヤフーから手軽にニュースを手に入れられる読者にとって、魅力ないものになるだろう。

このコメントは、ニューヨーク・タイムズの記者の自戒のようにも読める。新聞の縮小とウエブへのシフトを鮮明にしたトリビューン社の業績が今後、どのように変化していくのか。新しい紙面が、広告主にどのように受け止められるのか、注目していきたい。

◆情報ソース
For Publisher in Los Angeles, Cuts and Worse (New York Times)
Change of Control at the Los Angeles Times Magazine (New York Times)
L.A. Times editorial staff will stop producing monthly magazine (Los Angeles Times)
Uncertainty as Tribune Prepares to Retrench (New York Times)
Tribune Papers to Adopt 50/50 Ad Ratios (Advertising Age)
Sam Zell and Randy Michaels memo (Pointeronline)
ニューズウィーク誌が大規模な人員削減 (A BUG IN YOUR EAR)



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