A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

A BUG IN YOUR EAR アメリカの広告・メディア事情

大きな変革期にあるメディア業界、広告業界のこれからを考えるヒントになりそうな、アメリカの業界動向を紹介します。

テレビが舞台 ― ELLEとmarie claireの熾烈な戦い

米国でファッション誌のライバル『エル(ELLE)』と『マリ・クレール(marie claire)』がテレビ番組を巡って熾烈な競争を繰り広げている。

米ケーブル・ネットワーク、ブラヴォー(Bravo)に『プロジェクト・ランウェイ(Project Runway)』という人気番組がある。無名のファッション・デザイナーを発掘するリアリティ番組で、オーディションを通過したデザイナーが番組内で課題に沿った衣服の制作を行い、その優劣を競う。『エル』は2004年から、ファッション・ディレクターが審査員を務め、優勝デザイナーの作品を『エル』本誌やウエブサイトで大きく取り上げるなど、同番組のオフィシャル・パートナーとして参加。以来、同誌の販売部数は増え続け、広告集稿ページ数もファッション誌のカテゴリーで6位から『ヴォーグ(Vogue)』に次いで2位にまで伸びた。今年は景気後退の影響でどの雑誌も前年割れしているが、9月号の広告ページ数は『ヴォーグ』が前年比マイナス7.1%だったのに比べ、『エル』は6.6%増だった。同誌の発行人、キャロル・スミス(Carol Smith)の言葉を借りれば「500万人のオーディエンスを持つテレビ番組は強力なブランディング・ツール」なのだ。

一方『マリ・クレール』は先週、コムキャスト・エンタテインメント・グループ(Comcast Entertainment Group)傘下のケーブル・ネットワーク、スタイル・ネットワーク(Style Network)と組んで、新番組『ランニング・イン・ヒールズ(Running in Heels)』を来年3月からスタートさせると発表した。これは、同誌の編集者、ライターからインターンにいたるまで、雑誌作りに携わっているスタッフの日常を追いかけるドキュメント番組だという。

それだけではない。『プロジェクト・ランウェイ』に『エル』を代表して審査員として出演していたのは、ニナ・ガルシア(Nina Garcia)という同誌の名物ファッション・ディレクターなのだが、『マリ・クレール』が彼女を引き抜いたのだ。のみならず、『プロジェクト・ランウェイ』のプロデューサー、ハーヴェイ・ウエインスタイン(Harvey Weinstein)が同番組の放映権をブラヴォーのライバル局であるライフタイム(Lifetime)に1億5千万ドルで売り、来年1月からライフタイムで放送を開始することになった。同時に、同番組のオフィシャル・パートナーも『エル』から『マリ・クレール』にスイッチし、ニナ・ガルシアは引き続き審査員を務めるのだという。(ブラヴォーの親会社NBC Universalはウエインスタインを相手に訴訟を起こしている。)

『エル』も負けてはいない。同誌はCWネットワークと組んで『スタイリスタ(Stylista)』という新番組を10月22日からスタートさせる。その中心人物はニナ・ガルシアの後を継いでファッション・ディレクターとなったアンヌ・スロウィー(Anne Slowey)だ。この新番組は映画『プラダを着た悪魔』のリアリティ番組版とも言える内容で、11人のファッション・エディター志望の女性たちが毎回課題を与えられ、その仕事ぶりをアンヌ・スロウィーが審査して最終回となるシリーズ第8回で優勝者を決めるというもの。優勝者には10万ドルの賞金と、『エル』の編集アシスタントとしてのポジションが与えられる。

『エル』と『マリ・クレール』の競争は、ニナ・ガルシアとアンヌ・スロウィーという二人の名物編集者の戦いの様相を呈し始めている。ニナ・ガルシアは『ニュー・ヨーク・マガジン(New York Magazine)』のインタビューでアンヌ・スロウィーとの違いを尋ねられて、「私は(彼女と違って)有名になりたいと思ったことなどない」と皮肉たっぷりに答えている。ちなみに、米国では『エル』はアシェット・フィリパッキ(Hachette Filipacchi)、『マリ・クレール』はハースト・マガジンズ(Hearst Magazines)が出版しているが、日本では両誌ともひとつの出版社(アシェット婦人画報社)から出版されている。

◆情報ソース
'Running in Heels' Joins Stampede of Fashion Reality-Shows (Advertising Age)
Mags Go From Spreads to Screens (Advertising Age)
America’s Next Top Fashion Editor (New York Magazine)
The CW Announces Premiere Date for 'Stylista' (BuddyTV)




米雑誌協会の新広告キャンペーン

日本では有力雑誌の休刊が相次いでいるが、米国でも、今年1‐6月期の雑誌の広告集稿ページ数は前年比マイナス7.4%と不調で、販売も多くの雑誌が落ち込みを見せている。

米ABC協会(Audit Bureau of Circulations)によると、今年1‐6月期の実売が前年を大きく割り込んだのは、Bauer Publishingが発行する『Life & Style』(シングル・コピー・セールス−30.2%/定期購読を含む総実売数−30%)と『In Touch』(シングル・コピー・セールス−27.7%/総実売数−28.7%)の2つの女性週刊誌。(※シングル・コピー・セールスとは、ニューススタンドや書店での一部売りの実売数)

『Newsweek』もシングル・コピー・セールスが−17.3%、定期購読が−12.6%、総実売数が−12.8%。『U.S. News & World Report』も総実売数を10%落とした。一方、同じニュース誌の『TIME』は、シングル・コピー・セールスは−7%だったが、定期購読による販売を伸ばしたため総実売数は−0.3%にとどまった。

『Vogue』はシングル・コピー・セールスが−14.8%、総実売数が−6%だった。『Men’s Vogue』はシングル・コピー・セールスが40%近く下落したものの、定期購読が43.6%伸びたことが奏功して総実売数はおよそ20%増となった。もっとも米国の場合、主に広告料金の基礎となるレートベース(最低保証部数)を確保するために定期購読を大幅なディスカウント料金で提供する上、配送等のコストもかかるので、定期購読による販売が伸びてもさほど収益の改善には寄与しない。

このように雑誌出版業界に逆風が吹く中、米雑誌協会(MPA: Magazine Publishers of America)は、業績不振に歯止めをかけようと様々な手を打っている。この新しい広告キャンペーンもそのひとつ。

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“Under the Influence of Magazines”(雑誌に影響されて)というコピーで、雑誌の影響力の強さを訴えるこの広告は、Toy New Yorkというエージェンシーが制作した。米国の広告業界で最高の賞であるケリー賞を受賞したアディダス、ハーゲンダッツ、ミニクーパーの製品に消費者が囲まれているビジュアルで、MPAのリリースによると「ユーモラスな」効果を狙っている。

MPAはこの広告とともに、BIGResearch、Dynamic Logic、Roper Reports、Marketing Evolutionなどの企業によるデータを提示し、雑誌広告が消費者の購買意向や検索などのネット上の行動に他媒体(主にテレビ)よりもはるかに強い影響力を発揮することを訴えていく。

◆情報ソース
Consumer Magazines Take Huge Hit at Newsstand (FOLIO)
MPA reliease



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