A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情 通信社APとの契約打ち切りを表明する新聞社が続出

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通信社APとの契約打ち切りを表明する新聞社が続出

先々週のことだが、ロサンゼルス・タイムズ(The Los Angeles Times)やシカゴ・トリビューン(The Chicago Tribune)などの有力紙を発行するトリビューン社(Tribune Company)が、米国の代表的ニュース通信社アソシエイテッド・プレス(Associated Press: A.P.)との契約を解除するとの事前告知を出した。(A.P.との契約解除は2年前にその意思を伝えるという契約になっている。)続いて、137年の歴史を持つコロムバス・ディスパッチ紙(The Columbus Dispatch)もA.P.との契約解除を表明した。それ以前にも、スター・トリビューン(The Star Tribune)、ベイカースフィールド・カリフォニアン(The Bakersfield Californian)などいくつかの新聞社が次々と、A.P.との契約を打ち切ると発表していたが、トリビューン社のような大会社が参戦するに及んで、この問題はいよいよ深刻になってきた。

きっかけとなったのは、昨年A.P.が発表した新料金体系だ。新料金が実際に適用されるのは2009年からだが、発表直後から多くの新聞社や編集者から苦情が殺到した。現在、A.P.の会員社には、ブレーキング・ニュース(新しいニュース)、スポーツ、ビジネス、その他の国内外のニュース、および会員社の対象市場に関連する地域ニュースがパッケージとして提供されている。料金は、各新聞の配布地域と部数をもとに算出される。新料金体系適用後は、全世界のブレーキング・ニュース(会員社の対象市場以外の州のニュースも含まれる)、スポーツ、ビジネス、エンターテインメントのブレーキング・ニュースが提供される。また、プレミアム・コンテンツとして、スポーツ、エンターテインメント、ビジネス、ライフスタイル分野のブレーキング・ニュース以外の記事や分析記事の提供も受けられるが、これには追加料金がかかる。

A.P.は、新料金適用後は会員社の負担は総じて軽くなるはずだと説明し、料金体系を誤解している新聞社もあると述べているが、記事を読むと、どうも新聞社側には新料金発表以前からA.P.に対する不満が鬱積していたようだ。もともと、A.P.への支払いは新聞社にとって大きな負担になっており、高額な費用の割には本当に必要なニュースがわずかしか配信されないといった不満や、インターネットの世界では新聞社と競合するようなことをA.P.がやっているという不満があった。(A.P.は最近、広告売上で運営するモバイルサイトを立ち上げた。)

A.P.は1848年に、ニューヨークでライバルだった新聞社6社が、コスト削減を目的に設立した非営利組織で、いまや日刊新聞だけではなくテレビ局、ウエブサイト、週刊新聞、雑誌など米国内で5,000以上の報道機関、海外ではおよそ8,500の報道機関にニュースや報道写真、音声、動画などを配信する世界最大の通信社となり、およそ100の国・地域に3,000人以上のジャーナリストを擁している。その財政状態は極めて健全で、昨年は7億1千万ドルを売上げ、非営利組織であるにもかかわらず前年比81%増の2,400万ドルの利益を計上した。

一方、新聞社は、当ブログでも繰り返し書いているように不振にあえいでいる。最新のABCレポートによると、今年4-9月期の新聞の実売部数は、ウイークデイに発行される507紙で前年同期比4.6%、日曜に発行される571紙で4.9%、落ち込んだ。新聞社系のウエブサイトのユニークビジター数は今年第3四半期に、前年同期比15.8%増の6,830万人に達し、月間平均ページビューも前年比25.2%増の35億PVを記録した(ニールセン・オンライン調べ)が、オンライン広告の売上はこうしたオーディエンスの拡大に比例して伸びるどころか、逆に落ち込みを見せている。米新聞協会(Newspaper Association of America: NAA)の調べによると、今年第2四半期の新聞社のオンライン広告売上は、前年同期比2.4%減(7億7,600万ドル)と、NAAが統計を取り始めた2003年以来初めてマイナスに転じた。また、同期の印刷版の売上は前年同期比16%減(88億3,000万ドル)と、下落傾向に歯止めがかからない。(第3四半期の売上はまだ公表されていない。)

このような苦境にあり、人員削減をはじめとするコスト削減策も手が尽きたかのように見える新聞社からすれば、自分たちの業界が立ち上げた、いわば新聞業界のサービス部門であるべきA.P.の一人勝ち状態は面白いはずがない。契約解除を表明していない新聞社でも、ロイター(Reuters)、ブルームバーグ・ニュース(Bloomberg News)など他の通信社へのシフトや、大手新聞社からのコンテンツ提供を模索しているところがあるようだ。しかし、A.P.の売上の4分の3は、会員社(米国内の日刊新聞社)以外の企業との取引によりもたらされている。いくつかの新聞社が解約をしたところで、さほど大きな痛手とはならないように思える。

A.P.は、会員社以外による売上のおかげで会員社には安い料金でニュースを提供できるのだと主張しているが、会員社が倒産してしまったのでは本末転倒だろう。A.P.の役員は、会員社の投票によって選出される(いまの役員にはトリビューン社のオーナー、サミュエル・ゼル氏も名を連ねている)。同社はあくまでも、米国の新聞社が運営する組織なのだ。

契約解除の期限が訪れる2年後までに、解決策は見出されるのだろうか。(それよりも2年後まで、米国の新聞社がいまのまま存続していられるのだろうか。)

◆情報ソース
Shocker: Tribune Co. Gives Notice To Drop AP (Editor & Publisher)
Some Papers in Financial Trouble Are Leaving the A.P. to Cut Costs (The New York Times)
U.S. newspaper circulation declines accelerate (Reuters)
3Q: Newspapers Draw 41% of U.S. Internet Users (Media Daily News/MediaPost)



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